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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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紹実さんも橘さんも僕の意思を尊重すると言ってくれた。

僕は真実を語るべきだと答えた。

こんな騒ぎを起こした責任は取らなければならない。

だが批難を受けるのは僕だけでは無いだろう。

これは「魔女」の責任ではなく、

あくまでも僕個人の問題だ。

こんな事で、この街の魔女達が排除されるのだけは避けたい。

「そんな事にはならないよ。」

橘さんはそう言って僕の頭を撫でてくれた。

週末まで、本当に「蛇の生殺し」て奴を味わった。

皆は

「理緒が何処か転校する事になっても着いて行く。」と言ってくれもした。

いやまあ転校はともかく引っ越しはしないとダメかも。

他所の土地から通うくらいで許してもらえるといいけどね。

精一杯強がっては見せたが、笑えなかった。


友維はずっとしがみついたままだった。

僕が代理担任に担がれたその夜からずっと傍にいて、ずっと看病してくれていた。

僕としては事の顛末を全て語るつもりは無かったのだが

その担任が面白そうに不気味に笑いながら語ったそうだ。

「目を離すなよ。こいつは何度でも同じことをするぞ。」

そう言って僕の身体から出て来た3つの弾丸を紹実さんに渡した。(今は工房の棚の中にある。)

「人間にしておくのは惜しい。」

「だからってヴァンパイヤにさせるのも惜しいわ。魔女としてはね。」

少量の吸血鬼の血はすぐに消えると言われた。

残念だ。

彼のように強くなれたかも知れないのに。

皆を守る力が手に入ったのかも知れないのに。

傷口が塞がり、紹実さんから起き上がっても大丈夫と言われた瞬間

友維に胸をグーで殴られた。

「勝手に死ぬなバカッ」

いっ痛いよ。

「煩いバカッ」

そんなバカバカ言うなって。

「黙れ馬鹿っ」

今度はボディブロー。

非力な女子がポカポカやるのとはワケが違う。

フィンランドで総合格闘技を嗜んでいた武闘派魔女が本気で殴ってくる。

ぐあっ。

「ちょっと友維ちゃんホントに死んじゃうからっ。」

「むしろ死ねっこんな奴私が殺してやるっ」

何度も僕の胸やお腹を叩く。

いっっちよっと、やめっホントに死ぬる。

「あーっ死ぬなーっばかーっあーっ」

ガバっと僕に抱き付いて、胸の中で本気で泣き叫んだ。

「今度死んだらホントに私がコロス。」


そして週末。

僕は魔女達に連れられ橘家に行った。

勿論桃さんもいる。

彼女達には全てを話しておいた。

この騒動の元凶は全て自分にあると伝えた。

結果として僕が撃たれて1日半寝ていた間に全てが終わったが

この街と、その住民に迷惑を掛けたのは紛れも無く事実で

一歩間違えればこの街の存在意義とか今までの歴史すら壊しかねない事態だった。

僕としては、むしろこの街から追放された方が気楽だと思えていた。

逃げるようで申し訳ないが、

自分が傷付けた人々を日々見続ける拷問には耐えられそうにない。

橘家の中は玄関に入った時から賑やかだった。

笑い声も聞こえる。いや笑い声しか聞こえない。

出迎えてくれた佳純ちゃんが僕の手を取って中に入れてくれた。

笑顔だった。

「お姉ちゃん達はこっちの部屋で待ってて。」

と皆は居間に通された(友維が僕の手を離さずちょっと大変だった)。

僕は手を取られたまま住民の集まる広間に案内される。

覚悟は出来ている。

佳純ちゃんが襖を開け

「お兄ちゃん来たよー」

と言い終わる寸前だった。

僕の脇から凄い勢いで誰かがその広間に飛び込んだ。

宮田桃。

「ちょっと待ってくれっ。アタシの話を聞いてくれっ。」

「こいつは、御厨理緒は私の恩人だ。」

「その原因がどうあれ、こいつは私をこの街にいさせてくれようと頑張ったんだ。」

「こいつのおかけで、アタシは友達を失わずに済んだんだっ。だから」

途中から何を言っているのか本人にも判らないだろう。

「うるせーよ桃。」

制止したのは宮田桃の姉、宮田杏。

「うるせーって何だよっ姉ちゃんだって」

「そんな事は皆判ってるつーの。」

「なに?」

一斉に拍手が鳴り響いた。

驚いて橘さんを捜した。

「ちゃんと理緒君の言ったように真実を伝えたわよ。」

ならどうしてこんな。

「それはそれ。よ。」


僕が原因で街に嫌がらせが起きたのかも知れない。

だがそれを自ら排除し、それどころか住民の結束をさらに高めた。

それを称えようと拍手が起きていた。

でもあんな騒動を起こした責任は

「紹実ちゃんに較べたらねぇ。」

「全くだっ。あのおてんばときたら。」

姉は何をした。

「原因は絢ちゃん達だったけかなぁ。」

「違いますよ。そこの化け猫(姉)のせいです。」

「化け猫言うな。壊れたダンプカーのくせに。」

「ブレーキの壊れたダンプカーだろうが。じゃなくて」

「ブレーキ壊れてねぇよっ。いやダンプカーでもないからっ」

「何1人で喚いているんだ。」

僕はこの街の人達を侮っていた。

何度も「オオカミが来た」と騒いでも

「そうだね。私も見たよ。気を付けようね。」と言ってくれるような人達だ。

紹実さんは僕よりも早く今回の件の謝罪をしていた。

この騒動が始まってすぐに、皆を集めたのは彼女だった。

「今回のこの騒動は、私が全ての元凶かも知れない。」

身体の事、指輪の事。その指輪の副作用。

僕が「御厨理緒」なのに「三原紹実」の弟である理由も全て。

「突然ですが弟と妹ができまして。まあ家庭の事情で苗字違いますけどね。」

とかなんとか適当だよと紹実さんは言ったが、多分キチンと全て。

住民は協力してくれた。

「また紹実ちゃんが何かやらかす」程度にしか思っていないらしい。

おかしいとは思った。

僕はこの街に来たばかりなのに、夏祭りや、正月、皆僕を知っていた。

やっと会えたと言ってくれた人もいた。おかしいと思ったんだ。

「桃ちゃんが言った事が全てよ。」

「理緒君は私の大事な友達を守ってくれた。」

「その友達のお友達も守ってくれた。」

別室で待たされていた皆が広間に呼ばれた。

佳純ちゃんに連れられて現れた皆は一斉に僕と桃さんに抱き付いた。

皆が喜んでくれた。


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