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神槍は転生してもやはり神槍を目指す  作者: Scull
第3章

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第20話 城門突破

何度目か、高度を取って旋回し降下突撃しようとした時、敵軍の注意が疎かになっていた正門に激しい突撃音が響いた。ファイト様が部隊に用意させていた破城槌が門扉を突破した音だった。


本来城砦の正門なんていうのは頑丈さに頑丈さを極めて造られるものだけれど、キューちゃんの突撃を受けて蝶番がはじけていた上に、本来は内側から支えているべきところを完全に虚をつかれ、疎かになっていた。そこを一気に突破された。片側の蝶番は完全に弾け飛び、左右の扉がかんぬきでつながったまま、もう片方の蝶番にぶら下がっている。


城兵が大音響に振り返ってしまうところをリーシアの槍が突き倒す。


『私と戦っている真っ最中に後ろを振り返るとか、余裕あるじゃないか』


キューちゃんが一声叫んで人騎一体感を高らかにうたう。


突入した兵たちは吶喊しながら次々と城兵を打ち倒す。一斉に雪崩れ込んだ将兵があっという間に砦を蹂躙し、すぐに勝ち鬨が上がった。


落ち着いた頃合いを見計らってキューちゃんに合図を出し、庭に着陸する。

砦の庭はそれほど広くはないので、キューちゃんはタタラを踏んで止まる。駆け寄ってきたギーゼルヘルの助けを借りてキューちゃんから降り、ファイト様に駆けつけようと思ったところがそのまま膝から崩れ落ちた。


流石に頭から地面に倒れ込むことはなかったけれども、金属のぶつかる大きな音が響いて、近くにいる兵士たちがこちらを振り向く。鎧のないままの騎乗というのは初めてだったけれども、ここまで足腰立たなくなるほど疲れるとは思わなかった。八極拳の歩法とはまた違った筋肉を使い、疲れ方が違う。手をついてなんとかへたり込んだ程度にまで姿勢を回復させると、ファイト様が門をくぐってくるところだった。


立ち上がってご挨拶したいところだが、全くもって足腰が言うことを聞かない。


「は、ははっ」


ついでに口までいうことを聞かなくなってるとは。


足音でファイト様が近くにきたことがわかった。


「良い、大義であった」


「は・・・。」


「キュー・・・」


キューちゃんも着地した途端に一気に疲れが出てきたらしい。野生ではここまで力を出し切ることはないから、致し方ない。


「工兵は急ぎ門扉の修理を行え!砦を捜索して物資を!


と、ファイト様の声を聞きながら、意識が遠のいていった。

寝そべったキューちゃんに体をもたれかけてくれたのはフィルさんとギーゼルヘルか・・・・。



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意識を取り戻したのはもう、日が落ちてからだった。


砦にはまだ血の匂いが色濃く残っている。戦場いくさばだ。キューちゃんは完全に夢の中だ。ようやく立ち上がれるように回復してきた足で立ち上がり、辺りを見回す。皆部隊ごとに固まって天幕を張っているようだ。

雑魚寝をしているのは雑兵や小間使いの者たちか。

キューちゃんの周りにはクリムヘルトにフィルさん、メルさん、ワゴンまである。みんなでキューちゃんを枕にして高いびきだ。キューちゃんなしでここまでワゴンを引いてきたんだ、そりゃお疲れだろう。


空を見上げれば、全く見慣れない星空が広がっている。北の空には紐星も北斗もない。見慣れた月とは違う、小さな月が星空を横切っている。


それでも銀河があり、かささぎ星が渡っている。


改めて自分は民国とは違う世界に来たのだなと思った。


まだだるさが足腰に残っているが、明日もこんな調子というわけにはいかない。ふと気がついた自分にかけられていたブランケットを手に持って、また改めてキューちゃんにもたれかかって寝直す。今度はきちんとランスを肩に立てかけて、シールドをしっかり握って。

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