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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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1時間以上も話し込んでしまった。

「ちょっと先行ってろ。すぐ追い付くから。」

車の鍵を渡された。

「他の先生にも挨拶しておかないとな。」

女子校の中を男子が1人で歩くのってドキドキするな。

事務室で一応話をして車で待っていると

すぐに戻って来た。

他の先生には挨拶なんてしてないのが一目瞭然だった。

あー、カオルン。

「やめろっカオルンて言うな。あいつらの前で」

そんな事より今度からヨシノンと口紅の色合わせたほうがいいですよ。

「え?なっ。」

慌ててルームミラーを見て手で拭いだした。

あーもう。ハンカチを差し出すと

「す、すまん。」

運転する前でよかった。

「洗って返すから。」

いいですよそのままで。他の皆に話すのに証拠が

「絶対洗って返す。お前言うなよっ。」

そんな約束できませんよ。

それより利根先生にも電話なりメールで教えてあげないと。

「そうだな。あ、いや面白そうだから黙ってよ。今日帰ったら聞く。」

利根先生もどうしてこんな人に惚れたかな。

「なんだと。結果教えてやんないぞ。」

教えるつもりだったのかよっ。

「折角恋人紹介したんだから自慢させろよ。ノロケさせろよ。」

もうお腹いっぱいです。それより、ちょっとまじめな話しますけど。

「なんだ。」

僕が抱いた危惧は、利根先生がどうやって委員会と接触したのか。

母がその委員会を探る過程での事。

ドイツだかベルギーの魔女が敵方の委員会に潜入しているからこそ伝わった話。

間に数人挟んで日本で活動する委員会の人物を特定。

接触し「魔女狩りをしているなら仲間に入れて。」と頼む。

「あなたたちは魔女を撲滅させたい。私は私以外の魔女の存在を認めたく無い。」

利害関係の一致。

「お互いが信用する必要は無い。」と碓氷先生は言った。

「本当は私が自分でその役をするつもりだったんだ。」

「でもカオルンは表に出ない方がいいわって言われて。」

心配だろうな。恋人を敵地に送り込んでいるのだから。

「全部終わったら結婚しよう」とか言ってないだろうな。

「ヨシノンに何かあったら私が委員会をぶっ潰す。全力で。」

へいへい。

「なんだそのリアクション。」

何かあったらって、何も無いように整えてしかも何かあってもいくつか策があるんでしょ?

「お前そんなんは判るくせに何で女心が判らんかな。」

ほっとけ。

判らないのは男女関係無い。

先生は気付かなかったのか、気付かないフリをしてくれたのか。

僕はあえて車中で「利根先生と委員会とのファーストコンタクト」を聞いた。

碓氷先生の策でなく、利根先生が個人的に「委員会」との接触があったと聞かされた場合、

僕はこの人を無条件で「敵」とみなしただろうから。

利根先生はイイ人だった。

第一印象の通り、とても「敵」には見えなかった。

放課後、皆と碓氷先生も交えて全て話した。

カオルン、ヨシノンの事と口紅の事は黙っていた。

これは最終兵器だ。


もうすぐ奇妙な1年が終わる。

何かが始まったが、何も終わってなんてない。

短い春休み、新学期はすぐに始まる。

友維は高校入学を前に小室さんの道場に通う事になった。

今のままでも充分強いと思うけど。

「年末年始に皆で修行しに行っただろ?」

うん。

「黙ってたけど姉ちゃんたち変わったよな。」

そう?

「本人達に言うなよ?姉ちゃん達、前よりずっと強くなって帰ってきて、」

「あの人にどんな修行つけてもらったんだって気になったんだ。」

「で、その後様子見に行ったら普通の道場じゃん。」

「だからいかにも素人みたいな感じで聞いたの。」

「強くなりたいんだけど高校生からじゃ遅いですかって。」

何て言われたの?

「情熱と覚悟次第。て言われた。」

おお、いい事言うな。

「しかも経験者なの見抜かれた。」

他の魔女に何か聞いたのかって聞いたけど聞いて無いって言われて、

それじゃどうしてって聞いたら

「立ち姿で判る。て笑われた。」

「正月会った時はモデルさんみたいでホントに強いのかこの人とか思ったけど、」

「手を合わせて判った。あの人はヤバイ。」

ヤバイって何。

「あれは化物だ。」

知ってる。でも本人には言っちゃダメだよ。

「・・・もう遅い。」

傷付いたろ。

「魔女のがよっぽど化物だって笑われた。」

僕達は今年になってからずっと、週に1,2回程度道場を借りている。

子供達の自主練習に混ざって、高校生が「ああだこうだ」と体術の基礎を練習していた。

基本的には小室さんは口を出さない。

「あくまで自主的な練習で道場を貸しているだけだからな。」

ニヤニヤしながら眺めているだけだ。

「指導受けたいなら正式に入門しろ。」

この誘いに魔女達はとてもとても苦い顔だけで拒否を伝えた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 『敵』の正体が、まさかの……。 物語が大きく展開してきた気がします! うおおお。燃えますっ!! 頑張れ理緒くん!!
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