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神槍は転生してもやはり神槍を目指す  作者: Scull
第3章

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第32話 砦の慶事(けいじ)

帰ってきたキューちゃんによれば、手紙はきちんと届けられたものの、渡した相手には手ひどく追い払われたようで、相当憤慨していた。降り立った途端に斬りかかられて、相手を傷つけずに手紙を落としてくるのはやっとのことだったらしい。

なんとなくそうしたことだけど、やっぱり使いに領民を使わなくてよかった。手紙を届けるだけで斬りかかられるとか、勘弁してほしい。


全く、公太子たるもの、もう少し周囲に気を配ってほしいものだ。ただの戦ばかでは領地なんてあっという間に無くなってしまう。ファイト様に輿入れなんかした日には、後継が生まれる前にせっかくのリーシア砦もレルムの領地になってるに違いない。


相当尽きていた愛想だけど、これは完全にとどめになった。この世に男がファイト様だけになったとしても、彼だけはない。


ギュンター公が優れていたとしても、まあ、そんなに精兵ばかりでもないということか。



それからしばらくして、ファイト様が廃嫡されたと、正式に発表され、公太子は弟君のバウト様がついだ。廃嫡された後もファイト様からの手紙は届いたけれど、廃嫡されるような公子なんてごめん被る。ファイト様は確かに戦闘指揮に見るものがあったけれども、それは部下がいて初めて意味が生まれることだ。

他になにかの才能があるならまだ見るべきものはあるかもしれないけれど、キューちゃんに切り掛かるような人間が家を守っているようでは、普段の生活力もどんなものかわかったものじゃない。


何よりもあの気持ちの通じなさが致命的だ。万が一彼のような男に嫁いでしまったら、細かいところまでリーシアに指図して、不当な指示に逆らおうものなら鉄拳を振るわれるに違いない。もちろんそんなもの、黙ってやられたままになるリーシアではないが、新婚早々、夫を殴り殺した新妻になんてなりたくない。そんな未亡人になるのはごめん被る。


そうこうするうちにメロヴィクさんが嫁を迎え、シギベルトに子供が生まれた。

砦の建設にも必要なお金が貯まり、ついに着工された。


堀も塀も高く深くなり、防御力も向上した。門の脇には物見が建てられ、完成すれば、グリフォンの偵察力を補うだろう。


市街の巡回に加えて、周辺の土地も巡回して安全を確保した上で、材木の伐採をした。


砦は順調に発展している。もちろん2羽のグリフォンには轡から鞍、鎧といった馬具があつらえられた。まだまだ2羽とも成長途上なので腹帯は長めに作り、短くまとめられるようにした。

リーシア同様にカルルも騎士なので、当然グリフォンを説得した上でカルルの騎乗訓練も始めた。最初は恐いだのなんだのと大声を上げていたカルルだが、初陣でいきなりバグもないまま空を飛ばされたリーシアに比べたら全然大したことはないだろう。


それでも目の前で羽ばたく翼や、馬よりも滑らかに歩くグリフォンはなかなか慣れないようだ。

もっとも、ピーちゃんに遊ばれているっていうのも理由の一つではあるんだけど。


そうこうするうちに、ただの公子になったファイト様が直接声をかけてくるようになった。とも周りのものが一気に減って、身なりも少し残念になったファイト様だが、言い分としては廃嫡されてリーシアとの仲を邪魔するものは無くなったから、これで誰にも遠慮はいらないだろうという自分勝手なものだった。


というか、そもそも戦功を挙げて、その褒賞にリーシアとの縁を求めたので、どう考えても罰でしかない廃嫡をされてしまっては、リーシア云々とうつつを抜かしている場合ではないだろうに、この少年王子はそこが理解できていないんだろう。


そこをどう伝えたものかと思うのだけれど、このすっかり人相が悪くなった少年に、わかってもらえそうな言葉が見つからなかった。

何かを言わなくては、とは思うのだけれど、どんな言葉をかけても状況は悪化するとしか思えなくて、言葉を飲み込んで首を振るしかできなかった。


結局、

「その件につきましては既にお断り申し上げたはずです」と、繰り返すしかなかった。これ以上の問題になるとしたら、領民に手を出されたら、となるだろうけど、そこに至ってほしくはなかった。なにしろリーシアにはまだ果たせていない望みがあるんだから。



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