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マブダチでございますね


エリザベスは朝から浮かれていた。


キツい目を更に細めて嬉しさに紅潮する顔は、端から見れば恐ろしい。


でもそんなことはどうでもいい。


舞踏会当日。

オーギュスト帝国に留学中の婚約者。


レイン・オパール・フォラリス第二王子が急遽参加することとなったのだ。


正にサプライズ!


昨日王都に到着したとの連絡があり、今日は出迎えの準備でてんやわんやの大騒ぎ。


『全く!もう少し早く教えて欲しいものですわ』


心の中で悪態をつくも、嫌な気はしない。

むしろ早く会いたくてウズウズしている。



舞踏会直前。レイン殿下を出迎えた。


一年ぶりに見たレイン殿下は背も伸びて、大人びているものの美少年振りにに磨きがかかっていた


『あら。いい男』


「久しぶりだね。エリザベス。

会えて嬉しいよ」


殿下の優しい声に心踊る


「息災で何よりですわ殿下。こちらこそお会いできて嬉しゅうございます」


「済まない参加がこんな急になってしまって……海が荒れて寄港が遅くなった。

舞踏会に間に合って良かった」


「驚きました!ですが、とても幸せなサプライズでございます。皆様も喜ぶと思います。

さぁ。参りましょう」


エリザベスはレインと舞踏会会場へ向かった。

道すがら短い間だけど、お互いに近況を語り合った。

レインは今日中に王城に向かうらしく、時間が惜しいので舞踏会開催中に中抜けしてお茶会を開くこととなった



─そして舞踏会入り



レイン殿下の飛び入り参加に会場は大いに沸いた。


久しぶりに踊ったレインとのダンスは、エリザベスを夢の世界へと(いざな)った。


何曲も続けて踊りたいところだが、本来パートナーであったライネル伯爵家のフレイド様へ、これ以上礼儀を欠く訳にはいかない。

とは言うもののレインとフレイドは悪友で、サプライズの仕掛け人達。フレイドはちゃっかりパートナーを用意していた。因みにパートナーの女性はエリザベスの侍女として赤薔薇棟にいるフレイドの姉である。

去年の卒業生だ。

姉のセリファも勿論グルである。


エリザベスはフレイドとのダンスを無事終え、小休止。

一曲が流れている間、レインと束の間語らった。

その折、アイリスの話題がのぼった


「エリザベス。しばらく見ない内にとても雰囲気が柔らかくなったね。何か良いことあったのかな?」

「それは……殿下にお会い出来たからではないでしょうか?それと、マブダチでございますね」


「マブダチ?

聞いたこともない言葉だね。

教えてくれるかい?」


エリザベスは頷き


「マブダチとは親友よりも仲良しなお友だちのことですわ。アイリス様の小さな子供の人格、アリス様にそう言って頂けたの。

イリス様ともマブダチになれました。

今は月に一回。わたくしとアイリス様で秘密のお茶会開いてますの。

でも、これは公爵令嬢の肩書きを取ったマブダチのお茶会です。

公爵令嬢エリザベスとしては、白薔薇学園では怖いエリザベスで接しておりますのよ。

この事、他の人には内緒ですわ」


「そうか。それで君からの手紙にはアイリス嬢の話が頻繁に書かれているのか?

でもエリザベスにこうして良くしてくれているのだから、婚約者のボクからも何かしらお礼がしたいね」


エリザベスはニコリと微笑んで


「なら。アイリス様と一曲踊ってくださらないかしら?

アイリス様。この頃アーサー殿下に気に入られて、終始一緒にいるのです。

それで学園内ではあらぬ噂が人様の口に上っておりますの。わたくしの派閥の者達には、そのような噂話しに耳を貸さぬよう言い聞かせております。

それでもわたくしにも漏れ聞こえて来るのですから、余程の事だと思いますの。

アイリス様も明るく振る舞っておいでですが、この頃少し疲れているようです」


「わかった。君のマブダチだからね。

君と垣根無く接してくれたアイリス嬢に感謝もしたいからね」


そして小休止は終わり、エリザベスとレインも舞踏会に参加。

最後にレイン殿下がアイリスを誘ったのを見届けて、派閥のご令嬢方を引き連れてお茶会会場へ向かったのです。


お茶会では合流したレイン殿下を囲んで、終始和やかな楽しい時をすごした。

レインは時折りジョークを交えながらオーギュスト帝国の風習や帝国での学園生活の様子などを話した。

会は滞りなく進みそろそろお開きと云う時、一人のご令嬢が会場に入りエリザベスに耳打ちした


「何ですって!馬鹿なことを……」


冷静沈着なエリザベスが珍しく声を荒げた。

落ち着きを取り戻すと


「皆様。わたくし急用が出来ました。

直ぐに向かわなければなりません。

皆様は会場にお戻りになって、引き続き舞踏会をお楽しみください。

レイン殿下。少しお時間宜しいですか?」


エリザベスはレインと別室で立談した


「殿下。残念ながらお見送り出来そうもありません。

申し訳ございません」

「何かあったのですか?顔色が真っ青ですよ。

宜しかったらお聞かせいただけませんか?」


「殿下を煩わせる訳には参りません……と言いたいところですが、(のち)にこの事をお耳にしたならば後悔なさる方なので……」


エリザベスはアイリスが集団暴行にあったこと。

その案件で緊急生徒会が開かれる事を話した


「……わかりました。良くお知らせくださいました。

ボクも参加致しましょう。

これでも副会長として席に連なっていますから」

「レイン殿下。ですが、国王陛下に留学の報告をするのではなくて?面会のお時間も決まっておいででしょう?」


レインは首を振り


「父からは、アイリス嬢の事で幾つか言い含められています。報告ならこの事も詳しくせねばなりません。

先に使者を使わし、事情を説明し遅れる事を伝えます。父も分かってくださいます」


「そうですか。では。参りましょう」


エリザベスはレインと生徒会室へ向かった。
















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