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屋台や舞台、諸々の片付けをしようとしていたのだが
尽く「御嬢さん達を送ってやりな。」と言われた。
御礼だけでもと回ろうとしたのだがそれすら
「今度の会合でいいから。暗くなる前に送ってやれ。」と叱られる。
友維の友人2人を送り届け、カナさんとリナさん。
(桃さんと妹とその友人は杏さんが責任を持って送り届けると言ってくれた)
最後にグレタを送り届ける頃にはすっかり暗くなってしまった。
うっかりお風呂で眠りそうなくらい疲れていた。
皆も疲れただろう。明日も当たり前のように学校なのに有難い。
工房でいつものように珈琲を啜りながら
本当に助かったよ。あがとう。
「楽しかったよ。」
「うん。楽しかったから。」
「葵ちゃんも蓮ちゃんも何でそんな言い方するんですか。貸しにしちゃえばいいじゃないですか。」
「そうだな。貸にしとくか。」
「そうね。それもいいわね。」
「いつか返してもらいますからね。」
皆は早々に部屋に戻り、もう何もしないで眠ろうとベッドに倒れ込んだ。
事故なく終えた。
これは身体の疲れって言うより気疲れだろうな。
ドアが開く。
「兄ちゃんもう寝る?」
友維だ。どうした?起き上がって迎え入れる。
「いやまあたまには一緒に寝ようかと。」
横になっても何だか妙にニヤニヤしていた。
何だか気味わるいぞ。
「何だよ。ちょっと見直してたんだぞ。」
なんでまた。
「兄ちゃんモテモテだからさ。」
モテモテ?この子は何を言ってる。
「いつもの魔女っ娘達も。桃ちゃんも、グレタも、佳純ちゃんも。」
「私が連れて来た2人も、佳純ちゃんと舞ってた巫女ちゃん達も。」
「あとほら桃ちゃんの姉ちゃん達も。杏さんに梢さんに椿さん。」
「皆皆素敵な人だよなー。」
「それ皆兄ちゃんが呼んだんだろ?」
呼んだって言うか、僕が困ってるの見兼ねて来てくれたんだよ。
僕が何かを言う前に皆が動いてくれた。
皆自分が「今何をすべきか」なのをちゃんと理解できる人達なんだ。
皆凄いよ。尊敬する。
友維の事も、とても誇らしかった。
僕が紹介しなくちゃならないのに、アッと言う間に皆に馴染んで、
僕の知り合い同士を仲良くさせてくれた。
嬉しかったよ。それに羨ましかった。恰好良くて、皆が友維に、友維の・・・
気付くと朝になっていた。
隣で丸まっている友維の頭を撫でると彼女も目覚めた。
その週末。橘家で祭りの事後報告会が行われた。
当然と言うか僕も呼ばれる。
会計的に赤字になった屋台とかあれば個人的に負担する覚悟もあった
(何と言っても僕には億単位の貯金がある)
先ずは二部構成の是非についての報告と反省。
その中僕は意見を求められた。
先ず皆さんのお蔭で運営そのものは素晴らしかったと伝え、
ただ小さな巫女さん達には負担になるのは否めないと思ったと言った。
すると橘さんが佳純ちゃんに直接聞いてくれた。
「負担?いやいや1日5回も6回も練習で舞ってたんだから2回くらい別に。」
と言ってくれた。
「それに皆喜んでくれたから。」
と笑ってくれた。
いい子だなぁ。
次いでそれぞれの露店での会計報告(僕も居ていいのか?)。
覚悟したものの、予想以上の売り上げだったと口を揃えて言った。
前年比較で平均して1.2倍。二部構成にした割にと思うだろうが
一部では料金設定を下げて商品を提供している。
(実際には価格を安く提供しているのではなく、各施設に割引券を配っただけ)
それを踏まえての二部構成では人件費や光熱費は嵩んだはずだ。
「割引分については市の福祉助成金を利用している。」
「そこは商売人として損をするような事はしない。」と言った
さらに、「露店を出店しているのは全てこの街で商店なり商売をしている人達だ。」
「地域社会への貢献と謳っているがはっきり言って宣伝だ。」
たかだかボランティアの高校生にそこまでぶっちゃけていいものだろうか。
それでも、「平均」と言ったのは店によってバラ付があったから。
司会で祭りの世話役でもある射的場では売上は平年並み。
二部構成での恩恵と言うか、一部では殆どお客が入らなかったようだ。
園児にも車椅子の人にも台が高かったのが原因らしい。
「次回は通常台と低い台を用意する。」と言ったが
一部の分の人件費(手間)を考えれば赤字になったかもしれない。
だがそれは「各露店の営業方法の問題」でその辺りは別の機会に話し合いの席が設けられるらしい。
「席ってもこの後の飲み会で皆で意見交換するだけだけどな。」
だから何でこの人はそこまでぶっちゃけるかな。
「理緒の事が気に入ったんじゃない?」
と会議での事を話すと紹実さんは笑った。
「跡取りにしたがってたりして。」
「男子のくせに魔女で挙句射的場の経営者。」
もう何者なのか全く判らなくなるな。
「あー兄ちゃんには客商売向かないんじゃないかなー。」
「それもそうだな。」
友維は何を根拠にそんな事言うか。葵さんも納得するのはどうしてだ。
まあ確かに殆ど人と話した事なんて無かったが。
「そんな事より理緒君気付いてました?」
何を?
「友維ちゃんがあなたの事を兄ちゃんて呼んでますよ。」
「兄を兄と呼んで何が悪いかっ。」
あれ?前から結構兄ちゃん呼ばわりしてたよね。
「それって多分二人きりの時ですね。全く兄妹揃ってイヤラシイ。」
「イヤラシイって何だっ。」




