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第15話 初冬/小架

外の空気が刺すように冷たくなり、夕暮れが早くなると八極拳の鍛錬がなんともありがたくなる。体をほぐし、馬歩站樁を練るころには体がかなり温まって、ずいぶん過ごしやすい。


冲錐、川掌、降龍、伏虎、劈山掌、圏抱掌、虎抱、探馬掌。

屈腿抱拳くったいほうけん虚歩双撞きょほそうとう上歩頂肘じょうほちょうちゅう双抱陰陽そうほういんよう横拳攔馬おうけんらんま馬歩掖掌まほえきしょう反掌撩陰はんしょうりょういん挫歩推掌ざほえきしょう


今日は小架を少し流れるように演じてみる。

実際、起式から上歩頂肘までは一連の招式と言ってもいい。挫歩推掌も右撇手うへっしゅの準備姿勢のような雰囲気がある。


開門弟子の霍殿閣も、関門弟子の劉雲樵にもかえることなく伝えた。初めは大きな動作で伸びやかに激しく、練れてきたら次第に小さく鋭くするように。


自分自身を鍛える場合は、やはり弟子に教えるときは少し違う。確かに、体はついてはこないし、力も足りない。ただし、やはり「一度得た感覚がある」のとないのとでは違う。

これは自分自身が師匠から学んだときともやはり違う。

力がついてくると同時に、これまでだと考えられないほどの期間で功夫が感じられるようになった。まだ掌打で立木を枯らすほどの威力は出ないが、貼山靠で枯れ葉を全て落とすことまではできるようになった。


自分を贔屓目にみているとは思えない。


と、視界の隅に見なれない影をとらえた。


練拳を止め、影をみやる。

カルルも拳を止めて、リーシアを身、視線の先を追う。


「や、やあ・・。」

と、手を上げてあいさつしたのはフィオンおじさんだった。フィオンおじさんの目つきに、神槍の記憶が警鐘を鳴らす。神槍李が生前、何度も見た目付きだ。

そして、神槍と呼ばれるようになる前に自分が何度もした目つき。


敗れたものが、意趣返しをしようという剣呑な目つき。勝利で敗北を返上し、誇りを取り戻そうという決意の表れ。


「フィオンさん」

それがわかるから、リーシアはフィオンさんにまっすぐ向き直る。残念だけれども、フィオンさんの希望を叶えてあげるわけにはいかない。


「少し待って」


「カルル。誰か見届け人を呼んできて」


「そうか」というのはフィオンさん。


たぶん、伝わったんだろう。


少しして村に走ったカルルが戻ってきた。リーシアが名前を知らない村のおじさんだ。


「これからフィオンさんと決闘をします。見届け人をお願いします」

と告げる。


「お、おう、わかった」

と、おじさんはいうが、全然わかってなかった。


「おじさんがどういう戦いをしていいか、どうしたら勝ちかを決めてください」と言わなきゃいけない。


いくら決闘だっていったって、死ぬまで戦っていいわけないじゃない。わかってない。


「そ、そうか。


「それじゃ、武器の使用は禁止。俺が止めろといったら決着だ。その時に勝ち負けを決める。


「これでどうだ」


「うん」リーシアに異存はない。


「わかった」というのはフィオンさん。


「それでは・・・」

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