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永遠に走り続けて!


ここは白薔薇学園裏側。

北側。

黄薔薇棟正門。

一階からは赤薔薇棟と青薔薇棟の北側連絡通路を抜けて、一旦白薔薇学園内を通りそこから黄薔薇棟への連絡通路を抜けて黄薔薇棟正門へ向かう。

ちなみに白薔薇学園棟は通路以外は閉鎖されている。

そこから少し離れた屋根付き停留所に向かうのだ。

ここには幾人もの男女がひしめいている。

街へ行く乗り合い馬車が来るのだ。


その面々の中にリリとララ。そしてティークとタックの姿があった。

少し長めの馬車が来て、四人はその中に入って行った。

すし詰めで馬車は街へと向かう。

でも馬車の中は左右で男女の座る位置が決まっているので、男女は向かい合いすし詰めでも体か触れあうことはない。



一方アランとわたしアイリスは、四人の従者とは真逆の白薔薇学園正門にいた。

南側。

赤と青の各棟から一階南側連絡通路を抜けて正門で落ち合った。

一階の連絡通路は外出許可証があれば、提示しただけで抜けられる。こちらも通路以外は白薔薇学園一階は閉鎖されている。

正門は裏側ほど騒然としてはいないが、ここにも幾人もの男女の学園生が待っている。

控室が解放されて、みんな座っている。

こちらにはご貴族様しかこれない。一応お付きとしてリリ達も来れたのだが、今回は遠慮した。


デートだから。


わたしは少し早く来すぎて女性用控室で馬車を待っている。

服装はもちろんドレスではない。

制服をそのまま普段着にアレンジしたような服装。

色は流石にピンクじゃない。白と淡い橙色の組み合わせ。秋っぽい装い。

大きな帽子を被っている。


そしてこの控室ヤバい。雰囲気がヤバい。

アイリスに向ける敵意の嵐。居たたまれない。

目が合うと物凄い形相で皆睨んでくる。

王太子殿下の件が原因だろう。

わたしの隣へスラッとした少女が腰掛けた


「アイリス様。初めまして。わたしフェリスと言います。ジェイドの許嫁です」


フェリスは淡い栗色の髪で瞳はグリーン。こちらは白を基調とした黄色との組み合わせの普段着を着ている。

アイリスより幾分スカートが短めだ。

白いストッキングの足がスラッと綺麗だ。

物腰は赤薔薇騎士のお姉様方と似ている。

確かこの人は


「初めましてフェリス様。ジェイド様にはいつも助けていただいております。

フェリス様は学園ではソフィア様のお側におられたような……申し訳ありませんフェリス様。わたくしこの人格になりましても物覚えがあまりよろしく無いもので、間違っていたらご免なさい」


フェリスは嬉しそうに華やぎ


「憶えていてくださったのですか?

嬉しいですアイリス様!

わたしソフィア様の学園内での護衛も兼ねています。

同い年でクラスも常に一緒です。

まだ剣の腕はからっきしですが、これでも騎士をしています」


そうはいってもそれなりに腕は立つのだろう。でないと未来の王妃の護衛は勤められない。

それに動きが洗練されていて、カッコいい


「良かった見間違いじゃなくて!

もしかして今日はジェイド様とデートですか?」


「ええ。これもアイリス様のお陰です」

「わたしの?」


フェリスは頷き


「はい。昨日ジェイドとお話した折り、アイリス様がアラン様と街でデートをするお話聞いたそうで、触発されたみたいで初めて誘ってくれたの!

午後1時過ぎに待ち合わせております。

頭固いから、諦めていたのですけど……」

「午後からですか?でもまだ朝9時前ですよ?」


「ええ。そうなんですけど、わたし街が初めてで色々見て回りたい所があるのです。実は……」


とフェリスが振り向き釣られて後ろを見ると、女の子二人が手を振ってきた。

どちらもソフィアの側にいた学園生だ。

わたしもほわほわ微笑みながら振り返した


「ソフィア様は今日は赤薔薇棟から出られないそうで、私達に完全休暇を頂きました。

午前中はわたしは彼女達の護衛です!

昼食後彼女達を無事帰りの馬車に乗せて、それからジェイドと落ち合うのです」


「ジェイド様も今日はおやすみですか?」


フェリスは首を振り、顔をアイリスに向けて囁いた


「いえ。午前中殿下の護衛です。

お忍びで街へ繰り出しているようで……午後には白薔薇学園へ戻られるそうで……あっ大丈夫ですよ!アイリスさんのことは話しておりませんから」


わたしが思わず嫌な顔をしたのが分かったのだろう。

慌ててフォローに入るフィリス。

そして小声で


「本当に周りの方々もアイリス様の気持ちも分からずに……あんなに敵意を剥き出しにして。

殿下も気に入ったお方がおられると御執心なさりますから、飽きるまでの辛抱ですよ。

せめて他のご令嬢の方々もお連れになれば、和らぐでしょうけども……」


なんとなく事情を察していてくれるみたい。

そして馬車が到着し、ユークラリス伯爵家の名前が呼ばれた


「フェリス様。お話しできてホント嬉しゅうございました。また機会があれば是非またゆっくりとお話し致しましょう」

「本当ですか?アイリス様!是非お話し致しましょう!わたしもこうしてアイリス様の人となりに触れて、喜ばしく思っております」


そして二人は両手で固い握手を交わした。




☆☆☆




わたしの前に止まった馬車。

ユークラリス家の馬車ではなくて、白薔薇学園所有の馬車。事前に予約する方式。

上級貴族以上の皆様はこちらを利用します。

もちろん公爵家、王族は別仕様になっております。


馬車には大きな白薔薇の文様!


そして御者が扉を開ければ、そこにはアラン!

ベージュのスマートなスーツ。

細身のアランにピッタリ!

シャツは渋みのあるワイン色そしてネクタイは無しね。

ボタンを胸の半ばまで外し、色気半端ない。


わたしは喜色を隠しもしないで、馬車に乗り込む。

でも、焦っちゃダメ。

絶対見られてる。

顔はデレデレだけど、動きはゆったり落ち着きながらアランと向き合って座る。

顔は瞬間。真面目腐った表情にシフトチェンジ!


何気ない風を装っておりますよ。


馬車の扉が閉められ、走り出します。

わたしは窓の外、物凄い敵意溢れる顔つきのご令嬢方に手を振ります。

別に喧嘩売ってる訳じゃないよ。

そこでフェリスさん達三人が手を振ってくれているから、そのお返しなの。


そして見えなくなりました。


わたしとアランは素早くカーテンを引くと、わたしはアランの隣にお尻を滑り込ませます。



─だって!時間がないんだよ!



15分くらいで着いちゃうもの。


「アラン……」


わたしはトロンとした瞳で見つめる。


「カエデ」


そしてアランはわたしを引き寄せ……


ぶちゅっていたしました。


─待ちに待ってたよー!

─待ち焦がれていたよー!


一度離れて。

また見つめ合って。

お互いの気持ちを確かめ合った。


─そして……ぷっちゅ


長い口づけだよ。


ホントあの気の利かないクリスタル野郎に、散々アランとの時間を潰されたから、募りにつのった想いを爆発させちゃう!

唇をくっつけたまま、抱き合って……!


アラン凄いいい匂いしてるの。


くらっくらっくらって


気を失いそうになっております。




このまま永遠に走り続けて!馬車よ!


















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