07
週明けの月曜日の放課後。
入学式の日に僕を襲った2人の女子高生が通学路で待ち伏せしていた。
姉の鏑木華奈と偉そうな妹の莉奈の双子姉妹。
ご丁寧に自己紹介と先日のお茶のお礼を述べ、
その上で「指輪をください。」と手を出した。
「くださいって言って「はいどうぞ」って渡すわけないじゃない。」
「でもお願いしたらくれるかも知れないじゃない。」
「何の為にこの子に3人も護衛が付いていると思ってるのよ。」
「でもぉ。」
姉妹で勝手にやりとりを始めたので三人の守護者は二人を無視して帰ろうとしたのだが
「ちょっと待ちなさいよ。」
妹の鏑木リナが止める。
「簡単に手に入るなん思ってないわ。」
同時に物凄い速度で僕に突っ込んでくる。
「ボケっとしるなっ。」
渡良瀬葵が、突進してくる鏑木リナに対して渾身の右ストレート。
間一髪、急停止し頭を振り躱す。その流れのまま右のハイキック。
渡良瀬葵は踏み込みながら身体を沈み込ませ、左のアッパー。
鏑木リナは軸足を沈め、仰け反って避ける。
軸足を沈めたのは仰け反った勢いでサマーソルトキック。
綺麗に円を描き着地。
「やるわね。」
「おまえこそ。」
なんだこれ。なんなのこれ。魔女同士の戦いじゃないのか?
「でもこんなもんじゃないわよ。」
「いや、お前はもう手を出さ」
「出すわよっ。あぶなっアンタ暗示魔法使うのよね。」
「ちっ」
「御厨理緒。指輪をよこしなさ」
「御厨理緒っその場から動くなっ。」
「指輪を渡しなさい。」
「御厨理緒っお前は下がれっ。」
「黙れ」
「断るっ」
「カナッ何で今の内に囲わないのよっ。」
「やってるけど消されちゃうのよー。」
派手な肉弾戦の最中、姉の鏑木カナは僕を結界内に閉じ込めようと試みていた。
しかし尽く藤沢藍によって消されていた。
「仕方ないわね。」
狙われたのは渡良瀬葵。鏑木リナは突進して背中から体当たり。
腕を前に出してブロック。だが勢いは消せずに吹き飛ぶ。
転がる前に彼女を支えようとするが力及ばず一緒に転げる。
「ふん。大した事ないわね。」
「ちょっとリナっ。あの子傷付けるなって言われたでしょっ。」
「うわぁああゴメンっ。」
根が素直な子なのだろう。僕を助け起こそうと駆け寄ってくる。が
「んっ。」
藤沢藍がまた何かをやった。多分結界だ。
「いたっ。」
と見えない壁にぶつかる鏑木リナ
「ん。えいっ。」
かわいらしい声で何かを振り払うような仕草をした鏑木カナ。
「ふぅ。」
どうやら壁は消えた。
鏑木リナは一度咳払いをし、
「御厨理緒っこっちに来なさい。」
鏑木リナの命令に従い、僕は立ち上がって彼女の元に向かう。
「止まれ。」
渡良瀬葵が何かを言ったような気がしたが判らない。
神流川蓮が僕の腕を掴み留めようとする。
それでも、ひきずってでも行かないと。
「ちっ。」
舌打ちしたのは渡良瀬葵だった。
「止まれと言っている。理緒。」
さきほどより明らかに強い命令。今度はハッキリと聞こえた。
足が止まり一歩後ずさりできた。
「おかしいわねー。やっぱり直接奪うか。」
鏑木リナが再び見えないくらいの速さで距離を詰め
ドシン
渡良瀬葵の体当たりがカウンターで入る。
鏑木リナは身体の前で腕を十字に組んでブロック
「リナっ。」
「大丈夫よこれくらい。」
埃を払い、再び歩み寄る鏑木リナ。
「させませんよ。」
藤沢さんがもう一度壁を作る。ドンと見えない壁にぶつかる。
「また?カナお願い。」
鏑木カナが先程のように壁を払う仕草をする。
壁は消えない。
「あれ?」
「何よ。ダメなの?」
彼女は壁に両手を添えて押す。
「んんーっ」
「させません。と言った筈です。」
藤沢藍も同じように両手を前に突き出す。
「はぁ。ダメみたい。」
「まあいいわ。今日はこれくらいにしましょう。」
諦めるの早いな。
「簡単に逃がすわけないだろっ。」
渡良瀬葵が飛び掛る前に鏑木リナが
「とまりなさいっ」
全員。動きが止まる。
その隙きに2人は飛んで逃げた。
「っ。私達は動ける。」
渡良瀬葵の一言で、体を押さえていた力が解ける。
「くっ。あいつら。」
渡良瀬葵が悔しがっている。
「あいつらグローブも填めないで。」
グローブ?ああ変身アイテムね。
「変身なんてしないっ。」