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お花を詰みに……


わたしはエイミア。


アラン様が旅立ってから、早くも一ヶ月半が過ぎました。

『離れたら忘れられるのではないか?』

と思いましたが、こうしてアラン様と会えない日々が続くと尚更想いが募るばかりです



─どうせ叶わぬ恋なのに……



切なくて寂しくて胸が焼けるようです。



季節も12月となりましたが、アイリス様は相変わらず王太子殿下と共に昼食を取っています。

わたしも付き添いで食堂までいきます。

わたしは初め一人で食事をしていましたが、幼馴染のデイドに絡まれているわたしを目撃したエリザベス様が助けてくださり、それ以降はエリザベス様のグループで庇護されることとなりました。

エリザベス様自身はロイヤルルームでお食事なさっておられるので、そこに入れない侯爵以下のお嬢様方と供に食事をしています。


そうそう、アイリス様はテーブルマナーはもう合格点を頂いたそうですが、殿下の付き人となり何処へ行くにも側にいるようになりました。

アイリス様はアラン様と会えない寂しさを埋めるように今では王太子殿下と言葉を良く交わし時折、歯を見せて笑い合う姿もみせています。


そして放課後は殿下が公務をしている間、執務室で勉強をしているようです。

初めは殿下が教えていたようですが、今は公爵家の跡取りマクシミリアン卿に一任されてるようです。

マクシミリアン卿も直接教えている訳ではなく、アイリス様のレベルに合わせて学園生を家庭教師をあてがっているようです。


わたしはこの頃良く赤薔薇棟のアイリス様の部屋に招かれます。

お茶をしながらアイリス様は結構口さがなく愚痴を言っています。この前も


「やっとテーブルマナー合格頂いてロイヤルルームから解放されるかと思ったのに、息苦しくて死にそう」


なんてボヤいているのです。他のご令嬢方から見れば殿下に気にいられるなんて垂涎の的でしょうが、アイリス様は困っているようです。

でも以前よりも柔らかくなり、少しは殿下と打ち解けて気を許している感じがします。



そしてダンスのことです。

殿下は空いた時間に、アイリス様にダンスレッスンをしています。

アイリス様全然踊ったことが無いらしく、それをみかねた王太子殿下が講師することになったようです。


ですがアイリス様は基礎も何も出来ていなくて、この頃はアーサー殿下も公務で忙しくダンスのレッスンはある一人の貴公子に任せているようです


─レシェルド・マーキュリア


マーキュリア侯爵家の跡取りです。

別名─女たらし卿─

婚約者がいるにも関わらず、いつも学園生のご令嬢を5~6人も侍らしているのです。


ある意味アーサー王太子殿下と双璧をなす程のモテ男です。青髪の長髪で、顔はまあわたしが見ても美男子です。なんというか……優男で守ってあげたい気持ちになるのです。

とにかく女の子を見たら口説くのです。

女の子をひたすら誉めそやし息を吐くように口説くのです。


わたしも何度か褒められ口説かれました。

レシェルド様の性格を知ってるので直ぐにお断りしますが、それでも余り褒められた事のないわたしですら、いい気分になります。


そしてレシェルド様はダンス上手です。

相手パートナーを甘いムードでリードします。

わたしも何度か誘われましたがレシェルド様との密着度が激しいのに、全然嫌な気がしないのです。

ダンスの間は本物の恋人になった気がするのです。


ですが何故よりによってレシェルド様を講師になんて選んだのでしょう?このままではアイリス様が口説かれて、大変な事になるような気しかしません。




☆☆☆




─近!近!近!近!近!近!近!近いって!



女たらしのレシェルド様にダンスレッスン受けてる、わたし涼風楓ことアイリス・ユークラリス。

手を腰に回されギュッとされいるの。ステップを必死にあわせているけど、レシェルド様のイケメン顔がわたしの耳元で永遠と愛を囁いてくる


「君の瞳は朝焼け色の宝石。この国の宝石を全て集めても君の瞳には敵わない」


─ウッザ!


「その可憐で柔らかな唇で、私に愛を囁いてくれないか」


─囁くか!ボケ!


もうエンドレスで口説かれて、アイリスの精神は崩壊寸前なのです。

何故ならコイツも乙女ゲーム【白薔薇姫と七人の虜達】の攻略キャラクターの一人なのですわ。


そして楓の嫌い《女たらし》枠に入っている、絶対近づかないと決めていたキャラクターの一人なのですよ。

体の密着度が高くて流石に胸やら尻やら触られませんが、何気なく色々触れてくる。

それも優しく柔らかく接するので、かえって気になってしまうし、何よりポイントというかヤバイのです。


─えっとね……変な気分になるわ……これ


言葉は変なのですが、中毒性があるの。

優男なイケメン顔と甘い囁きとヤバイ手付きで、心や頭が必死に耐えているのに体が蕩けそうになっている


─ある意味……地獄だわ


それにダンスなら数分もすればパートナーは入れ替わるが、これはレッスン。もう一時間以上も躍りっぱなし。

初めはステップの練習だけで踊らないと聞かされていたのに、この〔たらし野郎〕が「実践に勝るものはないからね」なんてもっともらしい事を言ってこんな事態になった



─逃げよう!



わたしはバランスを崩した振りをして、格好よく受け止めたレシェルドに足払いをかけた。

護身術で習っていた柔道の足払いね。

ものの見事に決まって二人は倒れ込み、わたしはついでにエルボーを鳩尾(みぞおち)にぶちかました。

ゴホゴホむせるレシェルドに



「あら。ごめん遊ばせ!

わたくしお花を詰みにいって参ります。

今日はそのまま自室に戻りますので、悪しからず……。

では、ごきげんよう!」



ホワホワ微笑んで失礼と承知しながら、トイレに行くと暈しながらお礼も言わず帰路に着いた。簡易ドレスのまま飛び出したけど、制服は後で持ってきて貰おう。

これでレシェルドも懲りたでしょうから、わたしのダンスパートナーを断ってくれたら完璧ね。



わたしは解放された喜びで、軽やかに帰路に着いたのだった。













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