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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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橘さんは、僕が「神社に来る度に頭痛に悩まされたら可哀想だから」そうするのであって

彼女からすればそれを知るには僕の正体とやらを暴く必要がある。

僕が何でもない普通の人の子であれば、それは指輪の効力であると改めて認識できる。

それだけの事。

そう、ですよね。

僕は勘違いをしていた。

これはファンタジー小説では無い。

身近に魔女だとか猫娘だとか吸血鬼だとか神巫だとか存在しても

僕はただの人の子。一体何に期待していたんだ?

目を瞑らされたので、橘親子が何をしたのか判らない。

頭に恐らく手が乗った。

温かい。

とても穏やかな気分になり意識が遠くなる。が、眠ったりはしなかった。

僕はここにいるのだが何処にいるのか判らないような。

意識が身体から離れフワフワしている。

だが突然、ブレーカーが落ちたかのように「バチン」と音が聞こえ目が覚める。

目の前に橘さんがとても不安そうにこちらを見ている。

何かを言っているが声が遠い。

「・・・きて・・・・く・・・・あ・・・」

「理緒くんっ」

結構強く頬を叩かれて意識がはっきりとした。

ちょ、痛いですよ。

「ああごめんなさい。良かった。」

良かった?

橘さんが僕の正体を見極めるその前に、僕は意識を失い

「何処かに連れて行かれようとしていた。」

そして結局

「理緒君は人の子。それは間違いないわ。」

と言われた。

残念なような。ホッとしたような。

「ただ。」

お、何か秘密があるのか。僕は特別な存在なのか。

「これから神社を訪れる時は必ず指輪をしなさい。」

「頭痛や耳鳴りは私が抑えるから。約束して。あの指輪をしなさい。」

橘さんにも判らないそうだ。

人の子である事は判った。

だがそれ以上掴めない。僕の意識を見ようとしたのだが

橘さん曰く「道に迷った」そうで「こんな事は初めて」だった。

そして「迷った」瞬間、僕の意識がとても遠くに逃げていた。

慌てて呼び寄せたのはその為。

仮説は立てられる。がそれは結論ではなく推測で、しかも「対処方法」は無い。

「身体も指輪の影響を受けている。」

指輪を外した今も、その指輪の影響を受け続けている。

指輪の無い反動なのだろう。と言うのだがそれがどのような作用なのかが判らない。

だから「対処できる」指輪を身に付けろと。

立ち上がったがフラフラとした。

身体が軽すぎる。

橘家でお茶をご馳走になりながら考えられる限りの可能性を考慮しようとしたのだが

橘さんはそれを勧めなかった。

「考え過ぎはよくないわ。」

「理緒君の正体が何であれ、今ある貴方を否定する理由にはならないから。」

橘さんは、僕が「どの方向を見ているのか」正確に把握していた。

「1人で何とかしようなんて思わないで。私も力になるから。」

台詞こそ違え、小室さんと同じ事を言っている。

昨日小室さんにも叱られました。

「じゃあ余計なお世話だったかな?」

いえ。ありがとうごさいます。

昨日小室さんと約束したように、橘さんとも同じ約束をした。

約束と言うより、僕の一方的な誓約とか宣誓と言っていいだろう。

あなたにも嘘は吐きません。

1人身勝手に行動しないと約束した。

ただ今日はっきり判ったんですけど。

「うん?」

えーっと、そのー何というか、好奇心が勝ってしまう事はあると思います。

「そうね。それは仕方ないわ。それは身勝手とは違うから。」

橘さんは笑ってくれた。

「許可します。」

午後、橘さんとデート。

えっと、大丈夫なんですか?

「大丈夫って?」

その、以前ちょっと体調の心配していたかと。

「大丈夫。あれよ?絢ちゃんの相手が大変なだけ。」

そりゃまあ大変だろうけど。

どうしてだろう。なんだかとても「儚い」ような気がしてならない。

乱暴な言い方だが、身体の弱い僕だからこそ判るような。

午後から会合がある橘さんの父親に車で送られ

「帰りはバスにするから。」

と2日連続でショッピングモール。

「え?昨日絢ちゃんと来たの?言ってよ。」

橘さんが冬物見たいって言うから。それに何度来たって構わないですよ。

お昼をご馳走して、昨日よりもゆっくり歩いてデートを堪能した。

やはりすれ違う人が彼女に目を向ける。

かわいいもんなぁ。

帰宅すると友維に「お前はまったく。」と呆れられる。

「いい御身分だな。」

「学校サボってお姫様とデートとか何様だよ。」

「調子こきやがって。一回締めないとダメか?」

長い海外生活の筈だが誰に日本語を教わったんだ?

紹実さんも帰る早々

「おおう今度は橘か。手当たり次第だな。」

引き合わせた張本人が何をぬかすか。

結果を気にしないって事は橘さんから何か聞いたのかな。

「いや?お前が何食わぬ顔してここにいるから何でも無いって勝手に思ってるだけだけど?」

人の子である確証は得たけどそれ以上は判らないと言われた。

「え?どゆこと?」

どっちにしても指輪の影響だろうって事かと。

「ふーん。で、どうなんだ体調。」

え?ああはい。まだ何も。特に何もしてませんし。

「充分してると思うけどな。」


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