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金と銀の竜


〈愛の女神マーリア〉様はそれから、わたし楓なアイリスに色々レクチャーしてくれた。


まずは魔法のこと。

この世界では妖精を媒体にして魔法を発動できる。

妖精はこの世界に沢山いる。

精霊が目に見える姿なのが妖精だって。

上位精霊は精霊のまま。

風の強い所には風の精霊が、活火山とかには火の精霊が多いけど、普段は満遍なく存在する。

だから火のない所でも火の精霊を呼び出し、火を起こすことも出来るし水の精霊の力で水を生み出すことも出来る。


応用も利く。

火と風の精霊を組み合わせて、火炎放射器のような使い方や火の玉を飛ばすこともできる。


風と水の精霊なら冷たい風で水を氷らせたり、氷柱(つらら)を飛ばしたりも有りだという。


更に上位精霊と契約すれば、聖女の力を使えば天変地異まで起こす事が出来るらしい。


そして聖女とは簡単にいえば魔法を増幅出来る装置。

それに精霊界と呼ばれる神々や精霊王達のいる世界へ、生きながらにして行ける唯一無二の存在。


それはひとつの身体に二つの世界(ここと楓が居た世界)の魂が同時に宿ったから行ける。

普通はひとつしか魂がないから、精霊界に行ったら身体から魂は抜けて死んでしまう。

けれど楓とアリスの二つの魂が存在するから一方を身体に残し、もう一方の魂を精霊界へ送ることができる。

そして楓がアイリスの身体を受け持ち、アリスが精霊界へ行っていた。


そして聖女の力に目覚めれば、その楓とアリスの魂を半分づつ身体に残して、もう半分づつの魂は精霊界へ行ける。つまり楓とアリスが二人揃って精霊界へ行けるってこと!楽しみ!

もちろん。アリスにこの肉体を任せて楓だけ精霊界へ行くことも可能だ。


この世界には妖精が見える者が一定数存在する。

反対に妖精は見えないが言葉が分かる者もいる。


この二つを持つ者は稀に存在する。


もし魔法が妖精によって起こされると知れば、悪用する者が出てくるかもしれない。

妖精の真名を知ることイコール契約としれば、魔法が使える者が増えるだろう。


昔は魔法使いが沢山いた。

だが特別な力を持つ彼らは特権階級となり、魔法の力を行使して他の人々を苦しめたり、奴隷のように扱ったという。

それで少しづつ神々が知識を奪い、魔法の仕組みが分からないようにした。


マーリアはアイリスに言った


『くれぐれも妖精が魔法の媒体であることは他言無用です。あくまで貴方が魔法を使えるのは【聖女】だからと、そういう設定にしてください。

貴方が不用意に漏らせば、世界の有り方が大きく変わるかもしれません。

基本的に人は善意の生き物ですが、悪意を持つ者も大勢います。貴方の漏らした一言で何万人という人が虐げられ命を奪われるかもしれないのです。

その事、肝に命じて下さいな』


─わたしは聖女だからチートなの!


今からでも自らを洗脳しておこう。



そしてわたしが言葉を話せ無い訳。

それも教えてくれた。



何でも今は普通の人から聖女への移行期間中みたいです。その過程で様々な秘密を漏らさないよう言葉を封じているみたい


「軽挙妄動は慎むのじゃぞ。楓」


じいちゃんが現れて消えた。

孫思いの良いじいちゃんだわ。


これは正にわたしの為の仕様だね。


以前アリスが攻略対象以外の顔が見えなかったのは、彼等だけがアイリスと結ばれる運命を持っていたから。

ユークラリス伯爵夫妻は保護者として認識出来るようになっていた。


そしてアイリスがデューク以外の人が見えなくなったのは、他の人の表情を無闇に読んでコミュニケーションさせない為。

何処からどう情報が漏れるか分からないから。


だからアイリスはしばらくの間は〈運命の人〉デューク以外と言葉も話せず顔も分からない。


それと……一応この世界では成人扱いになるけれど、飲酒はなるべく控えるようにとお達しを受けた。

もし酔っ払ったら、笑い上戸でおしゃべりになるからだという。


女神のレクチャーは暫く続くそうだ。

その間は無口で他人が分からないアイリスになる。


聖女移行期間が過ぎれば元に戻るらしい。


光のキラキラは、もう一段階向こうの世界へ行く準備だという。このキラキラの世界はこの世とあの世の狭間の世界。物質界と重なる四次元の魂の世界だという。

それが三次元の物質界に重なってこんな風に見えるらしい。

そして楓の魂がこの世界に慣れたら旅立つ世界は神々の世界。精霊界と呼ばれる所。

ややこしいけど本来はその上の階層に神霊界があってそこに神々の本体が居て、精霊界では神々のワケミタマが当たり前に認識出来る姿で活動しているという。



それは元は神であった楓とアリスの魂の故郷。



そこにこの世界を救う為の鍵があると、愛の女神マーリアは教えてくれた。



夕刻。わたしは晩餐に呼ばれた。



そこには金と銀の竜を絡ませたデュークがいた。

その竜はアイリス以外誰にも見えない。

金の竜がデュークに仇なす者と戦う剣であり、銀の竜が守る盾である。

古の聖女が我が子孫を守り、皇室の守りの為に施された防御魔法。


オーギュスト帝国の皇帝はこの守りがある限り暗殺等は出来ない。

だが、その竜は一対のみ。

誰も知らないがデュークがアイリスと人生が交錯し、ネックレスを渡した時その皇帝の竜の守りは現皇帝ではなくデュークに移行した。

竜がデュークを皇帝と認めたのだ。


未だに第三皇子のデューク・ミカエル・オーギュストはすでに、皇帝の道を歩きだしたのだ。


女神は言う。


デュークの道は血塗られた道。

片時も休まることのない暗黒世界。

孤独で信頼できる者もなく、孤高の頂きの玉座に独り座る者。


けれど、その者の傍に寄り添い光をもたらす者が一人だけいる。


─聖女アイリス─


つまりわたしだけが彼の道標で夜道を照らす街灯。


孤独な頂きに並ぶもうひとつの玉座に唯一座れる者。



─ずるいよ女神様……



女神マーリアはいう。


『あの乙女ゲームは貴方にプレイさせるために生み出されたゲームなの。

主人公はアイリス・ユークラリス。

貴方が強く希めば七人の攻略者対象者全てと結ばれる事が可能よ。モチロン一人だけよ。逆ハーレムエンドはないわ。

そしてシークレットの攻略対象者。

デューク・ミカエル・オーギュスト

彼も選んでいいのよ。

貴方はこの世界のヒロインなのですから』



デュークがシークレットな8人目の攻略者だった。



楓は知らなかったがシークレットであるデュークの攻略対象者てのルートが開放れるのは、三年目突入時七人の攻略対象者の誰も選らばなかった時。

そしてデュークを攻略対象に認定すると、今度はあべこべに七人の前攻略対象者がデュークとアイリスの仲を邪魔をする仕様だったらしい。


ゲームではデュークがアイリスを拐って行ったが、今度はお返しとばかりに拐われる役目になるという。


アリスのアイリスは誰ともパートナーにならなかった。

というよりはなれなかったが正しいかも……。

心はお子様だからね。


だからシークレットが開放されて、デュークと出会って直ぐにこんな関係になっちゃったのかな?


そうそう!女神様が言っていた。


デュークとのエンディングはアイリスが聖女の力に目覚め、幾多の困難をデュークと共に乗り越えながら、帝国を繁栄に導くという内容らしい



─はぁ。ホントずるいよ女神様



もうわたし聖女に目覚めているじゃない?

それにデュークの歩む道が孤独でわたししかパートナーになれないのなら、もしわたしが誰か他の人を選んだらデュークは孤独のままじゃないか!

それに……もしここでわたしが別れを告げたらさ。

人を信じなくなった原因は、わたしのせいかもしれないでしょう?


アランを除いた他の攻略対象者には素敵なパートナーもいるし、アランだってモテモテで引く手あまただからきっと直ぐパートナーが見つかると思う。

出来ればエイミア様と一緒になって欲しい……。


ううん。ホントはわたしのパートナーでいて欲しい。




どうしよう……頭では割りきったつもりなのに。




わたしまだ……心ではアランを求めている。
















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