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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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本人にもちゃんと謝り、本人からも両親からも許しは受けたと言った。

友維が数年お世話になったポーランドのストラースタ家からは1ヶ月晩餐会への参加も禁止された。

(そのお姫様が「どうしても友維を連れて行く」と言って謹慎が解かれたらしい)

「理緒達の留学生が本当に私の知ってるグレタなら。」

彼女は悲しい魔女の物語を始める。


17世紀。彼女の祖先の地で魔女狩りが行われた。

本物の魔女であろうと、なかろうと容赦なく他者の告発によって魔女に認定されてしまう。

危険を察したその一族は現在のポーランドからドイツへと魔女にその「魔女狩り」を告げながら逃げる。

「近いうちにこの地域でも魔女裁判が行われるだろう。」と。

「まさか本当に魔女街道?」

それはどうかな。どこそこ通りましたなんて記録は無いから。

現在の「魔女裁判が行われた土地を結んだ」通りを繋げた街道は

当時と現在では国も違う。

ただし、偶然ではない。その地域で「魔女狩り」が行われた事実は存在するのだから。

その一族が触れ回った事で魔女狩りが行われてしまったのではないか。と疑う者も当然いるだろう。

遅かれ速かれそうなったのだとしても、

騒ぎが収束し、母国に帰った彼女達の一族に待っていたのは

「本物の魔女」に対する言われなき誹謗と中傷。

それまで医師として祈祷師として尊敬を受けていた魔女は

不当な魔女裁判によってその地位を貶められた。

一部の地域ではその宗教観から

「魔女」は忌み嫌うべき存在であると「実際に」認識され続けている。

つまり、魔女の存在は認識されている証明でもあるのだが

例えば日照りが続くと「魔女の呪い」だと言われたり

祖母から聞いた話では、西暦2000年代になってからも

魔女に対する言い掛かりで裁判が起きたらしい。

この件は原告が魔女(男性)で、訴えられたのは自分の身に起きた些細な不幸を魔女の所為だと言い触らした人物。

(確か和解したとか)


とにかく魔女に対する誤解は未だに続いている。

現在の魔女の方がよほど国際的だろう。

僕が彼女の「チェコ」に違和感があったのは、彼女の父親の母(つまり祖母)がウクライナ出身でその血を引いたからなのだろうと判った。

彼女自身、魔女の世界ではそれこそ救世主のような一族の末裔であるから

友維が度々出席していた晩餐会とやらに出席していても不思議はない。

友維がそうであるように、ヨーロッパのあちこちでその顔が知られ、その上アメリカに渡り、挙句日本に留学。

どれだけ広い世界を見ている事やら。

ただし、いやだからこそなのか。

友維が言うには「グレタは魔女としての誇りが異常なまでに高い」

グレタがお姫様のケーキを取り上げたのも、

小さな島国の「なんちゃって魔女」である友維と一緒にいるのが気に食わなかったから。

と後日グレタから直接この話を聞いた。

友維は「もしかしたら留学生が知り合いかもしれない」事に驚きつつ帰宅すると

更に驚く事が待っていた。

いつものように、僕はそのまま母屋に入る。

夕食まで皆で宿題(高校二年生で宿題ってのもアレだ)をして復習も予習も済ませて

(皆の成績が良いのも判る)それから夕食の支度を手伝う。

工房に行くのはいつもその後。

玄関ドアを開けると紹実さんの隣に黒猫のノトを抱いた少女。

外国のこれまた人形のようなかわいい子。

「シートニアっ」

友維が叫んだ。それってさっき

「ユイっ」

友維は靴を脱ぎ散らかしながらその少女に飛びついて、危険を察したノトさんが僕の顔に飛びつく。

おかげで感動的なシーンが見られないじゃないか。

少し離して、しっかり目を見て話したいシートニアに対して友維は一向に離れようとしない。

「ユイ?」

呼びかけに応えないのは、友維が彼女の肩で泣いていたから。

彼女は友維の頭を撫でながら

「皆を紹介してよ。」

友維はようやく顔をあげ、涙を拭いながら

「この子がさっき言ってたシートニア・ストラースタ。偉大な魔女のお姫様だ。」

と僕達に紹介した。

「えーっと、これが私の兄。と愉快な仲間たち。」

「おいっ。」

「なんて紹介だ。」

「むしろ私達が姉でコレがそのオモチャでしょう。」

それも酷く無い?

「あ、あのお兄様。」

オニイサマ?僕の事だな?聞いた?ああ素敵な響き。何でしょうお姫様。

「あの先程お姉さまと勝手に工房を見学させていただきまして。」

うん。あーでも散らかってて何が何だか判らなかったでしょ。

「いえっお姉さまに説明していただいて。とても楽しいお部屋です。」

僕が説明するより良かった。あの部屋はずっと紹実さんが

あれ?紹実さん仕事は?

「休んだに決まってるだろ。」

決まってるのか。

「それでその、何もいじってはいないのですが、念のために確認していただけますか?」

紹実さんも一緒だった。その彼女が何も言っていない。2人共無傷のように見える。

何の心配をしろって?

「ホラ理緒。ちょっと見てこい。」

僕は1人、工房に向かわされた。

鍵は掛かっている。紹実さんが出る時に掛けてくれたのだろう。

部屋を見渡すと何も変わりがないように見える。

あるべき場所にあるべき物。

大体僕自身何が何処にあるかなんて正確に把握しきれていないのに。

三角フラスコと丸型フラスコの場所が入れ替わっていても気付かない

散らかっているとは言ったが魔女達に言われて普段から片付けてあるので

そこそこ整然と整理されている。

考えられるのはただ単に僕に聞かれたくない話があるから。

それならそうと言ってくれればいいのに。いちいちヘソ曲げないっての。

まあ夕食には呼びに来るだろうからそれまで待っていよう。

鞄を置いてお湯を沸かしてコーヒーを淹れる準備。

こんな時テレビでもあると暇が潰せるのだろうか。

鞄から教科書やノートを取り出しいつも皆としているように宿題をしよう。

やがてやかんが鳴る。

コーヒーポットに移し、その間に挽いた豆をセットして

ドアをノックする音。

誰だ。ノックなんて。

揃いも揃っていつもいつも当然のようにドアを開けるのに。

さっきのお姫様かな。


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