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なんだかすごく気がぬけたわ


アイリスとなったわたしは、しばらくアランが消えたドアをみつめていた。


そしてわたしはリリとララに抱えられて、ようやく立ち上がった。

なんだか少しフラフラする


「ねぇ。リリ。ララ。わたしどれくらい眠っていたの?」

「十日になります」


リリはすかさず答えた


「そんなに?」


驚いてはみたけれど、それは知っていた。

でもこうして確認することは大切だと思う。きっとわたしの世話を二人がずっとしてくれていたと思うから。


感謝しないとね


「リリ。ララ。眠っているわたしをずっとお世話してくれたのでしょう?」

「はいお嬢様」

「はいっち」


「リリ。ララ。こっち来てくれる?」


リリとララはわたしのそばへ行く。

わたしは二人を抱き寄せた


「有り難うリリ。ララ。諦めずにわたしを診てくれて……おかげさまでこうしてまたあなたたちに会えました。

感謝しています」

「お嬢さま……」

「おじょー」


リリとララも涙ぐんでいる。こうして生き返ったことは奇跡のようなものだろう。

ありがと。リリ。ララ。感謝してもしきれません。

そして……。

ちょっと汗だくなので体を拭いて貰うのではなくて、出来ればお風呂に入りたい


「リリ。ララ。お願い。お風呂に入りたいの」


「はい。分かりましたお嬢様。直ぐに準備します」


リリがわたしの着替えを準備している間、ララはわたしのシルクの寝巻きを脱がす。


─あら?


真っ裸。


改めて客観的にリアルな裸体を見るとホント綺麗!

色々描写は省くけれど胸は大きいし、お尻の形も素敵だし非の打ち所がないわ!

15歳には思えない。


そしてララがバスローブを着せてくれる前に、汗だくの体を拭ってくれた。


そこへガヤガヤとなんだか騒がしい気配が近づいて来る。


わたしはハッとして、リリに素早く指示を出す


「施錠!絶対中に入れないで!」


素早くリリが鍵をかける。

間髪いれず、ドアノブがガチャガチャ鳴る


「アイリス!アイリス!父様だ!目覚めたのだろう?

無事か!早くわたしの可愛い顔を見せておくれ」


アイリスの父、ユークラリス伯爵だ。

きっとアランから報告を受けたのだろう


「お嬢様は今、お着替え中でございます。

旦那様とはいえ、殿方の御入室はお控えください」

「わたしは親だ。そんなことは気にしない」



─いや。わたしが気にするよ



しかもホントタイミングって神!

ここで開けたら丸見えだよ!


「一目でいいのだわたし。無事なことを確認したら、安心するのだ。だからここを開けてくれ」


 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ


ドアの向こうから「誰か斧を持ってこい」などと物騒な声がする。


致し方ない。

わたしはドアの側に行き話し掛ける。ララがすばやくバスローブを羽織らせてくれた


「父様!わたしはもう15歳なのよ。成人の儀はまだこれからだけど、わたしもう子供じゃないの。

お着替え見られるの恥ずかしいから、来ないで」


さっきアラン様に際どい濡れ透け晒しちゃったのに

『どの口で言ってんの?』

なんだけど


「な…………」


ドアの向こうで絶句している。

うん、アリスはこんなこと言わないね。

てか、頭ちょっとアレだったから言えないものね。


眠り姫になる前はお着替えだろうが入浴中だろうが、会いたい時に会いに来てた伯爵。

アリスも羞恥心落っことした子なので、平気で裸で抱きついたりしてた。

伯爵の名誉のために言うけれど、けっしてアイリスにヨコシマな気持ちはない。

いつまでも子供の心のアイリスを、危なっかしく心配してるだけだ。


親バカが炸裂してただけ


「ア、アイリス!本当にアイリスか?大丈夫かアイリス?どこかおかしいのか?

もしかして頭でもぶつけたのか?」


もう!頭ぶつけたから、死にかけたのでしょう?

耄碌(もうろく)してる?


「心配しないで父様。わたしは元気よ。

それに今目覚めたばかりでこんな顔、父様にみられたくないの。

大好きな父様には、綺麗なわたしを見てほしいな。

これから体洗って、おしゃれもするから。

お夕食の席で会おうね」


今のわたしはもっとお貴族様の淑女らしく振る舞えるかもしれない。でも子供口調からいきなり言葉使い変わったら、変に思われるかもしれないでしょう?

徐々にってことで………。


「そうか……楽しみにしている」


「それから、湯浴みとかもう覗いちゃダメだよ。父様のことキライになっちゃうよ。ホントだよ」

「ぐっ………分かった。夕食だな」


覗く気まんまん。

なんかあっさりと引き下がると思ったら図星ね!


「父さん行ってしまうぞ!寂しくないのか?

寂しいだろ」


早く行ってよ!寂しいのは父様でしょ?


「お楽しみは最後までとっておくものでしょう?父様」


「分かった……食事。わたしの好きなものにするからな」

「ありがと父様。大好き」


ガヤガヤが遠ざかっていく。


今は伯爵は普段の仕事モードだ。

そんな父様は使用人や部下を引き連れて、仕事の指示を出したり何かと忙しい。

ご令嬢の部屋を覗く輩は父様の部下にはいないけれど、それでも殿方が何人もドアの向こうにいると思うと恥ずかしい。アリスにはなかった羞恥心は、アイリスとなった楓には勿論ある。


今まで当たり前のように裸体を見られていたとしても、もう父様の前では裸になることも見せることもないだろう。アリスもその辺分かってくれているとは思う



─ん?思わないか?



ちゃんと説得しよう。

いくらわたし楓の思考が筒抜けだからと言って、意志疎通はちゃんとしないといけないと思う。

だって人間って

『分かっちゃいるけど止められない』

ことってあるでしょ?

大の大人だってタバコが止められず


──明日から禁煙──


なんて一生治す気もない張り紙を、トイレなんかに貼っつけたりするもんね。

アリスはコントロール不能な面もたくさんありそうだけど、ちゃんと言い聞かせればきっと分かってくれそうな気がするわ。


父様はね。仕事モードの時はすごく真面目で一生懸命。

出来る男感半端ないけれど〈アイリス大好き〉だから、娘の前ではすごくデレデレになるの。

家族と休日庭を散策する時にはね。

使用人に向けるいつもの厳しめの顔が、たちまち柔和になるのよ。


でもさっきのなりふり構わない父様の突撃は、流石に慣れないかも


─はぁ……


何だかすんごく気がぬけたわ。
















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