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わたしを解放して……


─うっ……居たたまれない……


楓はこの王太子執務室の有り様に戸惑っている。

なんせこの部屋には乙女ゲーム【白薔薇姫と七人の虜たち】の攻略対象者七人中四人が揃っているのだ。


第二王子様とアランは留学中だし、もう一人は平民で執務室には接点がない。

そしてここにいる面々は……


アーサー・ジュエリク・フォラリス王太子


言わずと知れた学園生徒のトップ。

未來の国王。

次いで


フォークライ・マクシミリアン


マクシミリアン公爵家の跡取りで、アーサー王治世で宰相を務めるだろう。

学園一の秀才である。

細面で銀髪。緑の瞳。

無表情と冷たい目付きから【氷の貴公子】と二つ名がついている。

アイリスの教育係を殿下から任命されたが、本人は教えていない


「こんな馬鹿オンナ。私の手を煩わせるほどではない」


直ぐ様わたしをぶった斬って、無視を決め込んだ。

今フォークライが何をしているかと謂うと、わたしに構い過ぎて溜まりに溜まったアーサー王太子殿下の公務の手伝いをさせられている。

それが明るみに出れば格好つかないので〈アイリスの勉学のため〉を方便に執務室に入り浸っているのだ。

いわばわたしはダシだよね。

そのためにわたしはここから抜け出せない。



そして今やわたしの嫌いなヤツのランキングでアーサー王太子殿下を速攻で追い抜き、ぶっちぎりの一位になった


レシェルド・マーキュリア


マーキュリア侯爵家の跡取り。

女たらしのクソッたれ。

今は何故か王太子執務室に常務していて時間のほとんどは公務の手伝い、残りはわたしにちょっかいを出すという訳のわからない事になっている。

ダンスレッスンで余りにわたしにベタベタしているところをアーサー王太子に咎められ、反省という名目で公務の手伝いをさせられているらしい


「君のせいでハニー達と甘い時を過ごせないからね、君がその分ボクを癒すのは当たり前だよね」


と、わたしの左手をスリスリスリスリ撫で回すのだ。

本来のヤツはスキンシップという名目でアチラコチラと触れてくるのだが、左手だけは許すというアーサー殿下の命令をここ執務室では律儀に守っている。

てゆうか、ここにわたしの意思は入らない。

わたしは左手も触られたくないというのに……。


それにコイツ。この頃休み時間になるとわたしにちょっかい掛けにくる。


「迷惑ですが!」

と何度拒否ってもつけ回す


─ストーカーだろうか?


とにかくレシェルド・マーキュリアという男は、アイリスにとってはウザイ。ウルサイ。メンドクサイの三拍子が揃っている。

学園では相当モテ男で通っているが、楓にはもう嫌悪感の塊でしかない。


しかも彼のいうところのハニー達が、わたしを見るたびギンギン睨んでくる。

あんな男、熨斗(のし)で包んで速攻お返ししたい。

何故王太子殿下はあんなヤツをわたしに押し付けたのだろうか?


でもね。わたしダンスの腕前大分上がったよ。

特別講師をユークラリス伯爵……お父様に頼み込んで派遣して貰って、夕方赤薔薇棟のダンスホールで練習を重ねている。

綺麗な女の先生ね。

何故って、わたしヤツが嫌いだから一刻も早く解放されるために頑張っているのさ!

背に腹はかえられないからね。



そして四人目の男。王太子殿下の護衛の学園生


ジェイド・エマーソン


見習い騎士。卒業したらたぶん王太子に剣を捧げて忠誠を誓うのだろうね。

乙女ゲームでは少しチャライ感じの男子だったが、この世界では石頭の堅物だ。

でもここではアイリスの癒しになっている。

他の三人がろくでもないので、相対的にジェイドの律儀さが嬉しく感じるのだ。


そして彼がわたしの勉強を教えてくれている。

元々勉学が得意でない男だったが、アーサー王子の役に少しでも立ちたい思いから努力してきた。

だから天才肌ではない彼の理路整然とした教え方は、アイリスにはピッタリなのだ。


婚約者のフェリスさんからも念を押されているらしく、わたしの為に頑張ってくれている。

感謝してもしきれない。


レシェルドがこぼれ落としたカブを拾って、ジェイドがせっせとカブを上げています!

フェリスloveのジェイドさんなら、安心して身を委ねられます。変なことは間違ってもしないでしょうからね……。





そして一時間半程したころ、ブレイクタイムになりました。御茶の時間ですね。

わたしの左隣にはレシェルドが座って、相変わらず左手をスリスリしている


─コイツ絶対変態だ!


右隣はジェイド様からフォークライ様に入れ替わりました。そして何時もの侍女さんが紅茶を運んできたの。

フォークライ様は私物から菓子の箱を出し、わたしに見せた


「君の為に用意した。全て君のものだ」


上蓋を開ければ、カラフルなマカロン詰め合わせセットが現れた


「うっわー!マー君!これ全部食べてもいいの?」


速攻でアイリことアイコが現れる。

マー君ってあーた。()()シミリアンから付けたアダ名ね。


「もちろんさアイリ。君の喜ぶ顔をみたくてね」

「嬉しいー!だーい好き、マー君!」


そうよ。このフォークライ様はアイリスは嫌いだけど、アイリが大好きな痛い男なのさ


『わたしのアイコに何するつもり!このロ○コン野郎!』


なんて心の中で叫ぶけど、フォークライ様の名誉の為にいうわ。

マー君ことマクシミリアンは決してロ○コン野郎ではない。子供が大嫌いだ。

アイコ限定で好きすぎるのだ。

それにアイコ好きでもそれは恋愛感情ではなく、保護欲というか守って可愛がってあげたいと思うらしい。


アイリスには冷たい眼差しの正に【氷の貴公子】だけど、アイコが現れるととたんに甘々のデレデレ顔になる。

何でもアイコは気の休まらない学園生活のなかで、唯一無二のオアシスらしい。

マクシミリアン公爵家という重い肩書きなど関係なく、素で接することが出来るから好きだと言う。

それにしてもフォークライのデレ甘顔!

楓なアイリスには一度も見せてくれなかったよ!

それに【氷の貴公子】があんなデレアマ顔するなんて、言いふらしてーーー!


けれど他言無用なのです。

先日フォークライ様のデレアマ顔思い出してニヤニヤしていたら、いきなり壁ドンされて目と目の間3センチの至近距離から脅されました


「もしこのこと誰かに話したら、イリス消しますよ」


─恐すぎる……。

─誰にも言えませんよ……。


これでわたしは端から見れば、イケメン四人を独り締め状態なのです。

でもわたしの本心は



─早くわたしを解放しちくれ……



ただそれだけが願いさ。













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