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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
8/141

08

「変身なんかしないって言ってるでしょ。わざとね。」

グローブ

魔女の杖のような物だ。

杖は「目標物」を

人によってはそのまま杖だったり、子供の頃見た魔法少女アニメのグッズだったり

親から受け継いだ何かだったりするが

この数年の流行りは手袋。

そのグローブ(手袋と言うと怒られる)には「印」が施され

薫ちゃんの言う「変身」のスイッチになっている。

現在の(いや昔から)魔女はローブもマントもとんがり帽子も着用しない。

普段と何も変わらない。女子高生は女子高生のままの姿。

空を飛ぶ時も箒に跨ったりせず、そのまま飛ぶ。

だが、このグローブを填めた時の彼女達の姿は

普通、魔女以外にはその存在を認識できない。


僕がグローブを填めた魔女達を認識できるのはどうしてだろう。


グローブを填めなくても魔法は使用できる。

杖や手を使うのは目線の確認だ。目標を捉える指針。

グローブを使うのは「手を自由に動かすのに適している」から

杖よりも「携帯性」が高いから。

「あの姉妹は単独行動のようね。」

神流川連はおかしな事を言う。姉妹なのに単独?

「他に協力者とか三姉妹とかじゃないかって事よ。」

もしかして神流川さんが手を出さなかった理由って

「ええ、他に誰か来るかも知れないって思ったからよ。」

魔女の争いに「1対1でなければならない。」なんて決まりは無い。

人数的に有利不利ではない。指輪を守る一点において

例え後に卑怯と蔑まれようと手段なんて選べない。

本来なら数で勝っている内に短時間で事態を収束させるべきだ。

「私まであの子達相手にしてその隙に理緒君が持って行かれたら。」

神流川蓮の意見はもっともだった。同時に

「葵ちゃんと藍ちゃんが簡単にやられるワケないじゃない。」

グローブの件は「明日薫ちゃんに聞いてみる」で話は終わる。


そして夜。食事も終わり各自が部屋に戻ってすぐ。

神流川蓮が初めて工房を訪れた。

「ちょっといいかしら。」

なんでしょう。

立ち話程度かと思ったら

「中に入れてくれないの?」

ああ、はい。どうぞ。散らかってますけど。

「凄いわね。工房って本当だったのね。」

うわっ

声を出して驚いてしまったのは流しで藤沢藍がコーヒーを淹れる支度をしていたから。

紹実さんの両親が送ってくれたイタリア製のコーヒーポットに別の安いヤカンで沸かしたお湯を注いでいるところだった。

探せばドリッパーもある筈だが見当たらない。そもそもわざわざポットに移してもインスタントしかないはずだ。

そんなことより何時の間にっどうやって。

「面倒な事説明させないでください。」

「藍ちゃんも気になったのね?」

「何をです?私はコーヒー切らしたので飲みに来ただけですよ。お二人でお話があるならどうぞご勝手に。」

ご勝手も何も人の部屋の台所で腰かけてコーヒーすすって何を言うか。

「まあイイわ。私にもコーヒー淹れてもらえる?」

「仕方ないですねぇ。」


工房の真ん中に大きな木のテーブル(作業台)が置いてある。

最初にこの部屋に入った際、

映画やアニメで見た事があるだろう、

作業台にはフラスコやらビーカーやらそれに連なる管。

あれは決して大袈裟な表現ではない。実験をするためにどうしても装置が必要になってくる。

同時にいくつかの実験を行おうとすると必然的に雑然としてしまう。

その殆どは「化学」か「医療」に関する物。

まあサスガに紫色した液体がグツグツ煮え滾っていたりはしないが。

好きに使っていいとは言われたが爆発でも起こしたら追い出されてしまう。

僕はこの部屋を借り入れたその日に全て片付け、

代りに魔法陣と呼ばれる設計図や回路図を広げて眺めている。


藤沢藍も部屋の隅から椅子を持って作業台の前に腰かけ

棚に置いてあった大きな熊のぬいぐるみを膝に乗せながらそれらを眺めている。

神流川蓮は淹れてくれた藤沢藍に「ありがと」と受け取ってからすぐに

「理緒君の指輪、ちょっと見せてもらえないかしら。」

うん。とカップを置いて首から頭を通してチェーンに付けたまま手渡した。

「少しは躊躇しなさいよ。もし私が狙っていたらどうするのよ。」

その時は僕にも碓氷先生にも人を見る目が無かったってだけ。

「なっ。じゃあ私が偽物だったらどうするの。」

藤沢さんもいるからそれは無いでしょ。

「藍ちゃんも敵だったら?」

だからその時はその時だって。

そんな事言い出したら碓氷先生だって怪しいだろって話だよ。

と言うかあの人が一番怪しい。

そこから疑ったらもう誰も信じられなくなるからね。

「まあ信じてくれるのは嬉しいけど。」

「アナタもうちょっと危機感持った方がいいわよ。」

じゃあ返して。

「今はいいのよ。全く。」

とブツブツ言いながら指輪を光にかざして見たり、強く握ってみたり

指輪をテーブルの上にコトンと置き、彼女はポケットからグローブを出して填めた。

「どう?」

どうって?

「私が見える?」

うん。

「指輪外してるわよね。」

そうだね。

「何で見えるのよ。」

さあ?そもそも指輪と何か関係あるの?

「別に不思議はないでしょ。」

藤沢藍がコーヒーをすすりながら言ってのける。

「どうして?藍ちゃん何か知ってるの?」

「別に何も知りませんよ。ただ私今グローブ填めてませんけど神流川さんが見えますよ。」

「それは藍ちゃんも魔女だから。え?」

はい?



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