さんこの誓い
「お嬢様……恋していらっしゃるのですね……」
リリの言葉を反芻してちょっと驚く楓
そして力強く。
あらんかぎりの力を込めて頷く
「ええ!めっさ恋してます!」
「えっ?めっさぁ?」
今度はリリが困惑している。言葉が分からない
「めっちゃくちゃ恋してます!ってことです!」
「めっちゃ?くちゃ?」
尚更わからない
ここで空気だったララがすかさず
「それは煮ても焼いても食えるってことっちな?」
相変わらずララは存在自体がわからない
「そうそうそうそう!ララ解ってる!」
「ドンブリにごちゃ混ぜしても、肉は肉だっちもな?」
「そうそうそうそう!何があっても恋は恋ですよ!」
イリス様とララ。ふたりの会話に付いて行けないリリ
─うん。正解
誰も付いていけないわ!
リリはふーっとため息をつき
「わかりました。イリス様」
「えっ?何が解ったの?」
楓がキョトン?とする
「私も猫をかぶることにしました」
「えっ?リリが?」
「はい。でも子猫までです」
リリは悪戯っこのように笑った。
直ぐに表情を改めて
「但し、お友達なんてごめんでございます」
─えっ?
今度はわたしが絶句する
「私はこれでもアイリスお嬢様の一の付き人を自認しております。ララにもこれから付くかもしれないどんな方にも、それは譲るつもりはございません。
そしてお友達等よりも遥かに私はアイリスお嬢様のことを大切に思っております。
ですから、お友達などという者に格下げするつもりは毛頭ございません。
でもシェレイラ奥様と侍女頭のアマンダ様のような、あのような『親しき仲にも礼儀あり』の御親友になりたいとは夙とに想います」
「リリ……」
相変わらず堅物で真面目で理詰めでお茶目。
─そこがなんともカワイイよぉ~!
「リリ!イリス!ちょーーー嬉しい!」
「お、お嬢様!」
隣のリリに抱きつく
「その……デスマスチョウですか?ここで誰もいない時に限って、それは止めます。イリス様」
「様づけも厳禁一括ニコニコ払い!」
「えっ?イッカツ?」
「様付けもダメダメってこと!御親友ならなおさらなおさら!」
─ふぅ~~
諦めのため息。
そして三人をそれぞれの椅子に座るのを確認すると
「但し。こちらにも条件がごさいます」
「 呑める物は飲みましょう。苦いと吐き出す気満々です」
リリは姿勢を正し
「イリス様も子猫までです。あんなブッチャケとか訳の分からない」
「ぶちまけますよ!ってことよ!」
「そういうことを言っているのではございません。それに話の腰を折らないでください。
私。子猫止めますよ」
「ごめんなさい。骨折治します」
─コホン
リリは仕切り直し
「イリス様は猫の皮を脱ぎ去った姿は、とても容認できかねます。ご先祖様に顔向けできません」
「そんなに!大袈裟だよ!ジャ○に報告しちゃうよ!」
「そういう訳の分からないのも控えて下さい。いちいちえっ?えっ?って困惑していたら御親友などやってられません」
「しぶしぶわかりました。しぶしぶほどほどにします。しぶしぶしぶしぶ子猫で我慢します。『にゃぎゃ~~』じゃなくて『にゃん』にくらいに可愛くなります」
リリはクスッと笑い
「そうです。可愛くなってください。
アラン様に甘えていらっしゃるように……ね」
リリがめっさ可愛くウィンクした。
イリス様は撃ち抜かれ、撃沈した。
心臓を抑え死んだふりしてる
「あの?お嬢様?大丈夫でございますか?」
「早速いってみようかぁーー!はい、デスマス。様禁止。トライトライ」
復活が早い。
ホラホラホラホラオーラを出してリリを窒息させる
「あのアイ……」
「あっわたしのことはイリスでいいよ!
なんか妖艶な響きで、いい女感ハンパないからさ!
ほれほれリリ!レッツトライ!」
「……イ……イリス。これからもよろしく……」
わたしは『にこっ』て笑って
「はい。よろしくするぞよ。
そしてリリ。これからも……よろしく」
わたしは手を差し出し、リリは受け入れ握手する。
そしてキュッと力を入れる。
──同盟は結ばれた──
打ち取れなかったけど、ほどほどが丁度いい
手を握ったままララを呼び
「ララはそれでいい?」
「あっちとふたりきりのときは、子猫も脱ぎ捨てるならいいっちよ。あれ、面白いっち」
「こら!ララ」
これはリリ。
わたしは制し
「たすかるわー。たまにまったりしてスライムになりたいときもあるのよねー。
でも、時々だね。いつもそれじゃあ、リリのご先祖様に顔向けできないもの」
「イリスさ………イリス……」
「なあにリリ?それならいいでしょう?」
リリはこくり頷いた。
そしてララとも空いた手で握手した。
ララにもリリと握手させた。
トライアングルだ
「これで三国同盟なりましたぁ!
ととととなんたらの誓い。えっと何だっけ?真面目なお兄さんと?お髭の長い赤い顔のひとと?デブのひとのやつ?
えっ分かんないや!さんこの誓いでいいや!
三人いるからね。
宣誓!
『同じ日に生まれなかったけど、死ぬまで仲良くしまーす』
はい手をつないだままバンザイ三唱!
バンザ~~イ!
バンザ~~イ!!
バンザ~~~イ!!!」
三人は手を繋ぎ合ったトライアングルのまま、バンザイ三唱をした。後のふたりはされるがまま。
でも三人とも嬉しそうだ
そこへ♪タリタリタリラ~♪と突然音楽がなる
「来客ですね。呼び鈴がなっております。
ララお出迎えを……」
リリが指示する。
人が来たから、わたしも猫をかぶらなきゃね。
─でももしかして
「アランからの差し入れかしら?
アイリに甘いお菓子届けると言っ」
「それ!アイリのお菓子!食べちゃダメだからね!」
ひとり芝居やってるよう。
アイリあんた居たんかい?
そこへララが変な顔してドアから帰ってきた。
手には封筒を持っていた。
赤い封蝋がしてある。
リリが開封しイリスに手渡す
「これって?」
それは公爵令嬢ソフィア・ローレンス様からの、秘密の会合への招待状だった。
ソフィア・ローレンス公爵令嬢。
王太子アーサー・ジュエルク・フォラリスのパートナー。
婚約者だ。
三人は顔を見合わせた。
三人の顔は引き攣っていた。
そして一応に顔が青ざめた。
・三國志の【桃園の誓い】
三國志の蜀の皇帝劉備と
義兄弟の契りをむすんだ
関羽と張飛との誓い
「我ら生まれた日は違えども
死す時は同じ日同じ時を願わん」
超ユーメイなセリフじゃ!
・三顧の礼
劉備が軍師として諸葛孔明を招いた故事。
留守の孔明を三回訪問して
信頼を勝ち得て臣下にした話です
・楓は秘技〈うろ覚え!〉で
このふたつの話をゴッチャにしてます♪




