空気読まないクリスタル野郎!
いよいよ授業がはじまりました。
ホームルームじゃなくて本格的なやつ。
今日は担任オカッパことカオルコ先生。
今日はホームルームも含めて二時限で終了です。
で、今日の本格的な授業は国語です。
─うん。全然わからないや!
少しは勉強したよ。たぶん一学年から順を追って勉強すればきっと上手く出来たかもしれない。
なぜか会話は日本語に変換されるけど、日本語じゃないからね。フォラリス語だって。
どちらかといえば文字は英語にちかいかな?
いくつかの単語を組み合わせるみたい。
でも今は三学年の授業を受けている。
あっ。基本的なことは、貴族なら家庭教師に習って学園に入る頃にはスラスラ書けるはず。文字はね。
でもアリスは全然だからさ。
その記憶を継承した楓もそれに準ずる訳よ。
馬車の中でキスの合間にアランから基礎的なことは教えて貰ったけど……もっと真面目にやれば良かった。
後でリリに教えてもらおう!だってリリ。ちゃんと手紙とか文章とか書けるよ。
侍女は手紙の代筆とかも業務に含まれているらしくて、仕事終わりに予習復習真面目にやっていたらしいわ。
優秀だからね。
ホントはリリのような子がこういう学園に入って学べば、もっとこの国は良くなると思うよ。
まあ。何だかんだて授業も終わりました!
今日は午前中で上がりです
そしてお待ちかねのお食事ターイム!
アラン様と[テーブルマナー講座]という名目を借りた隣同士の素敵な時間。
授業終わる前からドキドキして、正直身が入らなかった。
─さてと……
終了の鐘が鳴り、わたしは落ち着かない。
たぶんアラン様の事だから迎えに来てくれくるとは思う。
─はて?廊下にでて待ってましょうか?
─それともここで大人しく待っていましょうか?
─とにかく目の前のダリルがウザイ!
わたしに色目を使ってくる。
直ぐ様エイミア様がわたしの間に入り、視線を遮ってくれた
「アイリス様。お食事はどうなさいますか?
今までは一階の合同食堂に降りられてお食事をしておられましたが、流石に級長になられるようなお方がそれでは示しがつかないでしょう。
どうでしょう。これからわたくしと共に三階へ参りませんか?
間もなくアラン様も参られるでしょうから両脇を固めれば、この幼馴染もうかつに手出しは出来なくなると思います」
有り難うエイミア。
気を使ってくれて
「エイミア様のお言葉に甘えさせて頂きます。
間もなくアランが迎えに来ると思いますので、それまでお待ちいただけますか?」
「はい。そのように……では、廊下で待ちましょうか?」
「はい。そうしましょう!」
わたしとエイミアは当たり前のように手を繋いで、廊下に出る。
ダリルはなぜか、わたしのキスの原因を作ったマーク君と他何人かの男子学生に連れられて部屋を出ていった。
なにやらかにやら喚いていたけど、今は教室から消え去り静かになった。
きっと、マーク君は責任を感じてわたしを助けてくれたのだと思う。
廊下に出て暫くすると、アランが向こうから歩いてきた。わたしとエイミアの姿を見てなにやら察したようだ
「ボルドー嬢。先程は姉様を助けてくださり有り難う。
では、行きましょうか」
そしてアランはわたしの前を先導して進む。
当たり前のように三階へ向かい、わたしとエイミアも手を繋いだまま食堂に入る。
視線が一堂に集まる。
一階の合同食堂は基本誰でも自由に使用でき、用達に来た外部の人間も利用できる。
学園生では平民そして男爵以下の下級貴族が主に利用するの。
今まではアイリスが時と場合を選ばず王太子などの攻略対象に突撃するので、遭遇しないために一階の合同食堂を使っていた。
合同食堂は広くて、オードブル形式で皆並んで好きな食べ物を選んでいた。ただ窓口は貴族と平民用があり、貴族は少し品数も中身も豪華で平民はランクが落ちる。
席は一応貴族席と一般席に別れていている。
貴族席はテーブルも椅子もキモーチ豪華ね。
アイリスとアランはいつもここで食べていた。
そして三階の食堂は、貴族仕様でテーブルも椅子も豪華で一階とは雲泥の差。
そして公爵以上はロイヤル席に座れる。
ロイヤル席は個室のように視界が遮断されていて、扉とかは無いけれどわざわざ覗き込まないと見えない仕様になっている。
通称はロイヤルルーム。
それに一階食堂は広くて席の間隔が狭くて、なんだか日本の大衆食堂みたいな感じがしたが、こちらはレストランね。
食事も豪勢で器も素敵。
こちらは案内係がいて食堂に入ると身分に応じて席に案内される。
公爵以上はロイヤル席だけが特別で後は同じ。
ただ、奥の方が身分が高い者になる。
王族は特別で護衛もいっしょに食堂入りする。
護衛と言っても学生の騎士爵位の者が務めるので、常時二~三人は帯剣を許された特別な騎士の学生が同行する。
子爵以上が上級貴族になるけど、子爵はどうしてもワンクッションのような扱いになるわね。
伯爵家を上級貴族の一番下には出来ないから、取り敢えず入れました的な感じ。
ここでも入り口に一番近い所が指定席で、お茶でも端っこが御約束。
一応面子があるからね。ややこしい。
で、わたし達はエイミア様が案内係の人にゴニョゴニョ言って、ダリル卿と遠く離れた席にしていただきました。
そして食事はメニュー表の中から選び決まったら呼び鈴をならし、注文を聞きに来たウェイターに内容を伝え、
料理をへこんで貰います。
ホントレストラン!
只ね。時間も限られているから流石にフルコースとかじゃないよ。いっぺんに食べられる食事ね。
スープと前菜は直ぐに用意されて、後はまとめて運ばれて来ます!いちおうデザートも紅茶もつきますよ!
これも事前に食費は払ってあるのでいくら食べても良いのですが、ここにはそんな卑しい御貴族様はいません。
優雅に食べ、優雅に歓談し、優雅に去っていきます!
一階の戦争のようなごちゃ混ぜ感は全然ないです!
─こりゃアリス連れて来れないわね
わたし達はお魚のムニエルをメインに頼みました。
そしてスープをいただきながらお話しを致します
「わたし。テーブルマナーを学んでいるのです。
目覚めてからずっとこうしてアランに教えて貰っているの……」
一応当たり前のようにアランと隣になった言い訳。
エイミア様はわたしの反対側。ダリルに近いほうね。
近づいたら撃退する気満々よね!
「以前のアイリス様はそれはもう本当に美味しそうにお食事をしていらしたから、何だかこんなしほらしいアイリスは新鮮に感じてしまいます」
エイミアはふふふと微笑んだ。
笑うとほんのりふくよかな頬っぺにエクボができて、何とも可愛らしい。
そして食事も運ばれて来てテーブルマナー講座を実践しながら、歓談しております。
するとそこへダリルが特攻をかけて来たよ!
わたしは思わず身構えエイミア様が中腰になったけど、何故か直ぐにダリルが諦めて引っ込んだ。
その原因がやってきた
「やあ。アイリス。珍しいね。昨年は一度も顔を出さなかったからね。
会えて嬉しいよ!」
王太子アーサー・ジュエルク・フォラリス殿下がにこやか爽やか小憎らしい笑みを浮かべて、取り巻き二人も引き連れてやって参りました
「殿下。わたくしもお会い出来まして嬉しゅうございます。
あの殿下。わたくしの姿が珍しいのは分かりますが、あまり見詰められるとお恥ずかしいです。
わたくしまだマナーも何もなっていなくて……きっと不快な思いをされると思います」
アーサーはわたしを何故かガン見してくる。
─いいから早く行ってよ!
そんな願いとは裏腹に
「ここ。空いてるよね」
なんでよりにもよって、わたしの正面に座ったよ!
─もしかして……ここで食事をするつもり?
─殿下注文してるし、何でよ!
わたしは他のご令嬢からの痛い視線を受けて、居たたまれない気持ちになった。
わたし。空気よめないピンク女だけど、殿下も空気読まないクリスタル野郎ね!
─はぁ~~~~~~
わたしは心の中で盛大にため息をついた。




