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白薔薇姫と七人の虜たち


【白薔薇姫と七人の虜たち】



この乙女ゲームは一世を風靡した。



ゲームソフトの売上はニ十万本を超え、関連グッズは飛ぶように売れ、二作目も発表された。


アニメ化もされ、キャラの声優達がOPとEDを担当したことから、声優達のトークショウも兼ねたコンサートが各地で開かれ盛り上がった。

推しメンgoodエンディングのOVAも発売され、それぞれ予想外の収益を上げた。

コスプレキャラとして人気もあり、女子が男装してヒロインに愛を告白する動画が100万(ミリオン)再生を突破して話題となり、同系色の関連動画が盛んにアップされた。



一種の社会現象になったのである。



この頃は攻略サイトも充実していた。

シークレットキャラの八人目がいるらしく、茜から


『知っちゃったらぁ~ぜぇったい後悔するでぉ~』


と言われ、攻略サイトは見ないでなるべく自力でゲームを進めていた。


攻略可能なシークレットキャラの存在は誰も知らなかった。

発売後一年たってもそんな噂すらたたなかった。


 いや、噂ならあった。


それは制作会社が密かに流していた噂であった。

『シークレットキャラがいるらしい』

何十万人いうプレイヤーがプレイしていて、誰一人として辿り着かなかった。


そこで制作会社は大々的に発表した


「シークレットキャラはいるよ!みんな見つけてね」



 その一言で第二次【白薔薇姫】ブームが起きた。



涼風楓がこのゲームをプレゼントされたのは、そのブームが少し下火になった頃だ。

二次元男子に興味もない楓であったが、はまった。


茜と二人でアキバに行った時には、各キャラの等身大パネルの横でヒロイン然らしくポーズを決め、お互いに写真を撮りまくった。

見返すと凄く恥ずかしい。

客観的には、生暖かい目をむけられたに違いない。

きっとあの時、頭が沸いてた。

キーホルダーや推しメンファイルのグッズを買ったり、声優が出る他のアニメをチェックしたり、茜と情報交換で盛り上がったりもした。





【白薔薇姫と七人の虜たち】





──ここではないとある世界──

 


フォラリス王国の王都フォラリアスに

【白薔薇学園】はある。


王族や貴族から、裕福な市民や商人、奨学金を受ける優秀な庶民に至るまで幅広く学んでいる。

学舎(まなびや)は何棟かあるが、身分に関わらず一緒に勉強する。

全員寮生活で貴族男子は青薔薇棟、貴族女子は赤薔薇棟、庶民は黄薔薇棟に分かれる。



そこでドキドキワクワクの学園生活がはじまるのだ。



ヒロインの名前はアイリス・ユークラリス。

伯爵令嬢である。


ピンクブロンドの髪の見目麗しい美少女。

ドレスも基本ピンクで制服も一人だけなぜかピンク、誰がどうみても反論しようもないコテコテのヒロインだ。

性格は天真爛漫。見た目も心根も天使。


その一挙手一投足が男子たちを虜にする。


そしてヒロインが攻略するイケメン男子は、

王子二人(王太子と第二王子)、公爵一人(未来の宰相)、侯爵一人(遊び人風な優男)、伯爵一人(ヒロインの弟で養子)、騎士爵一人(未来の騎士団長)、商人一人(見た目ほぼ海賊な日焼け男子)の計七人。

他???なシークレットも含めれば八人となる。


 その中からお気に入りの一人を選ぶのだ。


学園は五学年制で、一年~二年目まではそれぞれのキャラに絡んで、好感度を上げまくり、二年目最後に推しメンからヒロインへの愛の告白を受けるのだ。


ちなみに各攻略キャラには、特定のペアになる異性がいて、三年~四学年まではその彼女と駆け引き、推しメンの取り合いをする。


最上級の五学年生では、推しメンと愛を育み、様々なイベントを二人三脚で突破する。そして最大のイベント、卒業式後の舞踏会へこぎ付けるのが、このゲームの流れだ。


卒業舞踏会イベントで学年投票で選ばれた

〈学園最高カップル〉は、最後の大トリに衆目の憧れの眼差しを受け、ダンスを踊る。

その女子のドレスが、白薔薇をあしらったウェディングドレス仕様で、将来の二人の幸せを感じさせる最大のメインイベントになる。



この白薔薇のドレスの着用を許された女子を


──白薔薇姫──


と呼び、このゲーム名の由来ともなっている。



普通にクリアするなら比較的簡単だ。

適当にポチポチやって大ポカしなければ、推しメンと舞踏会で踊ることはできる。

だが〈白薔薇姫〉を目指せば難易度はとたんに跳ね上がる。


〈学園最高カップル〉の投票のため、学園全体の好感度を上げなきゃいけない。

だから普段の行動がワガママ気ままなら、すぐにそっぽを向かれる。

メインキャラに絡まない、地味な学園の利益になるようなサブイベントも大切になってくる。

掃除や生徒会活動も頑張ったり。

例えば、カップリングに協力したり、勉強を教えたり、他の学園生の絡むサブイベントも欠かせない。

そんな地道な積み重ねも大切。

推しメンだけにうつつをぬかしていたら、白薔薇姫にはなれないのだ。


そしてメインキャラの好感度はパラメーター表示されるが、学園の人気パラメーターは表示されない。

ワンシーズンに一回、学園掲示板にお似合いカップルランキングが載るので、それを参考にする。


だが、不動の一位二位カップルがいる。

王太子と第二王子だ。

なら、この二人を攻略すれば〈白薔薇姫〉になれるんじゃない?と安易に考えるが、攻略するまでが大変なのだ。


第二王子には公爵令嬢がカップリングされている。

その彼女はいわゆる〈悪役令嬢〉で取り巻きが沢山いて、ヒロインの悪い噂を流したり、放置すれば好感度がだだ下がりする。

しかもヒロインより身分が上なので、面と向かって反撃出来ない。

いやがらせに懸命に耐え、仲間を募り、お約束の断罪イベントに繋げて、スッとするのだ。


王太子にも公爵令嬢がカップリングされているが、こちらは非の打ち所のない聖女のような令嬢なので、なかなか隙がない。

しかも王太子は一つ上の学年なので、ヒロインとの絡みは四年しかない。

正に攻略サイトとにらめっこしながら、針に糸を通すような慎重さで綱渡りして白薔薇姫を目指す最難関ルートになる。



そんな様々な困難に打ち勝って白薔薇姫に選ばれれば、プレイヤーは至福の時を迎える。


舞踏会大トリを飾るダンスは、三分弱ながら、推しメンそれぞれにオリジナル楽曲が用意されている。

今までの苦労と相まって、ダンスシーンで感涙にむせぶプレイヤーも少なくないという。

しかもダンスシーンは録画されており、何度でも見返すことができる。

おまけに3D処理されているので、様々な角度から楽しめて、お気に入りの場面で静止させたり、写真に残せるのだ。

その至福な瞬間をインスタにあげれば、同じ苦労を共有した白薔薇仲間達から祝福の嵐が巻き起こる。



とにもかくにも【白薔薇姫】は沢山の人々を虜にした




 涼風楓も虜となった一人である。









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