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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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指輪を外して2日目。

昨日の小室さんとのデートで少々疲れてはいるが

他に症状は無い。

神社でのあの奇妙な感覚も、あれ以来起きていない。

耳鳴りや頭痛にしても、やはりあの神社は僕には「強い」のかもしれない。

朝、紹実さんの出勤前に彼女のスマホが鳴る。

「理緒。結から。橘の方な。お前の番号教えておけよ。」

橘さん?

代わると今日暇なら家に遊びに来いと。

紹実さんがまた話を通してくれたんだろうなぁ。

スマホを返しながら御礼を伝えると

「やめろっ。」

止めろって何だ。

「ちょっと友維。何とかしろ。」

「ゴメン。今無理。」


橘結。彼女が何とも不思議な人なのは承知していたのだが

「今日ってどうして暇なの?この時期休みなんてあったっけ?」

紹実さんから何も聞かされていないのか。

昨日から修学旅行で。

「何で行かないのよっ。」

と、また怒られた。

友達いなくて班が作れないんです。

「たくさんいるじゃない。あ、男子の友達いないのね。」

「それで理緒君の相談てその事?」

相談?

「紹実ちゃんが理緒君の相談に乗ってくれって。」

結構肝心な事言わないよなあの人。

僕は指輪の事と、身体の事を最初から説明した。

「それで昨日から外してるのね?」

はい。

「昨日紹実ちゃん以外に誰かに会った?」

紹実さんと友維と、小室さんです。

「絢ちゃん?」

紹実さんが気を使ってくれて。

「絢ちゃんに何かされなかった?」

はい?

「紹実ちゃんとか友維ちゃんに何かされなかった?」

だから何かって何です?

「何も無ければいいの。」

何だか要領を得ないな。

ただ「隠している」のでは無いのは判る。ただ言いたく無いとか言い辛いとか。

「今日は体調どう?」

今のところは何も。

「神社の前通って来た?」

いえ。ちょっと大変だったけど回り道して来ました。

「そう。」

橘さんは少し考えて立ち上がり、「ちょっと待っててね。」と席を外した。

5分も経っていなかった。

戻って来た橘さんは父親を連れて

「今から神社に行きましょう。」


何かが起こるかも知れない不安と、何だろう少しだけ何かを期待した。

橘さんは巫女装束に、父親は狩衣(烏帽子も酌もないが)。

境内に入っても耳鳴りはしない。

昨日感じた吸い込まれるような感覚も無かった。

本殿の中は何も無かった。

「そうね。普通は神殿に神籬があって神様を呼ぶのだけど。」

この神社ではそれらは全て拝殿に置かれている。

「昔イロイロあってね、ここに置くと危ないから移したの。」

イロイロって何だ。危ないって何だ。まさかまた姉が関わっているとか。

「ここまで連れてきて今更だと思うけど。」

橘さんは、僕なら断らないだろうと思ったからだと前置きして説明を始めた。

「理緒君の正体を少しだけ見せてもらうわ。」

プライバシーが暴かれる。知られたくない過去を覗かれる。

「その可能性は否定できない。」

ただ過去を見るだけではない。

橘さんが言った「正体」と言うのはもっと別の事。

全身に鳥肌が立った。

可能性の問題だ。

僕の正体。

「今のままではいられなくなるかもしれない。」

「あなたは御厨理緒である事を全て否定してしまうかもしれない。」

とんでもない脅迫だ。

だけどもうダメだ。不安より期待が勝っている。

僕が魔法を科学的に解析しようとするのは全て好奇心から。

「神の子」の行為を「知りたい」それだけだ。

僕が何者だろうと、何者になろうと、もはや関係無い。

「忘れないでね。理緒君は御厨理緒なのよ。」

「たとえその正体が何であれ、貴方が今まで生きて感じた事は全て本当の事。」

つまりそれが真実か否か。ですよね。大丈夫ですよ。覚悟はできてます。

僕は少しだけ笑っていた。

胸が高鳴る。とはこの事なのだろう。

人の力を越えた、魔法とも異なる「何か」に僕は触れられる。

「ちょっと待って。」

「そんなに期待しないで。」

はい?

「たくさん脅したけど、あくまでも最悪の場合だから。」

そうなんですか?

「当たり前でしょ。理緒君に何かあったらどうするのよ。」

どうって。どうもなりませんよ。

「何言ってるのよ。理緒君覚悟の方向が少しおかしいわよ。」

何ですその覚悟の方向って。

「君が君の正体を知りたい理由だ。」

橘さんのお父さんが初めて口を開いた。

「君は君とこの神社との関わりを確認したいのだろう?」

はい。

「そのために結は君の正体を確認する。だが君がそれを知る必要も理由も無い。」

自分の事なのに?

自分が何者なのか知りたいと思うのは当然の行為じゃないのか?


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