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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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春休みに1人で「指輪を捨てに行く旅」に出るつもりは無くなったが

だからと言って何もしないわけじゃない。

僕なりに事態の解決には努めたい。

皆に怒られるのを承知であの女性に会いに行くと言った。

驚いた事に皆賛成してくれた。

でも「1人で」と付け加えると途端に怒りだした。

「どうして1人で会いたいの。もしかして惚れた?」

そんなんじゃないよ。

1つは皆が一緒だと大人しく話し合いの席に着かない可能性が高い。

もう1つ。僕は入院中の夢の話をした。

見知らぬ部屋で介抱された夜の夢現な体験。

あの時、あの人は殊更「自分は敵だ」と言った。

どうしても引っ掛かる。

蓮さんも言ってたよね。鏑木姉妹と遊んでいる時の違和感。

「うん。おかしいでしょ。態々皆揃っているところに現れて一騒動起こして退散だなんて。」

狙いは「指輪」だと言った。同時に「僕を傷つけないように」とも言った。

指輪が必要なら持ち主なんてどうだって構わない筈だ。

指輪を失った僕がどうなるのかなんて知っている筈が無いのだから

そんな心配をする必要は無い。

もっと大勢で取り囲んで魔女達の動きを封じてから指輪を奪えばいい。

本気で指輪を奪うつもりがあるなんて思えないじゃないか。

何よりも

「噂」の真実を知っている鏑木姉妹を未だにけしかけている理由。

今や彼女達は「指輪をよこせ」とは言わない。

それなのにどうして?

グダクダと言い訳をしたがこれは建前。

事実は皆には言わなかった。

反対されればそれまでの話だったのだから言う必要はない。


学校を休んで寝込んだ月曜日の夜、鏑木カナさんから連絡があった。

「先生が会いたいって言ってますよ。」

なんでどうして?

「実は昨日一緒に映画に行った事をリナがつい。」

自慢したのか。

「理緒君が先生に会いたがってるって話をしたらそれじゃ会いましょうって。」

先生の名は「利根芳乃トネ ヨシノ)

3年の担任なので卒業式が終われば体が空く。

日時は追って連絡する。

「ただその、1人で来てくださいって。」


3月に入ってすぐの事だった。

卒業式から4日経った平日。1年生の僕には何の変わりも無いいつもの日常の1日。

皆と学校に行って、授業を受けて、昼休み。

碓氷先生が教室に来て

「おい魔女っ娘共。」

「だから教室で魔女っ娘って言うな。」

「共でひとくくりにもするな。」

「黙って聞け。今から理緒借りるぞ。」

どうして本人に都合聞かないかな。

「借りるってどうするのよ。」

「ちょっとデートだ。」

切羽詰っているでもない、何だったらチョット笑ってさえいた。

いつもの事だが何処まで本気なんだこの人。

車に乗ると午後の授業の欠席は伝えてあるから

後で補習受けろと言われた。

「何処に行くのか聞かないのか?」

女子校。

「すげぇ何で判った。やっぱりエスパーだなお前。」

推理しただけだ。条件イロイロ重なって他に何かあるのか?

だがこの後、僕は全く予想していなかった衝撃の事実を知る。


事務室で「碓氷と申します。利根先生と約束しておりまして。」

等々話をして、案内されたのは進路相談室だった。

午後の授業が始まっているのだろう。廊下には誰もいなかった。

3年生が卒業したのでこの部屋はしばらく使われる事は無い。

それにしても応接室とか職員室じゃなくて態々こんな部屋に通されるなんて。

程なくしてドアがガチャガチャ鳴るが開かない。外から鍵でも掛けようとしているのか?

「ごめんチョット開けてくれる?」

ドアを開けると利根先生がお茶を持って立っていた。

「ありがとね。」

え?いえ。

とてもフレンドリーな感じがするのは何でだ?

「じゃあ座って。」

促されるままに座る。戸惑っていると

「予定より早かったわねー。」

「まあこんなもんだよ。」

何?

どうして2人で「当たり前のように」会話をしている?

「でもカオルンだって1年生のうちには無理かもなーなんて言ってたじゃない。」

「生徒の前でカオルン言うな。カオルンとヨシノンて呼ぶのは2人だけの時にしろって。」

カオルン?ヨシノン???

ただの知り合いだとか教師同士だとか

そんな程度の繋がりではない。

もしかして僕は取り返しの付かない事態に陥ったのか?

碓氷薫と利根芳乃は、最初から僕を嵌めて指輪を

いや、それもおかしい。こんな機会を作らずとも奪う事は出来た筈だ。

何がどうなっている?

「すっごい戸惑ってるわね。」

「そりゃそうだって。心配するな。2人とも味方だから。」

何?

「あら私は敵だって言ってるじゃない。」

「この期に及んで混乱させるような事を言うな。」

「何よカオルンがそう言えって言ったんじゃない。」

「だからカオルンて言うな。」

頼むから話進めてくれっ

ヨシノンは改めて自己紹介をした。が名前だけ。

「利根芳乃よ。あの子達から聞いてるでしょ。」

「さあ何でも聞いて。」

えっと、じゃあうちのカオルンとはどのようなご関係なんですか?

「お前がカオルン言うなっ。」

「カオルンとは恋人よ。」

恋人?

「ええ。」

恋人?

「だからそうよ。」

そうなの?と碓氷先生を見ると照れながら

「そうだよ。」

どうやら本当のようだ。

つい、

勿体ない。と口にしてしまい

「どういう意味だこの野郎。」

と碓氷先生に怒られた。

この後イロイロと驚くべき事実を知るのだが

これに勝る驚きは無い。



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