第29話 爆弾発言
ウェスタヤルトに帰ってきたりーシアたちには当然論功行賞が行われる。
リーシア自身は今回徹底的に目立つことを避けたので、正直に言ってギュンター公に呼び出された際も、罰せられなければいいか、程度の心算であった。カルル、フィルさん、メルさんと共に登城する。
またあのややこしい前庭を通り抜け、謁見の間にはかろうじて最初につく。一番若輩なのに、後から入室するわけにはいかない。
末席に列を成して待機しておくと、見覚えのない従士、カルルマンさん、アドルフさん、ロタールさん、ラースさん、イムレさんが従者を連れて次々に入室してくる。すると、リーシアの次に入室してきた従士はフェルディナントさんの代理に違いない。さらに二人の重鎮らしい騎士が入室し、ファイト様の入室で騎士側の入室が完了する。
すぐに参謀様が今度は玉座の脇に立つ。
全員に緊張が走り、誰がいうまでもなく直立不動となる。
「注目!」
と、参謀様の声が響き、続いて
「公王様、御出座!」
という声で、ギュンター公がエーバーハルト様を連れて入室し、王座に座った。
「なおれ!」との声で、全員が両腕を後ろにくみ、足を開く。
「これより論功行賞を行う!」
「騎士リーシア!」
「はっ!」
姿勢を正してから、前へ進み、向きを変えてから定位置に進んで首を垂れて跪く。
「此度の戦では、常に前線にたち偵察をおこない、軍功著しいと聞く。よって、金20枚をこれに与える」
しっかり両手で受け取って、元の位置にまで退がる。ふむ。今回は先輩騎士に目をつけられたくはなかったので、褒賞としてこれぐらいならまあ、まあだ。
もちろん、出兵に際して元手はかかっているので全く何もないのは困るけれど、あんまり目立ってしまうのも困る。
「フェルディナント!此度は砦の留守居役を充全に果たしたと聞く。ただし、戦功はないとのことなので、褒賞は出せぬ。砦を、というわけにはいかぬが、代官として駐留した上で、最寄りの村イストドルフの代官も兼ねよ」
「アドルフ!此度の戦では、砦の一番槍、コルムからの撤退での殿など軍功著しいと聞く。金100枚をこれに与える」
「ロタール!此度の従軍ご苦労であった。褒賞として、金20枚をこれに与える」
「イムレ!此度の従軍、誠にご苦労であった。金25枚をこれに与える」
「ファイト!此度の従軍、大義であった。村、イストドルフ、砦の攻略と軍功著しく、誇りに思う。褒賞としてイストドルフをこれに与える。砦もレルムからの防御拠点として活用せよ」
「時に父上!」
「褒美が足らぬか。望みを言うがいい」
「は!私は騎士リーシアを嫁にとりたいと望みます!」
は?今なんつった・・・?何言ってんだこいつ・・・。
リーシアの思考は完全に真っ白になった。




