第11話 お祭り/虚実分明
秋祭りの日は朝からリーシア自身、興奮冷めやらなかった。
いろいろ考えてしまっては、気持ちが落ち込んだり飛び上がりたくなったり。自分自身でもおかしいってわかるぐらい。
それで普段は食べられないような食べ物を食べてまた飛び上がり、兄様にたしなめられたり。
そんなふうに、村のみんなで今年の実りを祝い、来年の実りを祈る。
ちょっと年上のお姉さんたちは、皆でお揃いの服を着て踊り、お目当ての男子の目をひこうとする。
昼前にはジョールグさんが村じゅうに轟くような声で、力比べの開催を宣言する。トコトコトコっと近づいて、「きたよ」って主張する。
ジョールグさんがちょっとほほえんで、こっちを見た。他のおじさんたちもゾロゾロと集まってくる。いよいよだ。腕比べをするおじさんたちじゃない、おじいさんたちおばあさんたち、おばさんたち、子どもたちもいる。こないだ突き飛ばした子もいて、こっちをなんか見てる。
まあいい。
「最初の試合、トマスとサムエル!」
おじさんが二人、広場の真ん中に出てくる。この時ばかりはお姉さんたちの踊りも一休み。
真ん中で向かい合ったおじさんが、互いの左手首を握る。
「はじめ!」
二人は顔を真っ赤にして力を入れ、左手首を上げようとしている。それを右手で抑え、体制を崩されないように踏ん張ってる。肩の筋肉が盛り上がって、ものすごく力を入れているのがわかる。
「ぐぬぬぬぬ」
観客の人たちもものすごく力を入れて見ている。リーシアもついつい力が入ってしまう。
と、サムエルさんがトマスさんの右手を上げるのに成功した。あそこまで力が入ってしまっては、体勢を崩されても仕方がない。二、三歩動いてこらえるけれど、ふんばりきれなくて倒れてしまった。
「二回目の試合」
二回目の試合、三回目の試合も最初の試合と大差なかった。それぞれ一人ずつ勝ち上がったが、みんな力任せすぎて、見ていられない。
ただなんだろう、見てる側の方がちょっとざわついてる。
「四回目の試合、リーシアとトナー!」
リーシアの姿を見て、広場がどよめいた。リーシアも少し緊張する。いけないいけない。力みすぎたら勝てるものも勝てない。
真ん中に進み出て、トナーおじさんが差し出した左手の手首をにぎる。ぶっとい。
左手は差し出して、トナーさんに握らせる。
口を開いて息を吐き、力を抜く。息を止めると力んでしまうので、つとめて普通に呼吸するようにする。だけど意識しすぎるとやっぱり力が入ってしまうのでむずかしい。
「はじめ!」の声で、トナーさんが自分の左手を上げようとしてきた。
これはリーシアの真似か。でも要諦をつかんでいないので、めっちゃ力入ってる。力みを捨ててるリーシアの右手はトナーさんの左手首を握ったまま持ち上げられる。
トナーさんが勝利を確信する!
が、力みを捨てたリーシアの手首を持ち上げているので、ふっと勢いがあまって力がゆるむ。
ここだ。
そこにあわせて力みを捨てた右手をひくと、トナーさんが左手を引かれて体勢をくずす。
そのまま左手も引いて、完全に上体を泳がせる。さらにススっと後ろに下がれば、トナーさんは前につんのめってしまった。
「リーシア!」
会場が一斉にわき立った!やった!




