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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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小屋が焼かれただけでは終わらなかった。

小さな公国でついに本当の「魔女狩り」が始まってしまった。

遠い歴史の物語などではなく、

「魔女ではない」住民が云われなき証拠を元に「魔女」として認定され

文字通り烙印を押された。

現代文明において、あまりに無知であまりに非人道的な行為。

君主は何を考えて蛮行に及んだのか。

滅びかけた小さな公国は、魔女を炙り出したい委員会に利用された。

「このまま手を打たず「魔女の国」と呼ばれ続ければ世界から非難され続ける。」

「この国には魔女はいないと世界に証明しなければならない。」

当然、そそのかされた君主の思惑とは異なり、その行為自体が非難の的になる。

欧州各国で「非人道的な行為に及んだ悪人」と公式声明で名指しされたほどだ。

しかしそれ以上に、

「魔女」の悪評は広がった。

夫と2人の子を殺した女性は僕らの言う「魔女」ではない。

過去に精神科への通院歴も確認されている。

それでも「魔女」と呼ばれた。

より人々の思う「魔女」としてのイメージに近かったからだ。

委員会としてはそれで充分だった。

「事件の責任を魔女にする」事こそが目的なのだから。

魔女のイメージを損なう事が出来ればそれでいい。

本物の魔女たちに何ができるだろう。

実力行使で委員会を潰す?

何処の誰がその委員会のメンバーだ?

判明したとしてどうする?人種差別主義者だと非難するのか?

自分達は魔女であると高らかに宣言し、そうするのか?


それでも委員会のメンバーを特定する事が第一歩だった。

どの国のどの機関なのかすら判らないのだから取っ掛かりすらなかったのだが

皮肉な事に、委員会がその公国に接触した事から手掛かりが得られた。

縁さんの創り上げた魔女としての人脈を受け継いだ僕の母と、碓氷先生の策略と、利根先生の行動力。

(この場合、利根先生が日本で委員会に協力している事実がとても大きかったようだ)

ついに委員会のメンバー数名を特定した。

母は碓氷先生と利根先生と共に今ドイツにいるらしい。

チェコとオーストリアの国境近くで、委員会に対抗する組織を創り上げようとしている。

それは「対魔女」に特化した委員会にのみ対抗した手段ではない。

各国に存在する妖怪の類のみを対象にすると却って危険だ。

ヘタをするとそれこそカルト認定されかなねない。

より政治的に、あらゆる国にはびこる「差別主義」の撤廃に向けた活動。

国の、公的機関の一部として存在する「委員会」のような組織を叩くべく、

同じく国にその対抗組織を立ち上げさせようとしている。

その最初の仕事が、非難の対象となっている公国にあらぬ事を吹き込んだ組織の摘発。

「どこぞの国の何とか言う機関の役人からこのような非人道的な行為を強要された。」

と公国の君主に口にさせると同時に

「あなたの国にはそんな組織があるのか」と国民に訴える。

さらにその国の一部の政治家に情報を与え

「今の政府には差別主義を先導するような機関がある。」と内側からも追い立てる。

とても有効な手段だと思った。

「そう簡単にはいかないわ。」

「テロの脅威があるから。移民の問題も解決していない。」

「人種差別をするなと言われても、疑いの目は消せない。」

ここまでが3姉妹のもたらした情報。

さらに、魔女達の間でも意見は割れているらしい。

「一気に委員会とやらを白日の下に曝け出し全てを潰す。」

「魔女としての活動は控えて嵐をやり過ごす。」

「むしろ魔女として奉仕活動に従事するべき。」

母は個人的には「全て潰す」案に賛成したい。

だがそれによって傷付く魔女は決して少なくない。

穏やかに暮らしている魔女にすら危害が及ぶ可能性が高すぎる。

僕たちの抱えたジレンマと同じ問題。

魔女としてのイメージが

攻撃的であったり暴力的にあってはならない。他者の脅威であってはならない。

無関係な魔女が「お前も魔女だから」と新たな差別を受けるような事があってはならない。

魔女は決して表舞台に立つ事が許されない。


本当に身につまされる。

つい先日僕達が経験した事の比ではない。

「それで伝言てのはね、」

「何の心配も要らない。楽しくやってる。ですって。」

紹実さんは笑いだす。

「お前達の母は強いなぁ。なあ友維。向こうでもずっとこんなんだろ?」

「そう。ママはずっとこんな感じ。」

アチコチ飛んで廻ってアチコチに迷惑掛けて

「それでもいつも笑って帰ってくるんだ。」

「本人はそんなつもりないって言ってるわりに凄い御礼状とか来るんだよ。」

「ママ宛てのクリスマスカードなんて山だからね山。」

他の誰にでもない。友維は僕に母の自慢をしている。

正直に言うと、母の事は頭になかった。

それよりも身近な碓氷先生や利根先生が心配だった(どうやら大丈夫のようだ)。

僕は冷たい奴なんだろうな。

妹が母を自慢しても、僕には何も響かない。

僕と友維を守るために、あちこち渡り歩いているのに。

信頼だとかではない。ただ無関心なだけだ。僕は酷い奴だ。


翌日。

僕達は朝から「秘密の部屋」について講義を受けた。

世界中の何処に居ても瞬時にその場に戻れるワケではない。

簡単に言うなら無線LANのような。

個人がそれを受診できる範囲においては可能。

但し、中継点を作成する事で広範囲をカバーできる。

指輪の影響は受けないの?

「魔法が直接あなたに掛るわけではないから大丈夫。」

「実際連れて行かれたんじゃないのかよ。」

いやでも術者本人に掛るんでしょ?

「理緒の使う魔法にその指輪が反対する事なんて無いから。」

ああそうか。何言ってるんだろ。

今まで散々実験と称した魔法を使ったじゃないか。

そのどれもこれも指輪が邪魔をした事なんて一度だってない。

そしていよいよその儀式。

紹実さんが事前に話をしておいてくれたのだが

僕「達」全員がこの工房を秘密の部屋にする事にやはり驚いた。

「全然秘密にならないけどいいのね?」

「帰れる場所が欲しいだけなので。」

秘密の部屋ではない。

ここは魔女の工房であり、憩いの物置。


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