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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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それは入学式の日。

ちょうど一年前、僕は皆と出会い、事の始まりを知った。

二年生の始まるこの日、3人の少女が「完全に巻き込まれて」しまった。

1人は妹の市野萱友維。

そして双子の姉妹。鏑木華奈と鏑木莉奈。

彼女達3人が巻き込まれたのはそれなりの理由がある。

新入生を迎え入れる式典と同時に、新たにこの学校に赴任する教師の紹介が行われ、

海外から日本で言う「教育実習生」として1人の男性が校長により紹介された。

「彼はオーストリアから来ました。センドゥ・ロゼ先生です。」

細身で背が高く、モデルじゃないかってくらいイイ男だ。

女子生徒がザワつくのも判る。

何処かで聞いた事があるような?映画とか小説の登場人物だっけ?

「あれ人じゃないわ。」

どれ?

魔女達は海外からの実習生が「人ではない」と言い出した。

彼女達は揃って僕に注意するようにと言った。

「薫ちゃんに聞いてみましょう。」

確認するのだが

「中々イイ男だろ?まあ心配するような事はないだろ。」

と笑った。

知っていて言うつもりが無いのが丸わかりだ。

魔女達はさらに問い詰めようとするが、

判りました。先生がそう言うなら。と皆を制した。

だが次の一言は僕を不安にさせるには充分過ぎて泣きたくなった。

「そんな事より来週からしばらく他所の学校行ってくるからな。」

「三か月か、場合によって半年間。」

離島の学校の教師が産休を取るとかで、あまり忙しくない2年生の担任である彼女が選ばれた。

この人は、僕を、僕達を見捨てるのか?

そこで実習生が名目上担任になる。勿論補助は付くが何よりの研修になるだろうと本人も承諾したそうだ。

HRでは終始お互いがにこやかに引き継ぎをしていた。

人当りも良さそうで、警戒する必要なんて本当に無いようにも感じた。

早速女子生徒が集まり質問攻めだ。他所のクラスからも結構な数の生徒が集まっている。

碓氷先生と話をしたかったのだが彼女もその輪の中に取り込まれてしまっていた。


正直に言って僕は実習生の事にそれほど関心は持たなかった。

この時少しでも考えていれば鏑木姉妹が態々転入してきた理由が判った筈だ。

それよりも、転入してきたばかりの鏑木リナさんがずっと不機嫌だったので

僕としてはその事ばかり頭にあって、実習生の事なんてどうでもよかった。

「なんで私だけ。」

鏑木リナは隣のクラスになった。

「私も一緒ですよ。」

藤沢藍も、隣のクラスになった。

「アンタはいいでしょ。家に帰ればずっと一緒なんだから。」

「そうですね。なんだったら昼間会えない分、夜に燃えるかも知れませんね。」

「なっなっ何言ってるのよっ。」

「何って本当の事ですよ。今夜が楽しみですね。」

「カナっ今日からコイツんとこ泊まるわよっ。」

「もう何言ってるの。」

「それよりロゼの男の話はどうなったんだよ。」

友維は彼を知っている?

碓氷先生の代理の担任になったよ。

「マジで?大丈夫なの?」

良さそうな人だったよ。ねえ。

「どうかなぁ。直接話してないから何ともね。」

蓮さんは明言を避けるが警戒はしている。

もっとも間違っても周囲に集まった女子達のようにはならないだろう。

「私は元々あのテのタイプは苦手だから。」

と葵さんは言った。どんなタイプの事を言っているのだろう。

カナさんはもっとあからさまに実習生を拒絶した。

「怖い。」

とまで言った。

「前に話した筈だぞ。」

友維は彼を知っている。

「私はアイツ嫌い。怖いと言うか、恐ろしい。不気味だ。それにイヤな匂いがする。」

どんな匂い?

「血だよ。血の匂い。」

紹実さんは「心配ないよ。」と笑ってくれた。

「私はアイツをよく知っている。アレは必ず理緒を守る。」

「まあ心配と言えば少々やり過ぎる事かな。」


考えて見れば碓氷先生が何の根回しも無しに動く筈がない。

彼女の出発前日、僕は1人彼女に呼ばれ

「あの代理教師の事は心配するな。」

と改めて言われた。

「だけどいいか。お前が魔女達を守るんだぞ。」

どういう意味ですか。

「アレはお前の味方だ。だが必ずしも魔女達の味方とは限らない。」

意味が判らない。

「言葉通りだよ。アレは理緒を守る。そのために魔女達の事を邪魔だと思ったらどんな事するかまで判らない。」

同じ目的だが手段が異なる。でもどうしてこんなタイミングで。

「紹実さんから聞いたんだ。」

離島への代理教師なんて話は無い。

彼女は利根先生と共にベルギーに向かう。

入れ替わるように「紹実さんの信頼している者」を呼んだ。

そんな遠くまで危険を冒して僕のために。

「待て。違うぞ。私が頼んだんだ。紹実さんの代わりをさせてくれって。」

頼んだって、誰に。

「おまえの母親。紬さんだよ。」

「話をしたら是非来てくれって言われたんだ。」

「あの市野萱紬が私を必要としてくれているんだ。これは誇らしい事なんだぞ。」

その言葉に嘘は無かった。

碓氷薫は、その昔市野萱紬に救われた。

「あの人に出逢っていなければ、私はいないんだ。」

魔女としてどころか、1人の人間として本当に死んでいたかも知れない。

もしかしたら誰かを殺していたかも知れないとまで言った。

利根先生は、そんな碓氷先生の気持ちに協力しようと「一緒に行く」と言い張ったらしい。

僕の母は当初紹実さんを呼び寄せようとした。

そして紹実さんは僕を碓氷先生に託そうとした。

「薫ちゃん。しばらく理緒を頼む。」

碓氷先生は、紹実さんが「旅に出る」と言って驚いた。

「紹実さんが理緒の元を離れてどうするんですか。」

魔女たちもいるから心配無いだろうと言った紹実さんに

「理緒だけならともかくあんなじゃじゃ馬ども面倒見切れませんよ。」

「私が行きます。紬さんには世話になってますからね。」

そうか。それじゃ送り出す言葉が違うのも当然だ。

ありがとうございます。お土産は本場のワッフルでお願いしますね。

「おう。任せろ。」


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