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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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最初から全て「賢者」と呼ばれたこの魔女が仕組んだ事だった。

「ホント策士よねぇ。」

紹実さんから依頼された碓氷先生は恋人の利根芳乃に協力を仰いだ。

「今年の入学生にどうやら活きのイイ魔女が2人いる。」

僕達を相手にイロイロとちょっかいを出したのは

僕を守る魔女達の力量を計るためだと言った。

(同時に鏑木姉妹も鍛えられる)

だが腑に落ちない。

それなら態々「敵」としてではなく協力者になればいい。

それにあの時ヨシノンが直接表に出てくる理由はなんだ。

「だからお前がヨシノンて言うな。」

カオルンに怒られた。

「結構鋭いとこ突いてくるのね。それじゃもしかしてある程度予想もしていた?」

いえ、お二人が知り合いなのは全く考えていませんでした。

碓氷先生に話をしても知らないふうだった。

今日ここに来ることになったのもあくまでも「他校の先生同士」の打ち合わせ程度だと思っていた。

それに関してはまんまとカオ碓氷先生に騙されました。

「それじゃ話戻すけど、理緒君の腑に落ちない理由の答えも見当ついてるんじゃない?」

今の今まではその可能性は完全に無視していました。有り得ないと思っていたから。

でもお2人が恋人だと聞いて無い話じゃないと今思い至りました。

「どんな事?」

ヨシ、利根先生は委員会と繋がっている。

「すげぇなお前。」

「カオルン言葉遣い悪いわよ。子供の前で。」

「いっ。」

「前から言ってるじゃない。2人きりのときはともかく生徒の前なんだからもう少」

「今言うなよっ。」

何をイチャイチャやってるんだこの2人。

「どうして判ったの?」

簡単な話だ。推理と呼ぶ程でもない。

利根先生は敵として現れた。僕達の敵は最初から「委員会」と呼ばれる存在だ。

魔女が「魔女を狩る者」と結託する理由は無いと思い込んでいた。

だが、魔女を狩るなら魔女を見付けられる者を利用すべきだ。

(普通の人が魔女を捜す手段として「指輪」を欲しているのだから)

鏑木姉妹は既成事実を作るためのヨシノンの仕込みだとすれば全て納得できる。

判らないのは利害関係。

利根先生の建前上のメリットは?

日本中の魔女を手中に収める事とかそんな感じ?

利根先生は委員会が魔女狩りをしているなんて知らない事になっているのではないか。

「惜しいっ。」

「私はコレクターなの。」

魔女の使う変身道具を集めて眺めて悦に入る。

「それくらい雑な設定のがリアリティあってイイのよね。」

「大きな組織に裏切り者として加わるには個人的な動機じゃないと怪しいからな。」

委員会からは「最後に始末すればいい」程度に思わせる必要がある。

つまりアチコチで魔女狩りしてるのはこの人で、それこそ「既成事実」の作成。

「おお、本当に凄いわね。いつ判ったの?」

あの2人が知っていたから。利根先生から聞いたのだとしたら本人はどうやってそれを知った?

あの時も利根先生と話をしたかったのだが皆がそうさせなかった。

「結構ギリギリだったのよ。」

何が?

「あなたの指輪。」

委員会は指輪の所在を既に突き止めていた。

指輪を奪い取る算段までされていた。

そこに利根先生が割って入った。

あのショッピングモールでの4人の大人達。

あの後、その4人は碓氷先生曰く「舞台からご退場いただいた」ようだ。

怖くて方法や手段は聞けないが記憶の一部を別の何かに上書きしたらしい。

利根先生が委員会に、退場させたのは僕を守る魔女達の仕業だと報告した。

かなり手ごわい魔女達でそう簡単に奪えない。

他に誰が手に出しても返り討ちに合うだけよと脅した。

そして「指輪の事は任せなさい」と委員会を言い含めた。

「第一私がいればそんなもの要らないでしょ。」

と、怪しまれないためにも適当な時期に魔女を狩って実績を作る。

それもこれも全部碓氷先生の計画だった。

委員会の存在を確認しているのにどうして直接対決しないの?

「まだその全容は掴めないから。」

「やっぱりソレも話すの?」

「うん。話す。全部話す。覚悟して聞けよ理緒。」

今までの穏やかな空気が一変した。

「委員会ってのはな、私達が予想していたよりも大きな組織が後ろにあったんだ。」

僕の知っている話は、父の勤めていた製薬会社の一部署くらいだった。

「そうじゃない。逆だ。委員会の一部がその製薬会社の部署なんだよ。」

「お前与党とか野党って意味知ってるよな?」

まあ高校生ですから一応は。その意味だけなら。

「じゃあ超派閥て言葉も知ってるな?」

ちょっと待ってください。その言葉も知ってます。いやそうじゃなくてそれじゃ相手は政治家って事?

「そうだ。正確には政府の、国の部署なんだ。」

国が、魔女を狩っている?

「勿論一部の連中だぞ?組織が公表されているわけじゃない。」

それが国家公安委員会の略なのかそれとも他の行政委員会に含まれているのかも判らない。

一部の政治家が、何を根拠に、どう具体的に指示ししているのか判らないが

「日本の魔女を撲滅させよう」と動いていると言うのだ。

表立っていないのは、その存在の特異性によるのだろう。

そもそもが「魔女」を認知したところでそれは「差別」に繋がりかねない。

国家や国民に大きな不利益を与える存在である証拠などどこにもない。

何より、「魔女」の存在を本気で信じる人がどれほどこの世にいるだろうか。

僕に接触した4人についても

「魔女に記憶を上書きされた」なんて戯言誰が信じる?

本人達は「魔女狩り」をしているだなんて思ってもいない。

「それは何かの暗号ですか?」だとか言われるのがオチだ。

「漫画の読み過ぎ」「映画の見過ぎ」だとか、ヘタすると政治家生命が終わる。

指輪の事を任されているから当面僕個人の心配はしなくてイイ。

「だけどいいか理緒。これからはお前が皆を守るんだぞ。」

「くれぐれも勝手な行動をさせるな。無暗に魔法を使わせるな。突っ走ってしまうのが怖い。」

桃さんがいつか言っていた。

「そんな組織ぶっ潰す。」

どうやって?その委員会って組織の人全員殺す覚悟はあるのか?

相手を傷付けて脅すのか?

「お前しっかりアイツら躾けろよ。暴走したら責任持って止めろよ。」

無理。



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