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精霊王とその眷属


「お嬢様!オレになんか用ですかい?」


こんな調子で日焼けサーファーのようなクラウドがひょっこりと馬車に顔を出すのかと思ったけど、流石にそれは無かった。


護衛騎士の一人が用件を伝えに行って、折り返し返事を持ってきた


『一時間だけ時間をくれ!ただしこれは商取引だ』


ボランティアじゃなく、きっちりと報酬を貰うってことね。商取引にしたのは商人は信用が第一だから、一時間後にはしっかりと満足のいく馬車を用意出来るということ


「任せた!値段は言い値で良い!」


デュークが決断し、報せを持ってきた護衛騎士がまた走って消えた。それにしてもデュークも決断が早い。

報告を聞いて誰に謀るでもなく、即断即決。


わたし達はただ一時間待てば良いけど……。


一向に動き出さない馬車に、群衆がざわざわと騒ぎだした。人の群れは些細な切っ掛けで暴徒に成るかもしれない。例えば気になってこちらへ様子を見に来た人々が兵士や騎士に止められ怪我でもしたら、それを機にここへ押し寄せるかも知れない。


まだわたし達が馬車に閉じ籠って15分位しか経っていないから、何とか平静を保っているかんじ。

これが30分……一時間と長引けばどう転ぶか分からない。


わたしが外へ出て手を振ったりしたら、かえって群衆を呼び込み収拾が付かなくなるだろう。


なんて考え込んでいたら……


ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョと、突然現れたマーリア様がわたしに耳打ちした。


わざわざ耳打ちしなくても声は直接頭に響くし、そもそも貴公子二人にはマーリアの姿は見えない筈。

隣に座ったマーリア様がわざわざわたしの耳元で囁くポーズをしているのは、状況を楽しんでいるに違いない!


っっっっけど


──そんな事も出来るの?


マーリア様の提案にわたしは驚いた。

それならきっと聖女を見に来た群衆も満足出来るに違いない


「あの……聖女様。もしかしてその隣におられる女性は女神マーリア様でしょうか?」


──ほへ?


「アラン殿下!女神様が見えるの?」

「はい。はっきりとは見えませんが、霞が掛かった向こうに人の姿が見える感じでしょうか?

とても美しい女性のシルエットのようなものが見えます。ただ妖精が見える時はオーラが単色ですが、その女性は虹色の神々しい光を放っています。

それは女神マーリアの化身と自ら謳っているアイリス様と同じオーラですので『もしかしたら?』と思いまして……」


「そうです!マーリア様です!わたし仕様で性格的に神々しさが(いささ)か欠けますが、女神様に間違いないです!

それにしてもレイン殿下!妖精も見えるのですか?」


レイン殿下は肯定した。

妖精の姿は見えるけど声は聞こえないらしい。

わざわざ聞いてみないけど、名前も分からないんじゃないかな?


この異世界で魔法が使えるようになるのは妖精の真名(マナ)を知って、その力を行使すること。

妖精の姿が見えるだけでも、声や気配が分かるだけでも魔法は使えない。

たまに名前が分かる人もいるが、妖精の姿が認識出来ない人が殆んどだという。

姿が見えて声が聞こえて真名が分かる。


それが魔法の最低の発動条件だというのね。


因みに今のわたしは初期から大分進化していて、精霊王の分身で眷属の大精霊がわたしに付かず離れず護衛として見守っていてくれるらしいの。


先ずは四大精霊王から


水の精霊王アクアイアの眷属アリア。

火の精霊王サラファーの眷属ファルス。

風の精霊王エアリアルの眷属エアリー。

土の精霊王ノームッドの眷属ゴーム。


そして対となる双子の精霊王


光の精霊王アマテルの眷属ティアラ

闇の精霊王ツクヨミの眷属ヨモツ


何だか【光】とか【闇】なんか聞くと、光が正義で闇が悪のような誤解があるけど

〈光があれば闇あり〉

〈闇あればまた光あり〉

切っても切り離せない対である双子の精霊なんだって。

特にこの現実界に現出するときは二人仲良く並んでいるわ。


わたしに付いてる眷属も普段は光しか見えないの。


水は青。

火は赤。

風は緑。

土は黄。


光は白。

闇は紫のような黒。


そしてわたしが名前を呼ぶと彼らが姿を現してくれるの。

みんな長髪で髪や瞳の色は精霊の光の色と同じね。

絵に描いたような美しい人の姿で現れるわ。

男でも女でもない中性らしいわ。

姿はみんな『六つ子か!』って思うくらいソックリ!


だから色で見分けるしか無いの。


本来はどんな個性的な見た目にも成れるらしいけど、わたしが分かりやすいようにファンタジーの物語の世界で出て来そうな、当たり障りのない精霊の姿をしてくれているらしいわ。

違う見た目なら好みの問題で、危険な時に咄嗟に呼び出す精霊に偏りが出るかもしれないでしょう?


誰か特定の眷属に恋しちゃったりね。

そんな事がないように、考えてくれたのね。


そして有り難いことに、魔法を行使するのが楽になったの。

今までは無数の妖精の中から水の精霊を見つけて、真名を知ってその力を借りていたのね。

でも今は六柱の中から意中の眷属の名前を思うだけで魔法を行使出来るから、楽よね。


それに魔法の力も簡単な魔法から天変地異を起こせる程の特大魔法まで自由に使えるらしいわ!

特大魔法はまだ習っていないから、もう少し落ち着いたらわたしの魂を精霊界へ送って精霊王自ら教えてくれるんですって!


ちなみに六大精霊王の眷属は、アリスが精霊界から連れて来たの。アリスは精霊王と直に繋がっているから、わたしよりも凄まじい魔法が使えるみたい。

津波や火山の噴火、地震や台風もその気になれば起こせるらしいわ。小国なら丸ごと崩壊させることも可能だそうよ。


まるで神ね!


わたしは天変地異といっても、大風や大雨に大波、雷を狙った所に落とすくらいね。

それでも随分とチートだと思うけどさ。


でもこの世界では余程の危機でない限り、アリスは魔法を使わないと聞いたわ。


それで話は変わってレイン殿下の事だけど、わたしに耳打ちしているマーリア様の姿が見えたらしいの。

話の内容が気になったので、思わず声を掛けたみたい。


わたしがそのマーリア様からの提案をデュークとレイン殿下に話すと


「「そんな事もできるのか?」」


ハモって驚いてくれた。

まあ。やることは、みんなが見える分かりやすい簡単な魔法ね。


でもきっと綺麗だって喜んでくれると思うわ!









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