表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Witch  作者: かなみち のに
91/141

91

僕のこの浅はかな選択は到底魔女達に受け入れられる提案ではない。

それでも僕が頑なに修学旅行を拒否したので

彼女達はとうとう怒って工房から出て行ってしまった。

以来ずっとこの件に関しては許してもらっていない。

どうして意地を張ってまで頑なに拒んだのか。

「彼女達に自由を」

それは建前。

僕は自分の予定を魔女達にはハッキリ伝えなかった。

魔女達は出発が近付くといくつか条件を出して、

僕が修学旅行に行かない事を許そうとしてくれた。

「工房から出るな」「出掛ける時は紹実さんと一緒」等、

僕を心配してくれているのは痛いほど理解した。

だがそんな約束はできないよと全て断った。

これが決定的だった。

数日前からは口も聞いてくれなくなった。

委員長も、桃さんも、そしてグレタまでも僕が修学旅行に行かない事に怒った。

こうなると通学は本当にキツイ。

その義務から彼女達は僕の傍を離れられない。

嫌いな奴を身体を張って守らなければならない。

当日、僕の事なんか忘れて楽しんで来て。と送り出しても

僕の事はまるで無視して紹実さんと友維にだけお土産を約束して出発した。

「本当にこれで良かったん?」

友維も心配している。妹にも悪い事をした。

終わって帰ってくれば何でもなくなってるよ。

無論そんな筈はない。そんな事承知している。

一時でも友維が安心してくれるならそれでいい。

これでやっと、ずっと前から試したかった事が出来る。

僕は「指輪を外して、どれくらいの期間生きていられるのか」を知りたかった。

正確には「どれくらいで動けなくなってしまうか。」

僕はこの日、いつかそうしたように、

指輪を小さな箱に入れ、机の奥に押し込んだ。

紹実さんにだけは僕のしようとしている事を全て話した。

「またお前は。」と呆れられた。無理も無い。

だが最悪の事態を想定するならこれくらいやらないと。

紹実さんは判ってくれた。判ってくれたうえで叱ってくれた。

魔女達の目を僕から逸らす目的は、

「指輪の効力」を試す事にある。

通常の生活をするのなら、何日目から変化が現れるのか。

それはどんな症状なのか。いつまで続き、いつ動けなくなってしまうのか。

僕の記憶では、指輪を24時間以上外していた事が無い。

と言っても2泊3日でどうにかなってしまうような身体でも無いだろう。

高校生になって、その上小室道場で僅かながらでも鍛え続け

人並み程度には体力があるだろうと思う。

この実験を続けるには

魔女達が帰宅して、また日常に戻った時に

僕にあまり関心を示さないようにする必要があった。

体調の変化を気取られてはならない。

紹実さんから「体調の変化があったらすぐ連絡すること」を約束させられた。

たった3日。

工房か母屋にいるだけ。携帯もある。

心配ないですよ。

紹実さんを仕事に送り出し、さて今日は何をして過ごそう。

と、何処かで見ていたのか携帯が震える。小室さんからだ。

「紹実ちゃんから聞いたよ。暇なら道場に来い。」

見ていたって言うか、紹実さんが連絡しただけか。

大学はいいんですか?

「今日は受ける講義が無くてな。殆ど単位は取り終わったから。」

小室道場に到着すると早々に修学旅行に行かない事を当然のように咎められた。

「桃が怒ってたぞ。」

そうですか。

「理緒、お前桃の親友なんだよな。」

僕は目を逸らした。

「あいつ喜んでたぞ。友達どころか親友できたんだって。」

「どうなんだ理緒。お前桃の親友なんだよな。」

そう言えば、喜んでくれると思ったから。

小室さんが腕を振りかぶったのが見えた。目を閉じ、歯を食いしばった。

だが殴られる代わりに、胸倉を掴まれ持ち上げられた。

「お前またバカな事考えてるな?」

この人はどうして判るのだろう。

「お前と同じことをした奴を知っている」と言った。

皆を突き放して、1人で何とかしようと勝手に思いこんで勝手に行動する。

誰もそんな事は望んでいないのに、そうする事が皆の為だと勝手に決め付ける。

他にどうしろって言うんですか。

僕だって、皆と仲良くしたい。でもそうすればするほど、彼女達を傷付けるかもしれない。

死にたくだってない。でも指輪に頼る以上こんな事はいつだって起こりうる。

自分で何とかしな

「思い上がるなよ。」

ゾクっとした。

「経緯はどうあれ、お前はたくさんの人を巻き込んでいるんだ。」

「自分1人でどうにかしようなんて考える事が思い上がりだ。」

最悪の事態を想定して。

こんなバカな言い訳に紹実さんが納得するはずは無かったんだ。

彼女は僕のこの行為がただの「準備」だと気付いていた。

それで態々小室さんに頼んで

「本当にただの実験にしとけ。」

はい?

「この後何処にも行かなければいいんだ。」

「そうすれば本当にただ試したかったてだけで終わるだろ?」

小室さんは真剣に言ってくれた。だからこそ可笑しかった。

それでついつい笑ってしまった。

「何がおか」

約束します。もう二度と1人で旅に出るなんて考えません。

素敵な人だ。

僕がもっと、この人を守れるくらい強かったらきっとこの人に恋をしただろう。

「本当だな?」

はい。どんな事があっても小室さんだけには嘘は吐きません。約束します。

こんなにも真っ直ぐな人を騙すなんて出来ない。

こんなにも真っ直ぐに人の目を見る人を裏切らない。

「私だけって。他の連中にも嘘吐いたりするなよ。」

いやまあ嘘は吐いて無いんですけどね。黙っているだけで。

「一緒だろっ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ