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いい加減にしてください!

 

──ざわっ──



ちょっと騒がしくなって、なんか男が一人取り巻き数人付けて教室に入っきた。

そしてわたしを見かけて、おっ!っていうような顔をして近づいてくる


「やあ。はじめましてでいいのかな?

ボクはダリル。アンダーソン伯爵家の者だ」

「はじめましてダリル様。

わたくしはアイリス・ユークラリスです。

エイミア様からお聞きいたしました。わたしの補佐をしてくださるそうで、よろしくお願いいたします。

ダリル・アンダーソン様」


「うわっ。本当だ!

なんか普通に話せている。新鮮だね」


─うっわ。軽!


なにこいつ。いろんな垣根とかいっぺんに飛び越えてくる。机に両手ついて、ちょっと後ろから押されたら事故でキスるくらい顔が近い。

興味深そうにわたしの顔をマジマジとみている


─ほんっとしつ……!


えっ?


─なんで?


今わたしキスしてるよね……

思いきりキスされている!


─いやっ!


「すっすみません!ぶつかっちゃって……」


こいつの後ろから男子学生が申し訳無さそうに顔を出し、ビクッ!てしてる


「ちょっとダリル!なにしてんの!

さっさと離れなさい」


立ち上がったエイミアがダリルの肩を掴んであわてて引き剥がす。

ようやく唇の重なりは無くなった。


ぶつかって事故ったのは分かる。ちょっと懸念した通りに顔が近すぎて押されてキスっちゃったんだろう?

でも、なんでずっと引き離されるまで唇に張り付いたままだったの?


今、エイミアに肩を掴まれて小言お説教くらっているのに、ずっと視線はわたしに向けたまま。

それに馬鹿みたいに真っ赤な顔になっている。


─視線が熱っぽい


これって……あれだよね……よく少女漫画とかにある展開……なんとなく気になっていた男女が躓いた拍子にキスしたり……とか……それでふたり顔を赤らめて……お互いの気持ちに気がついて……ケッ!ンナワケアルカ!チューガクセイカ!……って思わず突っ込みを入れたくなるような……王道的展開!……わたしはこれっぽっちもトキメかないけどね……この栗毛天然パーマのモワモワ頭……まだわたしを見ている……つか……見つめられている……えっと……どうしよっか……


「キスしちゃダメだよ!」


─ででくんなーアリス!


声がデカイワ!


─アホか!


すぐ引っ込みやがって!

タイミング神だけどね!


でも、ホント神だよ!

ここは乗らせて貰うよ


「ダリル様。あまりお顔が近すぎますと、今のように思わぬことが起きてしまいます。

次からはせめて、わたしがとっさに避けられる距離を保っていただけますか?」


いやわたし見事に場慣れじゃないな……キス馴れしてるよ。アランと千回はやっちゃった経験が生きているね!


─千回は大袈裟かな?


でもいい線行ってるとおもうんだよね。馬車の中5日もふたりきりだったしね。しまくったよ。

お陰でこいつにミジンコもトキメかないよ


『こんなことだってスラスラ言えちゃう!』


顔も全然赤らめていないと断言できる。

まっ、これでお開き、手打ちってことでいいっすよね



ダンッ!



ダリルは机に両手をうちつけた!


っっって顔近!モワモワ近!ダリルさん今の話聞いておりました?


「惚れましたアイリス様!ボクと結婚していただけませんか!」

「絶対嫌でございますダリル様。

お戯れはよしてくださいまし。

ミジンコも可能性がありませんことよ」


ミジンコ言っちゃった!何か言われる気配ビンビンしてたんだよね!速攻で断ちきってやった!


 

─ざまみやらせ!


「いえ!それはお断り致します!

ぜひ結婚を!」


─断ったの断られたよ!


そういう切り返しあるんだ?って素直に感心した。

わたしが当事者じゃなかったら『がんばれよ』って応援していたかもしれない!

何か嫌な感じはしないんだよね。

実直な馬鹿な感じがして……一直線で周りが見えてなくて……って?周りの視線が私たちに集中している……痛い


 ざわっ。

 ざわざわ。

 キャーーー

 ステキーー


あちこちで黄色い声援が近づいてくる。

教室のドアからアランが顔を覗かせた。


クラスの女子もつられてアランを見る。

うわっ何人も瞬間顔を赤らめている



──媚薬だよアラン──



わたしが心配で見に来てくれたんだ。

今。目があった。


 キャー

 キャー

 キャー


わたしの身近でも黄色い悲鳴があがる。


アランがわたしへ

パーフェクトスマイルをかましたのだ!


─どうだ!羨ましいだろ!


いい男だろ!カッコいいだろ!


─初彼だよ!


初彼!

相思相愛のアラン様だよ


でもちょうどいい。このモワモワに見せつけよう!

ちょっと女子には恨まれるかもしれないけど、非常事態だからね。避難警報鳴りまくっているよ!


わたしは速攻立ち上がると、アランの元へ駆けていく。

そしてアランの両手をわたしの両手で包み、この大きな胸元まで引き寄せる。

あたっちゃってる。

そしてホントに鼻と鼻がくっつきそうな所で、モワモワには見せなかったウルウル目線をアランに見せる


「アラン」

「どうしました姉様?」


なんて優しい眼差し


─惚れ直しちゃった♪


「今わたし、婚姻を迫られていて……直ぐにお断りしたのですけど……その……諦めてくれないの……どうしていいか分からなくて……わたし怖い……」


もうこれだけ騒ぎになっているから、今更隠しようもないでしょう。ここはハッキリと言わないとね。

ちーーーーっとも怖くないけど、ここは大袈裟に大きな声で言っちゃった。

これだけ見せつけたらいい加減諦めるでしょう。

チラッてモワモワダリルを見たら、すごい形相でこっちにきたよ!


手を離し、アランが盾になってわたしをアランの背中に隠す。

ダリルが正面に立ちはだかる


─あんた一体なんなんだ!


「ダリル卿。これはどういうことですか?

姉様も怖がっていますよ」


「アラン卿もいい加減、姉離れしたらどうですか?

これは私がアイリス様に思いを告げているところです。邪魔しないでいただきたい」


おいおいおいおい!

邪魔してんのわ。あなたでですわ!

もしかしてストーカー体質?思い込んだんらなんとやら。山越え海越えどこへでも!ってか?


─こっわ!


「確かに姉ですが、ボクは養子ですからね。

今はパートナーとして接しています。

アイリスが望んでいるならともかく、あからさまに嫌がっていますよ。それどころか怖がっています。

ダリル卿。我々は貴族です。平民のように惚れた腫れたで渡って行けません。貴方がどれほど懸想したところで、思いは叶いませんしこのアランが叶わせません」


「それは建前だ。男と女の激情の前には陽炎(かげろう)に過ぎない!」


 いやいやいやいや!


カッコいい事言ったつもりかもしれないけど、わたしビシッと振りましたよね!

ちょっと妄想癖凄まじすぎ!こいつには効き目ないかもしれないけど、ここはわたしが皆にハッキリと知らしめねば!いい具合に野次馬も集まってきた所だしかましたろ!

わたしはアランを押し退け


「いい加減にしてくださいダリル様。

わたしは貴方のわたしへ向ける想いがどんなものかは存じませんが、わたしはあなたを望むことはございません。勝手な思い込みでわたしやアランを巻き込まないでくださいませんか?」


ここでハッキリと言わないとね、モアモアも引くに引けないと思うからさ。あえて言っちゃるよ!


「わたしの心の中はアランが占めております。あなた様の入り込む隙間はございません!」


アランは新学年になるまで、わたしのお世話をし、導いてくれた。子供のようなわたしを投げ出しもせず、最後まで面倒を見てくれた。

そして事故って一時意識不明に陥ったけど、こうして新わたし楓が生まれた。

アランのわたしへ注いでくれた日々の積み重ねは忘れず心に残っているよ


わたしは生涯をかけてその恩に酬いるよ!


「ダリル様。

あなた様の言われる女の激情とやらがあるとすれば、わたしは全てをアランに向けております。

あえてまた申し上げます。

わたしの心にダリル様の入り込む隙間はございません!」


 おーーー


どよめきが起こる。

一部でパチパチパチパチ拍手も聞こえる


「しかし……それでも……先程熱い口づけを交わした身なれば……」


─どこが?


わたし見事に惚れ惚れするほど冷めきっていましたが……。



 バチン!



大きな音が響いた。

モワモワダリルが頬を押さえて放心している。


─わたしじゃないよ!


「いい加減にしてください!ダリル様」


振り切った右手そのままに、ダリルを睨み付けるエイミアの姿があった。




─こんな怖い顔も出来るんだ?



というくらい、エイミアはダリルを睨んでいた。
















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