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聖女で未來の皇后様!


ユークラリス伯爵夫妻は王都郊外にある伯爵邸を出発し途中昼食を取り、間もなくアイリスのいる帝国大使館に到着する。


かれこれ出発してから七時間は経っている。


馬車は三台。

一台は帝国の所有で、もう二台はユークラリス伯爵の馬車だ。

ユークラリス伯爵夫妻用とリリやララを含めた四人の従者用に乗り分けている。


ただ。帝国の騎士と伯爵家の騎士が護衛しているので、結構ものものしい。


そしてシェレイラは窓の外を眺めながら、大きなため息を付いた



「まさかこれ程とは……」



シェレイラの目には人と違う景色が見える。

妖精の姿も視認出来るし、言葉も交わせる。

そしてアリスほどではないにせよ聖女の力の断片を持つシェレイラは、集中すれば魂の光やオーラを感じることも出来る。


そのシェレイラの瞳には光の帯が幾筋もみえる。


その無数にある光の帯はある一つの方向を示したいた。

それは馬車が走る方向へと伸びている。


つまりは、目的地と同じということ。


『聖女の力に目覚めたのは本当のようね……』


アイリスのいる大使館に近付くにつれ光の帯は数を増し集束していく。

その美しくも恐ろしい光景を感嘆の眼差しで見上げるシェレイラを尻目に、ロベルトは腕を組んでひっきりなしに貧乏ゆすりをしている


─全くこの男は……


これさえなければ完璧な良い男であるが、これがあるからこそ可愛気があるともいえる。

どちらにせよ今はロベルトの貧乏ゆすりなど見たくはないので、視線は見慣れぬ光の帯が集う空を見詰めていた。




☆☆☆




わたしアイリスは落ち着かない。


もう少ししたら両親がこの大使館にやって来る。

殿下から説明された通り、娘であるわたしの安否と婚約の詳細をわたしから聞きたいのだろう。


─でも何だろう?


キラキラが収まった感じがする


『アイリス。そのキラキラはON/OFFの切り替えが出来るわよ』


─え?このキラキラ消せるの?


何時ものように神出鬼没な女神様に、念話を試みた。

プラチナブロンドの髪……といってもオーラで虹色に見える女神マーリアが微笑んでいる


『消せるわよ。あまりキラキラが過ぎると日常生活に支障が出るでしょう?

でも完全に消せる訳では無いわ。

超薄くなるだけ。

やり方は簡単!ただ念じれば良いだけ』


─念じればいいって……そう簡単には……


『……出来たわ!!』


キラキラはしているけど、チカチカしてない。

何て言うのかしら?

油絵の具の世界が淡い水彩画に変化した感じかしら?

完全に消えた訳では無いけど、これなら日常生活に支障がない


『アイリス。以前のように元通りになれないのはね、ちゃんと理由があるの。

聖女には真実を見抜く目があるの。

見抜くと言っても未来視や過去視でビジョンが視えるのではなくて、オーラの色で判断するの。

わたしを良く見てみて?』


マーリアの方を見れば何時ものように体から炎ように虹色の光に混じって、金や銀色のオーラが見える


─変わんないけど……


するとマーリアのオーラが赤く染まる


『この色が情熱を現すの。

でも同じ赤でも怒りとなると……』


赤に赤黒いオーラが交じる。

濁っている


『このようにオーラの色で相手の精神状態が判別出来るのよ。そして純粋な思いは綺麗な色だけど、邪な事を考えると濁ってくるわ。

例えば誰かが貴方を甘い言葉で誘導するじゃない?

でも害意や悪意があればオーラが濁るから、直ぐに解るの。

黒に近く成る程、良くない兆候よ。

嘘なんかは直ぐにバレるわ』


─その黒い濁りで判断するのね


『それだけじゃないわ。人の悪意は物にも宿るの。

例えば男が誰かを殺そうとするじゃない?

本人も汚い黒々とした色がオーラに交じるけど、殺しに使う剣なんかも黒々とするの。

こんな感じ』


マーリアの手に剣が出現し、その剣に黒いモヤがかかる。

スゴく嫌な感じがする


『毒なんかもこれで分かるわ。

綺麗な紫色は慈悲のオーラだけど、毒のオーラは濁った紫にこんな黒いモヤが被るのよ』


殺意や悪意は黒いモヤで現されるみたい。

毒殺しようすれば直ぐに分かるってことね


『アイリス。聞いて?

聖女は人より遥かに優れた能力があるけど、万能ではないの。

例えば毒を見分けてもそれを無視して体内に入れれば、最悪死ぬわよね?

暗殺者が誰かを殺そうと黒々とした殺意を纏っていても、貴方が見て見ぬふりすれば大切な誰かが殺されるかも知れないの。

どう行動するのかは貴方次第なの……』


つまりは毒だと分かっていてるのに、飲んじゃったりしたらダメだしね。

暗殺者と分かっているのに野放しにすれば、自分や誰かが殺されるかも知れないってことよ!


『それとね。

暗殺者を説得しようなんて馬鹿な事を考えてはダメよ。

世の中そんなに甘くは無いわ。

直ぐに捕まえるか無力化する方法を行使するの。

説得したいならその後いくらでもすれば良いでしょう?』


─いや!わたし戦闘力皆無だよ!


『無いなら、手段を講じるの。

王族や要人には護衛がいるでしょう?

騎士や兵士なんかね。

信頼出来る者を側に置いて彼らの力を借りるの』


つまりは他力本願ってことね!

わたしの理想のおんぶに抱っこ!


『ちょっと違うけど、ニュアンスは伝わるわ。

要するに全て自分で物事を解決しようとしないこと。

多くの信頼出来る味方を作り、彼らに助けて貰うの。

幸い聖女はオーラで判別出来るから、それだけでもスゴいアドバンテージでしょう?

古今一番暗殺されるのは、信頼する味方や護衛に裏切られる事。

例えば護衛の兵士の子供が拐われて

『暗殺すれば助けてやる』とかで、やむを得ず味方が敵に成る事もあるの。

それに買収されたりね。

でも聖女はオーラで見分けられるから、そんな時は放置しないで何らかの行動を起こすのよ。

くれぐれも何もしないで物事が解決するなんて思わないでね』


材料が渡されるけど、どう料理するかはわたし次第ってことね!


っっっっていうか!


何だか物騒な話になってるよ!


わざわざこんな話をわたしにしたってことは……



『アイリス。貴方!皇太子妃になるのでしょう?

聖女で未來の皇后様!

暗殺の格好の標的だわ!』



つまりは自分の身は味方に助けて貰って

『自分で守れ』ってことね!


わたし!聖女の基本方針決めました!



─超!おんぶに抱っこ精神よ!
















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