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ソフトクリーム


装飾と彫刻に彩られた白地に金の門がゆっくりと開いていく。


視界に飛び込むのは真っ直ぐ伸びたレッドカーペット。

その両脇には金色の鎧をきたエリートの兵隊さん。

皇帝直下の近衛兵ですって!

彼らは兜も金色で頭にモヒカンのように赤い毛がついているわ!


昔の特撮で三分間しか戦えない赤と銀色の巨人に、こんな頭のがいたわね。


マントは全員赤!

赤と黄金ってとても相性が良いみたい!

歴史映画の一場面を見ているようで、感動しちゃった!


その次に今度は思い思いに騎士の軽装をした人々が並んでいるわ。彼らは帝国の高位の騎士達なんですって!


デュークとわたしが通ると皆、ビシッと素敵に礼をしてくれる。


それら騎士の方々や近衛兵の背中には大勢の着飾った人々がいるわ。彼らはこの帝国の貴族達ね。


そして騎士の列が終えたら一段高くなっていて、そこには礼服やドレスで身を飾った貫禄ある。人々が豪華な椅子に座って両脇を固めているの。

彼らは侯爵以上の貴族の方々ね。

手前が侯爵家、そして奥が王族の公爵家になるわ。


また一段上がってまた両脇の椅子に超偉そうな人々がいるの。彼らはこの国の皇帝の次に偉い別格の皇族。

二大大公家の人々らしいわ。


更に三段目。

一際高い所の正面には皇帝の一族ね!


その回りには親衛隊がガードしているわ。


一番正面の超偉そうな椅子には皇帝が据わっている。

黒い礼服に惜し気もなく金糸と銀糸で刺繍されていて、金の縁取りの赤いマントをしている。

デュークと違って銀色の頭髪に青い瞳。

その偉丈夫が冷たい目でわたしを見下ろしている。


皇帝の両隣には貴婦人が座っている。きっとお妃様だろうけど、左側の王妃陛下は黒髪で黒い瞳の美しい人。日本人のお姫様みたい。

きっと彼女がデューク殿下の母親で間違いないと思う。


妃は王妃陛下も含めて七人も並んでいる。

その後ろには子供達がいるから、きっと皇子様や皇女様達ね。わたしがデュークの妻となれば、彼らはみんな義兄弟になるのかしら?


わたし達は身を屈め礼をする。

皇帝は立ち上がりもせず睨むようにわたしを見ている。

わたしの背中の冷や汗が半端ない


「その者がお前が選んだ聖女候補か?」


皇帝がデュークに尋ねる


「はい。わたしの魂が彼女と告げました。

彼女以外、何処にもわたしの正妃となる者は存在致しません」


皇帝……もしくは皇太子になれば最低五人の妃を娶らなければならないけど、皇太子妃は聖女が成る決まりだからね。デュークはハッキリとわたしを聖女であると宣言しているような物ね。

皇帝は身動ぎせずに


「そうか。そなたが聖女候補か?

確かに伝承の聖女そのままの姿だな。

桃色の頭髪に紫水晶のような瞳……」


ここで軽くデュークが咳払いをする。自己紹介をしろって合図ね


「お目に掛かれて光栄で御座います皇帝陛下。

わたくしはフォラリス王国のユークラリス伯爵家が長子。

アイリス・ユークラリスでございます」


「ふむ。

朕はオーギュスト帝国皇帝。

レイモンド・スキピオニウス・オーギュストだ。

アイリス嬢よ。

時が来るまでこの皇宮でゆるりと過ごせ。

ビオレッタ!」


「はい!皇帝陛下」


大公の列から、赤いドレスで黄金の髪をソフトクリームのように巻いてアップしている貫禄ある女性が、一歩進み出た


「ソチとは歳も同じであろう。

案内するように」

「はい。しかと承りました」


そして礼をして列に戻った。

皇帝は興味を失せた表情で右手を挙げると、従者が謁見の終了を告げた。


ホントに呆気無かった。


わたし的にはもっと皇帝にも大歓迎されると思っていたけど、あんなに興味無さそうに冷たい眼差しで追い払われるようにされるなんて……ちょっと傷付いた。

これじゃあ、もし聖女と認められてこの皇宮で暮らす事に成っても、あまり気が休まらないかもしれない。


ちょっとブルーな気持ちで謁見の間を後にする。


デュークは別に当たり前のように退出する。

別に気にもとめていないみたい。


そこへ先程のソフトクリームがやって来る。

後ろにはゾロゾロと同年代の御令嬢方を従えている。

二十人近くもいるだろう。皆高位の貴族の御令嬢だろう。

その雰囲気はフォラリス王国と差程変わらない。


フォラリス王国では子爵以上が上位貴族だったけど、この帝国では伯爵より上の爵位が上位貴族と成るみたい。

つまりはこの御令嬢方は伯爵以上の者に成るのかしら。

ソフトクリームは優雅に歩みを進めると、わたしの前で腰を屈め挨拶をする


「わたくしはアレンチェラ大公家のビオレッタと申します。皇帝陛下より皇宮の御案内を賜りました。

後ろに控えるのはこの帝国の高位の貴族の者達にございます。アイリス様と共に学園で学ぶ者にございます。

個別の挨拶は時間が押しておりますので、後日改めて致しますのてご容赦を……」


そして後ろの御令嬢方はスカートを摘まみ、揃って礼をする。わたしも倣って礼をして


「わたしはアイリスです。ユークラリス伯爵家の者です。デューク殿下にはパートナーに選んで頂きました。

帝国では、はじめての事ばかりなので御指導を御願い致します」


ソフトクリームのオーラは赤々と大きく立ち上っているわ。そして金色の縁取り。情熱と高貴さが殆んどを占めているの。ほかには冷静さの青や好奇心の黄色もあるけど目立たない。殆んど赤と金色のオーラで大きいの。ずっと揺らがない!


それに引き換え、後ろの御令嬢方のオーラはわたしとソフトクリームのやり取りにいちいち反応して揺らいでいる。

そしてわたしが『デューク殿下のパートナー』と言ったところで、一斉にオーラが翳ってわたしに敵意を向けた。

中にはあからさまに睨んでいる人もいる。


まあ何となく気持ちは分かるよ。

同じような年代の女の子がいきなり他国からやって来て、我が物顔でチヤホヤされたらね、そりゃ気分も悪く成るでしょう。


聖女かどうかも証明されていないしね。

庶民にとってわたしはどちらにせよ御貴族様で雲の上の存在で、聖女の肩書きがくっつけば無条件で有り難がるでしょう。けれど彼女達にしてみれば同じ貴族といっても他国の伯爵家だし、侯爵家や公爵家のもっと上位の御令嬢からすれば挨拶するのも嫌でしょうからね。


このソフトクリームの御令嬢……ビオレッタさんも、冷たい目でわたしを見ているの!



もう聖女辞退して、帰ってもよいですか?









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