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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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グレタは僕の守護者達が「魔女」である事を公言している事も気に入らなかった。

クラスメイトは全員知っている。

町内の人も殆ど知っているだろう。

それはこの街にいるからこそ。

人ならざる者と共に生きた歴史。

「それで魔女に囲まれてる貴方は何者なのよ。」

それが気になって委員長の園原さんに僕が何者なのか聞いていたのか。

僕達はグレタが「魔女」だとは気付かなかった。

でもどうしてグレタは彼女達を「魔女」だと見抜いたのだろうか。

「よりによってオズだなんて。」

「まあでも詐欺師にも見えない。むしろトトって感じかしら。」

犬かー

以来グレタは僕の事を「トト」と呼ぶ。

「ところで、あなたたち日本の魔女ならユイ・イチノカヤって魔女知らない?」

気付いていなかったのか?

友維は僕の妹だよ。

「え?妹?だってファミリーネームが違うじゃない。」

いやまあイロイロと事情があるから。

それで、妹に何か用?子供の頃の非礼なら僕からも

「そんなのはいいのよ。妹なの?私日本語間違ってる?妹って貴方の下の子の事よね。」

そうだよ。

「私より年下だったの?」

友維もグレタが年上だと知って驚いていたな。

「幼い感じだったけど日本人だから皆そうだと思ってた。母親も歳のわりに若いし。」

「だけど生意気でいつも私に・・・私より年下のくせに。」

「何処行ったら会えるの?会わせなさい。」

うわあわせたくないなぁ。

「すぐ下にいるわよ。」

何で蓮さんはこう

「面白そうだからに決まってるでしょ。」

僕が聞きたかったことを聞きもしない内から答えられるのはどうなんだろう。

「下?下って何どういう意味。」

彼女は足元を見て足を上げて床を見る。面白いなこの子。天然か?

「まあお昼まで待ちなさい。案内するから。」

ああイヤな予感がする。

碓氷先生に相談するが

「殺し合う前に止めろよ。」

笑い事か?

「学校で派手な事するなって言ってあるから大丈夫だよ。」

「それともカワイイ妹ちゃんが心配か?」

「え?理緒ってシスコン?」

「妹萌え?」

僕が心配しているのは2人以外の生徒達ですよ。

あと校舎とか。

「あー。まあな。藤沢一緒に行ってやれ。」

「判ってますよカオルン。」

「おまっそれ学校で言うなって言ったろっ。」

「何だよカオルンて。」

桃さんが釣れた。

「何でも無いっ。藤沢っ余計な事を」

「何だ?また魔女同士の秘密の話か?」

「え?私知らないよ。」

カナさんも釣れた。

とにかく藍さんがいてくれて助かる。

「私はそれしか出来ませんから。」

そう、僕は長い間勘違いしていた。

彼女は確かに結界と呼ばれる魔法を得意とする一族の末裔ではある。

だが彼女は幼い頃に師である母を亡くした。

残された記憶と、資料を元に独学するしかない。

産みの親は幼い頃に亡くし、中学に上がる前に1人暮らしを始めて

家の事も学校の事も、今まで全部1人。

それ以上広げられないのなら、それを突き詰めるしかない。

そうしたいからではなく、そうするしかない。

それしか出来ない。

いつだったか工房で話してくれた事がある。

「知ってます?本場ではバリヤーって言うらしいですよ。」

うん。確か柵って意味だったかな。

「ええ。日本では結界て言うでしょ。」

うん。

「不思議じゃありません?同じ技術なのに言葉の意味はまるっきり反対なんですよ。」

字の通りなら、世界を結ぶ「結界」。侵入を防ぐ「柵」

そう言われるとそうだね。

藍さんは唐突に僕を引き寄せる。

「これで結界作ると邪魔者は防げますよね。で中の者は心置きなく結ばれる。」

とこれまた唐突に突き放す。突き飛ばす。

「とか考えてるんでしょ。ホントイヤラシイ。」

そんな事考えてもいなかったのに。

「少しは考えてください。」

それって

「何処かの魔女があなたの唇狙ってそうしたらどうするんですか。」

はい気をつけます。

でもそこに敵意とか悪意があれば指輪が守ってくれる。

「何ですその敵意とか悪意とか。指輪が相手の意志を認識するとか本気で思ってます?」

違うの?

「違いますよ。まったく。」

利根先生の作った結界に弾かれたのはどうしてだろう。

あれは魔女達を閉じ込めようと悪意を持って作られた結界だからじゃないのか?

「あれは結界だから弾いたってわけではありませんよ。」

「もっと言えば、あれが魔法であったからでもありません。」

「絢さんが見せたでしょ。私達の魔法が全部弾かれたの。」

「魔法ってその手段であって、私の結界だってただの空気の壁ですからね。」

つまり、魔法によって作り出された炎であっても、それはただの炎だ。

燃焼が行われているだけ。

僕の指輪は、指輪とその持ち主に危機が訪れると

それが何であれ防ごうと働く。

「ヨシノンのアレは、その空気の塊が指輪を襲ったからですよ。」

僕に触れずに、結界に囲んでしまえば指輪は全くもってなんの効力も発しない。

「秘密の部屋に連れ込まれたのだって、あなたがもっと警戒していればあんな事にはならなかった筈なんです。」

蓮さんに結構強めに腕を殴られて「殴れるわね」と言われたことがある。

藍さんが言うには「あの時それを確かめた」らしい。

逆に言うと

悪意とか敵意って、僕が相手に抱かない限り指輪は何も守らないって事?

「だから悪意とか敵意は必要ないんですってば。話聞いてます?」

「あなたが自らを危ないと思わなければ銃で撃たれようと指輪は守らないんです。」

僕は撃たれた事がある。あの時、指輪は僕を守らなかった。

不思議だったが、あれは「吸血鬼に向けられた悪意」だからだと思っていた。

そうではない。

僕が他人を守ろうとしたからだ。自分が危ないではなく、他人を危ないと思ったから。

でも利根先生にやられた時、僕は自分ではなく、魔女達を助けようとしたんだ。

指輪は反応した。敵意も自己防衛もないのに。

「だから。あれは直接指輪にその空気の塊がぶつかったからって言ったでしょ。」

じゃああの呪いみたいな祝福みたいなのは?

「あれこそ理緒くんが何も警戒してなかったからでしょうが。」

「だからいつもいつももっと警戒しろって言われてるでしょ。」

結構本気で怒られた。


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