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聖女と帝国を愛する会


わたし……聖女アイリスを中心にずんずん進んで行く聖女loveの集団。聖騎士達がわたしを連れ出そうと割って入るけど、聖女信者達が身体で止めている。

わたしの言葉を守って、ぶん殴ったり蹴ったりはしていないみたいね。


わたしの極周囲はこちらへ寝返った元聖騎士達が、わたしに誰も触れないように逞しい身体を張ってガードしてくれいる。最期の砦ってヤツね。

兜は被っていないけど、鎧はきているよ。


ずんずん進むのは良いけれど周囲が屈強な男達に囲まれているので、見えない。

背伸びしても、全然前が見えない。


何だか怒鳴り声や女性の金切り声や悲鳴が聞こえてくるから、きっとわたしを捕まえようとする輩とやり合っていると思う。それでも前に進んでいるから、勝っているんじゃないかな?

突然止まったので、何事かと思っていたら


「聖女様!門に到着しましたが、どうやら閉められているようです。抉じ開けますか?」


う~ん。それって、喧嘩するって事だよね。


──聖女に流血沙汰は厳禁なのさ!


わたしは守護騎士マーカスにゴニョゴニョ伝えると、元聖騎士達が騎馬戦の土台を作ってくれる。

三人が下ね。もちろんわたしが上!

三人は下でトライアングルに組んで、わたしは上によじ登る!裸足になろうとしたら、騎士様達に『そのままでいい』と云われたから、お言葉に甘えています!

格好いい騎士様達の土台は結構高い!


お尻を腕に腰掛けるのは此方の世界の乙女としてちょいとはしたないけど、騎士様達が役得と思ってくれたらいいな?


まあ。でも。日本の運動会の騎馬戦では、この高みがわたしの指定席!男子に担がれ、グラウンドという戦場を縦横無尽に駆け巡っていたよ!


今日は流石に駆け巡らない。


人混みが凄くて危ないからね。


騎士様に担がれた高い所から見る景色は格別!

数千人がわたしに気付いて此方を見ている


『はーい!わたしが聖女よ!』


心の中で叫びながら、わたしはニコニコと手を振っている。


目の前にそびえ立つ大きな門!


扉は固く閉じられ、このヴァチルからわたしを出さないつもりらしい。けれど治外法権はここまで!

この門を抜ければ群衆を囲んでいる聖騎士達も迂闊に手を出せない筈。


わたしは傍に控えるマーカスを見下ろした。

マーカスは馬にはなっていないよ。


マーカスは気付いて目が合う


──俳優さんみたい!


格好いいっ!


でも見惚れてばかりもいられない


「マーカス。あの門はどうやって開けるの?

みんなで押したりするの?」

「機関室があって、そこに門を明け閉めする装置があります。動力は人間になります。

そこを押さえれば門を開けることが出来ます。

制圧しますか?」


うーん。出来れば荒事は止めにしたい


「その機関室からわたしの姿は見えるの?」

「ええ。そこから門のこちら側と外側を見渡せます」


なら話が早い。

脅せばいいのね。


「わたしが何とかしてみせる。任せて!」


わたしは光の杖を出現させ、高々と掲げた。

周囲の目が光の杖を注視する。


光の杖の先から、ポワポワと人の頭くらいあるシャボン玉の大きいのが天に登っていく。

そしてドンドン大きな黒々とした雨雲が出来た。

大きさはそうね。直径1000mもあるかしら?


その真円に近い黒い雨雲からバチバチと音を立てて雷が放出されている。


みんな口をポカンとあけて空を見上げていた。


実際は雷じゃなくて光っているだけだし、音もそれらしく成っているだけ。

CGの合成映像みたいなものね。


迫力だけで中身が伴っていないの。


でもこの中世のような世界の人々はCGの映画なんか見たことないから、この雷雲も本物だと思っているわ!


だからハッタリの有効活用!


「門を開けなさい!でなければ雷を落として門を破壊します!」



バチッ!

ドーーーーーーーーン!!!!



数千mの稲光が横に走って、凄まじい音がする!


女性や子供の信者さんは悲鳴をあげたり蹲っている


「次は容赦無く門に落とします!さあ!どうしますか?」


ギギギギギ


門がゆっくりと開く!


──ハッタリの勝利だわ!


誰だって死にたくないものね。

あんな雷が落ちたら門も壊れると思ったでしょうから、修理するよりも開ける方を選んだのね。


信者達は雄叫びや歓声をあげてわたしを囲んで門を抜けて行く!


雷雲は聖女を信じて付いてきてくれた人々が全て、ヴァチルから脱出してから綺麗サッパリ消え去った。


門の外にも雷雲に釣られて大勢の民衆が集まっていたわ。


わたしは騎馬戦のままで民衆へ語りかける。

拡声器のように声が遠くまで響くようにして貰ったわ。もちろん聖霊さん達にね


「皆様!わたし聖女アイリスは、思い通りに操れないわたしを魔女呼ばわりし火炙りにしようとした[神聖マーリア教団]と決別し、新たな会を作ります。

その名も[聖女と帝国を愛する会]通称[聖帝会]です。わたしは様々な奇跡を起こせますが、全てを思い通りに出来るのではありません。

聖女達は帝国の力を借りて、より多くの人々の幸せを実現させてきたのです。わたしはただの道標に過ぎません。

だから!皆様も聖女たるわたしと共に、この愛する帝国をより良く住みやすい国に致しましょう!」


歓声が木霊しわたしを包み込む。

わたしは騎馬戦体勢のまま、皆に手を振っている。


そしてこちらも直ぐ傍に控えている銀髪の背の高い男を呼び寄せて、その腕を掴んで手を上げさせた


「このエステバンが[聖帝会]の会長になります!

良いですか皆さん!聖帝会は教団ではありませんよ!

聖女や帝国が好きな人々がみんな会員になって、仲良く手を携えてこの国を良くしていこうという会になります!だからこの会長のエステバンはまとめ役で、教王さんのように皆に偉そうに命令したりしないから安心して!

皆さんもそんなエステバン会長さんに協力して、助けてあげてくださいね!」


エステバンはいきなり事前協議も無く会長を振られて驚いたが、その得意のポーカーフェイスを崩さず


「聖女様に拝命いたしました[聖帝会会長]のお役目。しっかりと務めさせて頂きます」


意思表明をした。







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