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神槍は転生してもやはり神槍を目指す  作者: Scull
第3章

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第16話 行商

朝は起きると、またキューちゃんを偵察に出す。夜はぐっすり眠れたらしくて、元気いっぱいだ。キューちゃんが偵察中に、部隊は出立の支度を整える。騎士たちは天幕や幕屋をたたみ、野営の跡を片づけて馬車に積んでいく。リーシア一党はお手軽だけれども。


騎士様たちの支度がそろそろ終わる頃、キューちゃんが帰ってくる。今回は昨日と違って大体1日で進める距離が把握できてたようで、あんまり遠くまでは偵察しなかったらしい。

ただ、少し遠くには、こちらに向かってくる行商人の馬車があると言うことで、詳しくは見なかったけれども、行き当たるかもしれないとのことだ。


ファイト様に報告すると、了承された。すぐに伝令が走り、すでに出立した部隊に連絡がいく。リーシアも馬車に戻って、キューちゃんを繋ごうとするけれども、すでに輓具に繋がれていた。リーシアもとっとと馬車に乗る。


今日も昨日と同じにゆるゆると山を登りつつ、街道をいく。キューちゃんはこれが人間なら鼻歌でも歌うんじゃないかと言うぐらい上機嫌。馬車と違って、蹄の音がしないのが面白い。


グリフォンは本当に桁違いの力があるのだと、馬車に乗っているだけでもわかる。時折声をかけてあげるけど、それだけで空を飛んでいきかねないほど上機嫌になる。


ふと、逆にピーちゃんが寂しがっていないかの方が心配になってくる。2羽が生まれて以来、こんなに長い間離れていたことがない。


と、思っていたら、まるで心を読んだかのように、頭上からピーちゃんの声が聞こえた。

キューちゃんも振りあおいで見上げる。


目一杯手を振ってあげるけれど、声はかけられない。それだけで賢いピーちゃんはわかってくれて、「ピーーーッ!」と一声上げて、また飛び去っていった。こりゃ、また明日も飛んでくるな。


スタスタと街道を登っていくと、陽が傾いてきた頃、まだ早い段階で先行隊が街道に停まっているところに出くわした。どうやらキューちゃんの報告にあった、行商人らしい。

先行隊はどうやら行商人と取引をすでに始めているようで、ファイト様もどうやら使いを出して、何かを買い求めているらしい。


リーシアはフィルさんを誘って、馬車から降りて顔を出す。


「何だか随分高いんじゃないか?」とか、「あまりふっかけるとただじゃおかんぞ」とか言うけんのんな言葉も部隊側から聞こえるけれども、商人側も「いえいえいえ、めっそうもありません」などと言っているので、それほど危ないことにはなってないのかな。


「やや、どうもどうも」と言って、人だかりを掻き分けると、振り返った人だかりがさっと分かれた。どうやら皆、使用人程度の人ばかりらしい。皆必死な形相でいるけど、騎士身分のリーシアがきたので一黙りする。

商人は何やら一儲けしたみたいで、なかなかの上機嫌だ。


「商品には何があるのか」と、一応は威厳を出して聞いてみる。


「いくばくの食糧、特に少し日持ちがする果物、それと毛皮などを」


「なるほど。それでこの山中なので、少し割高だと」


「はい。特にこの果物は私の街、コルムの名産でして、毎年この時期になるとこうしてウェスタヤルトにまで売りに来るんですよ」


「なるほど、それでファイト様はどれぐらいお求めになったのかな」


「はい。五つほど」

これは少し不満そうだな。

「それでは私は、12個ほどいただこうか。もっと欲しいところだけれども、あまり商品を市に出す前に売り切ってしまうのも申し訳ないからな。あと、その毛皮を7枚、いや、そうだな、こちらも12枚。

「まとめて買う代わりに、少し値引きをしてもらえるとありがたいのだが。そうだな、全部で金貨2枚でどうだろう」

「いやいや、騎士様。これでもこれらは市で売れば金貨で4枚はする代物です。そこまで安くはできません」


と粘る商人と交渉して、金貨2枚と銀貨を3枚で購入した。

正直、毛皮は夜の寝心地を少しよくするために必要なだけなので今の人数分あれば十分なのだが、何となくカルルや師匠が拗ねちゃいそうなので、砦のみんなに買っていくことにした。


商人は早々に現金化できてほくほく顔だが、フィルさんの表情からぼったくられてはいないことがわかるので、これでいいってことにした。


果物も毛皮もフィルさんに持ってもらい、馬車に戻る。フィルさんには宥められたけれども、きちんと謝っておく。流石に従者身分のフィルさんがいるのに騎士身分のリーシアが買い物の荷物を持つのは外聞が悪すぎる。


おかげでこの夜は少し温もった。

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