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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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グレタは橘さんに「お祭り楽しんでね。」と送り出される。

僕は佳純ちゃんにお礼を伝えようと探した。

「汗流しにうちに行ってるから私から伝えておくわよ。」

と言ってくれた。

「理緒君。」

はい?

「ありがとう。」

え?な、何でしょう。

「理緒君が招待してくれたんでしょ?」

グレタがお世話になっているあの女性。

彼女は事故に合い、自らの下半身の自由とそして娘を失い信仰を捨てた。

橘さんはそれを彼女の旦那さんから聞き心を痛めていた。

自分には何も出来ない。「神の子」だの「神巫」だの言われても

お嬢さんを生き返らせる事なんて出来ない。

彼女を歩けるようにする事なんて出来ない。

僕はグレタに頼まれただけで。

余計な事をしたのかも知れない。と思った。

グレタは彼女に何かお礼がしたいと僕に相談した。

橘さんに会いたい事も聞いていた。

二つを同時に叶えられる機会だと小賢しく考えただけだ。

彼女の気持ちなんて、僕は全く考えなかった。

もしかしたら余計な事をしたかも知れません。と言うと

「少なくとも私はまた理緒君に救われたから。」

やっぱり不思議な人だ。

それはグレタも言っていた。

祭りの最中友維と合流し

「どうだった。お姫様に会って来た?」

「会ったっ。何あの人。何なの?」

かなり興奮していたと言った。

奥さんも「素敵な人でしょ。あなたもちょっと普通の人とは違うようだけど。」

グレタは自分が魔女だとは言っていなかった。

「私、違うの判りますか?」

「いつだったか。ねえあなた。狼男の子が来て。」

と旦那さんと話した。

アメリカからの留学生で「自分は狼男デース。」と自己紹介した男子がいたそうだ。

それに何より

「この街にはそれはそれは騒がしい魔女がいたから。」

魔女には免疫があるようだ。

ボランティアと言っても、僕にはする事が無かった。

お年寄りにも小さな園児達にも、僕以外の皆がとてもよく働いてくれて

全く出番が無かった。

着替えて来た佳純ちゃん達を見付けたので

お疲れ様。と声を掛けた。

皆恰好良かったよ。これみんなで使って。

と500円の商品券を渡した。

「でも何もお手伝いしていないよ。」

佳純ちゃんたちが楽しくしてくれると今日来てくれた皆も喜んでくれると思うんだ。

これはそのためのものだよ。

佳純ちゃんは少し考えて受け取ってくれた。

お釣りでないからね。と舞ってくれた皆に配った。

「ありがとうごさいます。」と言われたが

こちらこそ。皆ありがとう。楽しんできて。

皆走って屋台に向かった。

万事が上手く行った。僕が子供だから、大人の苦労が見えないだけなのは承知している。

僕の知らない場所で、きっとたくさんの大変な思いをしている大人達がいる筈だ。

僕なんかの一言でたくさんの人に迷惑を掛けただろう。

来た時と同じように、マイクロバスに乗ってそれぞれの施設に戻るお年寄り達を見送りながら

本当に喜んでくたれだろうかと考えていた。

グレタがお世話になっている夫婦も駐車場に向かってきた。

「トト。探したんだよ。」

グレタが駆け寄って僕の手を取り、彼女の元に連れて行った。

グレタが僕の手をそのまま彼女の前に出すと、彼女はグレタから僕の手を取り、

「あなたが招待してくれたのね。」

あ、いやその。はい。

「ありがとう。本当にありがとう。」

いえ、僕はグレタのお手伝いをしただけですから。御礼なら彼女に。

「そうね。判ったわ。後でたくさん御礼しておく。でも貴方にもお礼を言いたかったの。ありがとう。」

喜んでいただけたなら僕も嬉しいです。ありがとうございます。

夕方、1人で祭りに現れたグレタは「実は。」と言ってその日の事を教えてくれた。

「最初はイヤだって言ってたの。でも私と旦那さんがどうしてもってお願いして。」

「私の友達が是非連れてきてくれって。て言っちゃったけど。ごめんね。」

そんな。謝るのは僕の方だよ。ごめん。

「どうして。トトは私のお願い聞いてくれただけでしょ。」

でも彼女の想いなんて全く考えもしなかった。

「そんなの判るわけないじゃん。それにね、本当に喜んでたんだよ。」

「家に帰ってからも、ずっと楽しかったありがとね。て言ってくれたんだから。」

それなら良かった。本当に良かった。

「今度はトトと楽しんで来なさいって言われたんだ。」

グレタは僕の腕を取り駆け出す。一緒にお祭りを楽しんだ。

僕達は皆で佳純ちゃん達の御神楽を見て、それから屋台に向かった。

昼間も賑やかだったがやはり少し違う。

何だろう。音の周波数が違うのだろうか。賑やかさの種類が異なる。

友維はグレタと友人を紹介し合い(再会時に付いて来てもらっていたのに紹介していなかったらしい)

再び着替えて合流した佳純ちゃんと巫女さん達にも紹介する。

「この子があのお姫様の妹様だ。」

「うん。判る。お姫様だ。」

少し異様な光景だ。僕はもう慣れたからあまり気にはならなくなったが

通り掛かる誰もが皆必ず視線を止める。

グレタの可憐さと言うか美人なのは度を超えている。

浴衣を着て、髪を上げているとより一層際立つ。

その彼女が尊敬とか畏敬のような眼差しで見つめる先には、先程まで神に舞いを捧げていた少女。

その2人の周囲にこれまた美人揃いの魔女達。

友維の友達も、佳純ちゃんと一緒に舞っていた巫女たちも、この光景に気圧されている。

その中、友維は何食わぬ感じで

グレタを皆に紹介する。面識の無い筈の小さな巫女さんや桃さんの妹にもその友人にも

「あ、私理緒の妹です。」とついでの事のように自己紹介して人と人とを繋げてしまう。

皆が面食らうのも判るが、気付くと友維が中心にいて皆が知り合いになっている。


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