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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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昼休み前に一度本人に話をしておこうとしたのだが

「私が話してくる。お前が行くと(グレタに)怪しまれるぞ。」

と葵さんがその役を買って出てくれた。

彼女なら(蓮さん藍さんと違い)友維を煽るような事は言わないだろう。

戻った葵さんは僕ではなくグレタに直接

「昼休みに友維から会いに来る。」と伝えた。

その昼休み。廊下で待っていると友維は友人二人と一緒に現れた。

1人じゃ来辛いよな。

目で合図すると魔女達がグレタを連れて廊下に来る。

殴り合いのケンカを始めるくらいならいいが(よくないけど)

魔法を使われると校舎が困る。

ちょっとした緊張感。

「グレタ。」

「ユイ。」

2人は腕の届く距離で止まる。殴り合いが始まると思って止める準備をした。が

2人ば抱き合って喜んだ。

「何勝手に帰ってるんだよお前っ。」

「おまえこそこっそりアメリカとか行ってんなよなっ。」

半年の留学。黙って行ったのは自慢したかったから。

驚かせようととあるパーティーに出席するとそこにユイはいない。

「ユイは国に帰った。」と言われ愕然とした。

「アメリカどうだったん。」

「たいした事ないな。イロイロとデカイだけだ。」

「そう言えば昨日シートニアが来てたんだよ。」

「うっそっ何で。言いなさいよ。何やってるのよ。」

2人は殆ど英語で話していた。

「チェコ語は難しい」と友維は零していた。

グレタ本人もそれは認めている。

彼女は母国語と日本語の他にドイツ語、ロシア語、スペイン語、フランス語、英語を操ると言う。

「日本語は何とかなったけどフィンランド語はダメ。」

「私も苦労したわフィン語。」

すげぇなコイツら。

「で、いつまでいるん?」

「6ヶ月。」

「あれ?本当にただの交換留学?」

「まさか。」

「私に会いたかっただけとか言うなよ。恥ずかしいから。」

「まあそれもあるけど、ほらフィンランドの吸血鬼のお姫様が言ってたじゃない。」

「ユイの故郷にはユイと同じ名の神の子がいるって。」

友維はニヤリと笑って

「へへっ悪いな。先に会って来た。」

「なんだとっ。どんな人?天使みたい?」

「自分で確かめろ。あとその神の子の妹と友達になったぞ。」

「ええっ何それ。相変わらず友達作るの早いなお前。」

「今度紹介してやる。グレタ今どこ住んでるん?」

この街には変わった人が多いのは承知していたが

グレタの居候先(?)の老夫婦もそうだ。

この学校に来る留学生の殆どがこの家の世話になると言う。

物好きな人もいるなと思っていたが

奥さんが事故で大怪我を負い、以来車椅子生活を余儀なくされた

家の中での家事や日常の作業に支障はないものの

旦那さんも彼女を気遣い旅行にも行かなくなったらしい。

この学校の留学制度を何処かから聞き付け

物好きにも面倒を見るようになったらしい。

良し悪しは判らないが、留学生は少なからず奥さんの姿に感化され

何かと家事を手伝い、日本の文化を直接触れる機会ができるらしい。

同時に奥さんが、その留学生の故郷の話をとても楽しそうに聞いてくれるのだそうだ。

「何かしてあげられるといいのだけど」とグレタは言っていた。

ああそうか。

「どうした?」

そろそろ秋分の日だなって。

「そうか縁日あるな。」

その時橘さん紹介したら。

「シュウブンノヒって何。知らない単語ね。」

「その前にちゃんと橘さんに話付けておけよ。」

そうだね。

「だからシュウブノヒって何よ。」

昼と夜の長さが同じ日の事。

「実際は夜のが長いらしいわね。あれ?昼だったかな。」

「大気の屈折とか日の入りの定義とかで昼がちょっとだけ長い筈。」

ヨーロッパだとたしかリブラの始まる日とか言うんじゃないかな。

均衡やバランスを司る日。

「何でそんな事知ってるの。トトのくせに。」

魔女の知識と占星術は切り離せないから。

僕は占いに意味を見出していないが勉強だけはした。

問題発言になるが「屁理屈の寄せ集め」だと思っている。

信じたい人は信じればいい。それで救われると言うのであれば僕がとやかく言う必要はない。

その日に神様のいる舞台で祈りを捧げる儀式があるんだ。

去年は行かなかった。

「何で?どうして行かなかったの?何で黙ってたのよ。」

知らなかったんだよ。それに友維の勉強見てたから。

まだ日本の学校にも慣れていない。勉強の仕方がよく判らないからって。

「お祭りなら言えよっ。そんなん行くよっ。」

だから知らなかったんだって。

「ほらぼら兄妹喧嘩しないの。今年は皆で行きましょ。」

皆でって言うか僕は別行動だけどね。

「はあ?またお前」

葵さんがちょっと勘違いしたので慌てて

待って。縁日にはいるよ。皆と一緒じゃないってだけで。

「だから何で。」

「ふふん。こいつはアタシと二人っきりで行くからだ。」

桃さんが得意気に僕の腕を取って自慢?した。

実際は2人きりで縁日に行くのではなく、

夏祭りの時に橘さんから直々にされた依頼。

大した仕事では無い。御神楽の準備と片付け。

だから少し早めに出掛ける程度。

毎年のように手伝っている桃さんと待ち合わせて一緒に行くだけの事。

「お前。私達がいつも一緒なの忘れてない?」

「そうよね。この子最近私達の事無視してる節があるわよね。」

そんなつもりは無い。無視できるならしてみたい。

神社の中にいるんだし、舞が終われば公園で合流できるだろうから。

本当は公園で合流するつもりは無かった。

そのまま神社に残るかして、縁日が終わった頃顔を出して一緒に帰る予定でいた。

たまには、皆だけで楽しんでもらいたいじゃないか。

僕の御守りなんかしないで、羽を伸ばしてもらいたい。


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