第13話 オルクスの村
焚き火を囲んで共に食事をとり、互いに食べ物を交換し、酒はなかったけれども盃を酌み交わし、歌い、大いに笑った。オルクスの歌は何を歌ってるのかさっぱりわからなかったけれども。
二人ずつ見張を立てて野営地にごろ寝をした。オルクスの方が人数が多い分、こちらの負担ばかりが多いようだけれども、ここで油断をして寝首をかかれるわけにもいかない。
リーシアが歩哨に立つときにはオルクス側も奔るものが起きる。話し合ってみたいところだけれども、いかんせん師匠がいないとそもそも会話が成立しない。当然師匠は歩哨などできないので睡眠要員だ。
オルクスもリーシアが歩哨に立つなら奔るものを起こさなければ、万が一の時に寝首をかかれかねないと考えているだろうことは容易に想像できる。
二刻ほど見張り、メルさんを起こして引き継いでから、また毛布にくるまる。館で眠るのとは異なり、決して熟睡できるものではないけれども、野営なんてそんなもんだ。
朝になり、辺りが明るくなる前に目が覚める。
手拭いを水で少し湿らせて顔を拭い、さっぱりする。
ピーちゃんに軽く干し肉を食べさせ、水分をとらせる。
すぐに荷物をまとめてワゴンに乗せ、手荷物は背負子にまとめて背負う。実際、誰かを見張りに残したところでこの人数差ならやられる時にはどうにもならないと判断し、鈍気も含めて全員でオルクスの村に向かうことにした。鈍気は野営地に残れるものと勝手に思っていたらしくて不満タラタラだった。
案内によれば、日のあるうちに着くということだからまあいいだろう。総勢で連れ立って、オルクス達の案内に従って山道を登る。
鬱蒼と続く山道は薄暗く、油断をすると足が滑って転倒しそうになる。師匠がとにかく危ないので、しっかり手を繋いで、滑らないように支える。こういう時にこの人は危なっかしいので目が離せない。全く手間がかかる。
昼過ぎには奔るものの言う「村」が見えてくる。
「村」は周囲を板塀に囲まれていて、思っていたよりもしっかりした門を備えている。
門にはやはりオルクスがいて警戒をしている。
それでも流石にグリフォンを見ると腰が引ける。
「グゥッ」と、ピーちゃんが一唸りすると
「ヒッ」っと息を呑む。流石のグリフォンだ。
門衛の間を通り、門をくぐる。ウェスタヤルトのそれとは異なり、鉄山靠を食らわせれば容易に崩壊しそうだ。
村は輪をなすように小屋が建てられ、中央には広場がある。周囲に濠がないので、おそらく農業はしてない。広場にはまた、20人ほどのオルクスがおり、こちらはおそらく女子供だ。体が小さいものも多い。リーシアの迎撃に出たのは村の全戦力、男達だろう。
これだけの人口を狩猟だけで賄うのは確かに厳しい。それ故の略奪なのか。
とはいえ、リーシアとてむざむざと略奪されるわけにもいかない。
奥に控えているのは村長か、それとも王か。
さて、交渉はどうなるだろうか。




