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「何を言ってる。お前以外にアイツらを守ってやれる奴なんていないんだぞ。」
「そうね。理緒君の事は私もカオルンも守ってあげられる。でもあの子達にはあなたが必要なのよ。」
どうして。
「それはあなたが男の子で、魔女だからよ。」
意味が判らない。皆僕より強い。
いちばん弱っちい僕の言う事なんて聞きやしない。
「いや、皆お前の言う事なら聞く。もう知ってる筈だぞ。」
知ってる?何を?
「お前の額に祝福の印を付けたのは何の為だと思ってるんだ。」
やっぱりお前の仕業かっ
一体どうしてあんな事を。
「魔女達の本意を知るため。」
「嘘っ。面白そうだからって言ってたじゃない。」
「うっまあそれはそうだけど。」
なんだと。
「ま、待て。面白そうなのは半分だ。いやもっと少ない。多いかもしれないが。」
「とにかく魔女がお前に惚れているのを確認させたかったんだ。」
誰に。あ、僕にか。
「前にあいつらの事は好きにならないようにしているって言ったよな。」
「でもあいつらはお前の事好きなんだぞ。」
「だから守ってやれ。」
いやいやだからって簡単に僕なんかに守られるようなタマかい。
「何言ってるの。お姫様はいつだって王子様に助けられたいのよ。」
この場合誰が本当に王子様に相応しいのかって事だ。
僕なんかより桃さんあたりのが似合いそうだよな。
「カオルンも私の王子様よね。」
「ばっ、そんなん今言うなっ」
完全に弄ばれているカオルン。
もう1ついいですか?
「うん?」
「どうしてこのタイミングで全部教えてくれたんですか?」
2人は顔を見合わせて笑った。
「言っただろ。お前を守るのはあの魔女達だけじゃないって。」
「また1人で何処か行かれても困るからね。」
ああそうか。
僕の決意を知った碓氷先生の取り計らい。
本当なら、利根先生は「敵」として認識させたままでいたいのだろう。
それを僕が台無しにしてしまった。またしても。またしてもだ。
ごめんなさい。
「謝るなよ。黙ってて悪かった。こっちこそゴメンな。」
先生が黙っていたのは僕を守るための手段だ。
だが僕のはただの我儘だ。傲慢と言ってもいい。
僕が子供で、浅はかで、愚かで幼稚なだけ。
いえ、ありがとうございます。本当に。
利根先生。
「うん?」
僕が知る限り、彼女が一番危険な場所に身を置いている。
本当に危なくなったら、僕を売ってください。
僕は本気だった。その覚悟はとっくに出来ていた。
お願いします利根先生。碓氷先生も。いいですね。
約束してください。出来ないのであれば、また1人で事を進めます。今度こそやり遂げます。
元々そうするつもりで準備してきたんです。
これは約束なんかではない。脅しだ。
2人はそれを判ってくれた。果たされる事は無いだろうが約束はしてくれた。
僕の気が済むなら。とかそんな程度の気持ちなのだろう。
「あーこれかーカオルンが言ってたの。」
「うん?何か言ったっけ?」
何言ったんだこの人。
それにしても態々他所の県にまで行って魔女狩りするなんて大変だろう。
と利根先生に言ったら
「別に?カオルンと旅行してるだけだから。」
とノロケた。
とは言っても相手の魔女に対しても相当気を使ったやりとりが必要になる筈。
その魔女個人の資質によっては全てを打ち明けるか、隠すかしなければならない。
「今のところは全員に「狩られた事にしなさい」ってちゃんと話てるわよ。」
だからこそその友人達が僕の元まで現れた。
利根先生が「狩った」魔女は現在までは全員知り合いだった。
そうでなければ知らない場所で魔女なんてそうそう見付かる筈も無い。
問題は、そろそろ「ネタ切れ」になる事だと言った。
魔女が魔女を見付けられるのは、その対象が魔女として活動している瞬間のみ。
そうなると当然「指輪」の必要性が増す。
勿論、指輪を填めたところでその効果は変わらない。
やはり魔女として活動している場合にしか見付けられない。
だが教師が休日にウロウロ探すよりも
専任で、しかも外部から人を雇う必要が無くなる。
不慣れではあっても信用度は高い。
どの程度の規模なのか判らないが、判らないからこそ注意はしておかなけばならない。
利根先生が指輪の件を任されているとは言っても
委員会がそれを几帳面に守って静観する保証なんてどこにもない。
もっと言えば、指輪を手に入れさえすれば利根先生の利用価値はまるでなくなる。
「理緒、お前は何もするなよ。」
碓氷先生は僕がまた「良からぬ事」を考えているのを察して先に制した。
彼女が策を練り、利根先生は敵の懐にいる。守護者達は神経をすり減らす。
それでも僕に何もするなと言う。
「お前は何もしない事をしろ。普通に学生をしていろ。青春を楽しめ。」
「何だったらそれが一番辛いんじゃないか?」
と笑ってくれた。
「理緒、今までお前の唇を狙いに来た魔女達の連絡先って控えてるのか?」
勿論です。お互いの連絡先は交換してあります。
こちらからは事態が解決したら連絡すると言ってある。
相手側からは何かあったらすぐに連絡するように言ってある。
「よし。これからはその子達を狩る。」
「理緒からも話をしておいてくれないか。」
証拠作りに協力してもらうわけだ。
もしかしたら碓氷先生はこの事まで想定して噂を流して僕の元に魔女を集めたのか?
「リストとかあるか?」
はい。家のPCに。後で送ります。
「いや、データ直接くれ。USBでもSDでもいいから。」
判りました。
そのリストにつけたパスワード
KissOfWitch




