06
どうにも寝心地の悪い枕に目が覚めた。
白い枕や白いシーツ。白い布団。そして白いカーテンに囲まれている。
病室?
頭が働かない。
「あ、起きた。」
少し開けられたカーテンから覗いたのは多分神流川蓮。
「皆呼んでくる。」
神流川蓮。藤沢藍。渡良瀬葵。それに紹実さん。
どうしたの皆揃って。
「どうしたのって。アナタ3日も眠っていたのよ。」
そんなに?
「嘘を言うな。」
え?
「2時間も寝て無いよ。」
は?どっち?何?
「何でそんなすぐバレる嘘吐くんだ。」
「よくあるじゃないそーゆーの。1度言いたかったの。」
何なんだ一体。
それよりここ何処?病院ぽいけど。
「アナタ、何も覚えていないの?」
「それも言ってみたかったんだな?」
「てへっ。」
まあ実際ここにいる理由は判らない。
何がどうなったんだっけ?急に倒れたとか?
何してたんだっけ。
ああ、買い物に行って、それから
え?
ある。
左腕は付いている。動く?動いた。右手で触るが感触はある。
何がどうなった。
「あの人が私達に結界を張ろうとした所に貴方が飛び込んだのよ。」
神流川蓮の説明。
結界は座標を指定してその場で適切な形状になるよう調整する。
(だから空間把握能力と数学的な図形の理解度が高くないと出来ない)
「建設中のビルに突っ込んで壊した。」
紹実さんが例えるのだが
「ちょっと違うような気がする。」
「説明ヘタですよね。」
左腕が消えたのはそう見えただけ。
あれ?じゃあ何で僕は病院で寝ている?
「理由は判らないけど原因は判るわ。」
はい?
結界が僕を包もうとした。
だが半身ほど消えた瞬間、「何故か」突然結界が弾けた。
その勢いで壁に打ち付けられ気絶した。
それで、その後は?
女性は4人の男性と共に階段を上って消えた。
「「その子に謝っておいてね」って言ってたわ。」
やっぱりあの人も指輪が目当てだったのだろうか。
「ちょっと呆けているのはあの人思い出してうっとりしてるから?」
神流川蓮は何が言いたい。
「どんな人だったんだ」
「歳は薫ちゃんと同じくらい?もう少し若いか?」
「結構美人でしたよ。」
「胸がでかかった。」
「へぇーそうなんだー。」
何で一斉に僕を蔑む。
念のためにと寝ている間にCTも取ったが異常無し。
本来なら今日1日はこのまま病院で寝て、何もなければ朝一で退院して学校に行く。
のだが、指輪の警備に支障が出るからととっとと退院させられた。
守るだの何だの言ってるくせに扱いが雑だな。
病院からの帰り道。
誰か回復系の魔法とか使えないの?パパッと治してくれると楽なのに。
「何よその忍法医者要らずみたいな魔法。」
忍法なのか魔法なのか
「大昔には魔女の調合する傷薬はあったみたいだけど。」
元々魔女の出所は医者やら祈祷師やらだったな。
「日本でもあるじゃない。よもぎくちゃくちゃやって塗るの。アレよ。」
「口に含まなくてもイイのよ。揉んで汁付けて葉っぱ乗せるの。」
「でもむしろ雑菌の心配あるからそこらのよもぎ摘んでとかやめなよ。」
「そうそう今は普通に傷薬売ってるしね。」
そんな話をしていると突然神流川蓮が僕の腕を殴る
ドスン。とグーで、結構強めに。
「いたっ」
自分で痛がるくらい強く殴ったのは何でだ。
「殴れるわね。」
何を?
「もう止めなさいよ。あんな事するの。」
殴った人が言う台詞かそれ。
「私達がアナタを守るのよ。」
「そうだ。お前は大人しくしていろ。」
ああさっきの事か。ちょっと雲行きが怪しかったからつい。
「本気出してませんでしから。」
そう言えば変身するんだっけ。
「変身て言わないで恥ずかしい。」
変身しないと魔法使えないんじゃないの?
「使えるわよ。って変身なんかしないっての。」
「お前は私達を何だと思ってるんだ?」
魔法少女への夢を捨てきれない女子高生?
「やめてくださいそんなイタイ設定。」
「変身なんてしなくても魔法使えるのよ。いや変身なんてしないからっ。」
「とにかく、余計な手を出さないで。」
それは無理だ。
「無理って何でよ。」
僕を守ろうとしている女の子達が危険な目に合っていたら何がどうなったって助けようとするよ。
「そんなに恰好イイもんじゃありませんでしたよ。」
「そうよ。コケたようにしか見えなかったわ。」
その日からだと思う。
僕を守護する3人の魔女は僕を名前で呼ぶようになった。