表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Witch  作者: かなみち のに
80/141

80

コーヒーを淹れながら開いてますよ。と答えた。

お姫様の分も淹れようか。

ドアを開けたのは彼女では無かった。

一瞬、妹の友維かとも思ったが、もっと大人だった。

思わず「誰?」と声に出しそうになった。

全く予想していなかった。

会えるなんて思ってもいなかった。

「入ってもいい?」

あ、うん。

「素敵な工房ね。」

彼女はぐるりと部屋を見渡した。

紹実さんのご両親が未だにイロイロと送ってくれるから。

「ええ。ほんと結構無茶言って貰ってきてたわ。」

「息子に贈るんだって言っちゃうから問題になってね」

息子。か。設定ではそうなんだよな。

あまり話しは出来なかったけどイイ人達だった。

夫婦仲良さそうで、僕の実父が亡くなった事をとても悼んでくれた。

僕と友維に「家族が増えて嬉しい。」とも言ってくれた。

「ごめんね理緒。」

彼女は何に対して謝っているのだろうか。

「ずっと1人にさせて。寂しい思いをさせて。」

僕には祖母がいてくれた。だから寂しくは無かった。

それより友維が大変だったんじゃない?

僕の所為でアチコチ飛び回って。

「本人は楽しんでたわよ。」

「私に気を使っていたとこもあったでしょうけどね。」

友維は父が亡くなった時に全てを聞いていた。

妹は、兄を憐れんでくれた。

「これからは私が守るんだって自分で言ったのよ。」

「本当に。」

「本当に2人共イイ子で良かった。」

「ありきたりな台詞かも知れないけど、2人を誇りに思うわ。」

僕は泣いていた。

「会いたいなんて思わない」なんて嘘だ。

ずっと会いたかったんだ。

絵本を読んでくれたあの笑顔が大好きで

ずっと会いたかったんだ。

母は、泣いている子をあやすように抱き締めてくれた。長い時間、そうしてくたれ。

恥ずかしいとも思わず、僕はその胸の中で泣いていた。

ようやく落ち着いて、母にコーヒーを淹れて座って話をした。

夕食までの、ほんの僅かな時間。

僕は母に対して一番気にかけていた事を謝った。

祖母が亡くなって、母も友維も葬儀にいなかった。

僕を守るためとは言え、会えなかったのは辛かったのではないか。

「いいえ。ごめんなさい。私は別の日にお別れしたの。」

「まだ生きている内にお別れは済ませていたの。」

自分が長くない事を知った祖母は、2人の娘を呼び寄せ僕の今後を話した。

僕のためにそこまでする必要があったの?

「勿論よ。」

父が亡くなった事がまだ「委員会」知られていない状況。

僕に対して「彼の身内」が接触するのは避けなければならない。

だが逆に、父゛か亡くなった事が知られた今、母はこうして僕に会いに来てくれた。

そうする事で「指輪の所在」を曖昧にできるだろうと言った。

仮に僕が持っていると思われている今、母と会う事で指輪の譲渡が行われたと思わせる。

魔女として本場で活動している母にこそ、委員会の関心も向くだろう。

「理緒は魔女になったの?」

祖母はずっと僕に魔法を教えてくたれが「魔女になれ」とは言わなかった。

ただ紹実さんは何かと言うと煽って魔法を使わせようとする。

僕を「最強の魔女」だなんて言うくらいだ。そうしたいのだろう。

もっとも今は友維がいる。友維なら素晴らしい魔女になる。

「何か魔法使えるの?」

壁を抜けたくらいかな。

「凄いわね。で、それは科学的に解明できた?」

それが全然。

「今更母親風吹かすつもりもないけど。好きな者になって。」

他にも何か話したと思うが覚えているのはこんな程度。

友維が静かにドアを開けて「夕食できたけどー。」と呼びに来た。

僕達2人が笑って話をしている姿を見て友維も喜んでくれた。

友維は先ず母に抱き付いて、それから僕にも抱き付いた。

夕食は魔女達の晩餐になった。

多分世界中でこの空間ほど魔女率が高い場所は無いだろう。

現代のサバト。

その夜。僕達親子と遠い国のお姫様は工房で一緒に過ごした。

母は、ただ僕に会いに来てくれた。

碓氷先生の持っていた写真を見て、どうしても会いに行こうと決めたらしい。

例の委員会の対抗組織の立ち上げの際に同席していたストラースタ家の魔女にその話をすると

シートニア)がユイに会いたがって煩い。」と言われた。

ユイは日本に帰った。グレタも日本に留学した。寂しくない筈がない。

(兄である僕にも「ぜひお会いしたかった」と言ったがどうだろうか)

そして翌朝

2人は早速帰り支度を始める。

ゆっくりするつもりで来たのかと思っていた。

片道およそ15時間もの長旅を経て、

母は僕に、ポーランドのお姫様は友維に会いに「だけ」来てくれた。

たった2日間の滞在。

僕達兄妹は学校を休み、空港まで付き合う事にした。

すると藍さんが何とリムジンを手配してくれて

空港までいくつか観光地を巡りながら送る事ができた。

遠い国のお姫様はとても喜んでくれた。

ロビーでゲートまで見送って、4人は笑顔のまま別れた。

また会える。

何の根拠もない。明日どうなるかなんて判らない。でも会える。それは確かだ。

家まで送り届けてくれた運転手さんにお礼を述べると

「喜んでいただけて私も嬉しいです」と言ってくれた。

友維は学校から帰った藍さんに真っ先に飛びついて御礼を言った。

彼女も「お役に立てて良かった。」と言ってくれた。

いつか必ず何かお返しをするよ。

「何言ってるんですか?私が恩を返しただけですよ。こんなんじゃ足りないくらいです。」

恩だって?

彼女は何に対して恩義を感じている?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ