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紹実さんの母親がそうしているように、
それより遥か以前から魔女達はその時代に適合した職業に就き
一般社会においての地位も確立していた。
これは僕だけの特性ではない。
どうやら「魔女」は知的好奇心に溢れている。
幼い頃から「他者とは異なる教育」を別に受け続け
魔女の魔法に触れて「何故」「どうして」が湧きあがるのも無理はない。
友維が海外で臆せずに武勇伝を残したのも
きっとその魔女の特性に寄るところなのだろう
紹実さんも、その魔女の知識を使って
「悩める若者」を救おうと高校の養護教諭にもなった。
とは言うが、多分それ以前から橘さんや他の継ぐ者達に触れ
この街の若者の心理状態を「知りたい」だけだったようにも思う。
だからこそ何の躊躇もなく彼女達の卒業と同時に今の仕事に就いた。
同時に、人として何か欠けているんじゃなかろうか。
などと失礼な事を漏れなく魔女に対して抱いてしまう。
待て待て。僕は魔女ではない。
「お金はお前が管理しろ。」
どうして?
「お前んとこの一家、いやまあ私も含めてだけど。」
「おまえが一番お金にシッカリしてるから。」
「困ったら理緒に頼む。的な窓口になってやれ。」
紹実さんのこの一言を簡単に受け止めていた。
やがてこの口座は父の遺した額だけではなく、
母の受け取った報酬や、挙句縁さん夫妻までが利用する事となり
残高が「ちょっと洒落にならん」くらいまで膨れ上がり
これを元に財団やら基金の立ち上げで奔走する事になるが物語とは何の関係もない。
帰る早々友維に
「女にだらしない」
何を言い出す。
「年上か?年上が好みか?」
何の話だ。
「絢姉ちゃんに姫姉様に今度は実の姉までタラシこんで。」
タラシ?何?
「本っ」
「当に手当たり次第だな。」
ワケのワカラン事言うな。何だったら週末一緒に出掛けるか?
「なっ今度は妹にまでっ」
「今週末は止めとけ。」
紹実さんがそこそこ神妙な顔をして兄妹のデートを止めた。
「明日アイツら帰ってくるから。行くなら明日行っとけ。」
「私は明日も学校だよっ。」
「休めよ。」
元教師が勧める事だろうか。
「保護者がイイってんだからイイよ。テストとかじゃないんだろ?」
「まあうん。普通の日だけど。」
「じゃあ明日の朝学校に電話してやる。風邪でいいよな。」
紹実さんが、学校休ませてまでも友維と出掛けさせようとするのは
「出掛ける」事が目的ではなく、
僕を1人にさせない事こそが目的なのだろう。
きっと、心配でたまらない。
「ちょっとでも体調悪いような兆しがあったらすぐに帰れよ。」
ほらやっぱり。
指輪、身に付けましょうか。
これ以上紹実さんに
「いや、いい。私も確認したいから。」
「今更やめて何も掴めませんでしたじゃそれこそ絢と橘に申し訳ないからな。」
「指輪って何の事だよ。」
友維には改めて全て説明した。
同時に、魔女達に冷たく接した事も理解してくれた。
「私にくらいは言えよっ。」
友維が一番過敏に反応しそうだからさぁ。
「そりゃするだろ。」
くしゃみ1つで救急車呼ばれでもしたらたまらん。
「うーっ」と唸りながら睨み付けていたのだが
友維はこの時核心に気付いていた。
事実を知っていた。
だからこそ僕の身体をとても気遣った。
僕がそれを知るのはしばらく先の事だ。
4日目
結局紹実んさが学校に電話をするのを忘れ、
すっかり休むつもりだった友維は支度もしていない。
仕方なく僕が学校に電話する事になった。
僕も病欠で休んでいる事になっているんだけどな。
「ちょっと渋い声出して父親のフリでもしてくれ。」
何気ない一言。
一瞬、2人で父の顔を思い出そうと試みるが無駄だった。
僕達には父親の写真の持ち合わせが無い。
2人で少し遅めの朝食。駅まで歩いてバスに乗り
4日連続のショッピングモール。
しかもまた別の女性を引き連れて。
「姉ちゃん達がどのショップでどんなの買ったか教えてよ。」
被らないようにするのか。
「絢姉ちゃんのは参考にならんな。」
サイズ探すの大変だってよ。
「何か贅沢な悩みだな。少しはアドバイスとかしたん?」
アドバイスってほどの事はしてないよ。
「何だよ兄ちゃんの趣味押し付けちゃえばいいのに。勿体ない。」
どちらがいいかと聞かれた時は答えもした。
「やるじゃん。でも兄ちゃんに女子のファッションなんて判るん?」
僕が普段誰の買い物に付き合ってるか忘れてるな?
「ああそうか。あの姉ちゃん達煩そうだもんなぁ。」
実際、着る物の好みは揃って細かい。
何度「理緒(君)はどっちがいい?」と聞かれたか。
「どっちも似合いますよ。」と言ったらドツかれる。
「そーゆー時は組み合わせを聞くの。」
「シャツを選んでいたら下を聞くの。スカートなのかパンツなのか。」
「色は?生地は?その上に何か羽織るのか。下に何か着るのかとか全部。」
「だからってTシャツ1枚買うのに全部聞き出さなくてもいいのよ。」
「それは好みでイイから。」
「単純に色とデザインだけで決める場合があるから。」
「今持っていない方を勧めるのもテだな。」
「少しセンス磨いてください。」
「そうね。理緒君だってイヤでしょ。私服のダサイ女子引き連れて歩くの。」




