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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
5/141

05

「それで?聞きたいことって何よ。」

髪が長く、上か目線の子がリーダー格なのだろう。

かなり警戒していたのだが

結局はペットボトルの紅茶を受け取ってくれた。

ずばり、どうして指輪が欲しいのか。

「それはとっても貴重な指輪なんですよ。」

丁寧に話すこの子も何がどう貴重なのか判っていないようだ。

「アンタの側にいた三人だって指輪を狙ってるんじゃないの?」

あの子達は指輪の守護者だよ。

「やっぱりー。だから言ったじゃない。襲わなくて良かったでしょ。」

「指輪を手に入れるならどのみち敵でしょ。」

敵?

「ってアンタ今一人なのね。」

まあそうだね。

二人の目の色が変わった。


やばい。のかな?


「私も紅茶でいいわ。」

「私はアイスがいい。しろくま。」

「え?アイス有りなの?」

「奢りなんだから商品は何でも構わないだろ。」

神流川蓮。藤沢藍。渡良瀬葵。

「アンタ達が守護者ね。」

空気が震えたのが判った。

「だったら何?」

神流川蓮が一歩前へ出る。

「こんなところで近所迷惑だろ。」

渡良瀬葵が呆れる。

「いいじゃないですか。やるなら私が外に漏れないように閉じますよ。」

藤沢藍が煽る。

「まったく。」

渡良瀬葵が睨み合う2人の間に割って入り

身構える相手に向かい

「こんな時間に騒がしいのは迷惑だよな。」

「そうね。確かに迷惑ね。」

「今日はおとなしく帰るよな。」

「今日はおとなしく帰るわ。」

オウム返しに繰り返す。オビ・ワン・ケノービか。

言われたまま繰り返しそれを実行している。

「お茶ごちそうさま。」

「またね。」

文字通り、何事も無かったかのように引き上げた。

その後ろ姿を見送って

「で?誰がお説教するんだ?」

「3人でしましょう。」

「順番決めるの面倒だから一斉にするか。」

「私アイスで手打ちにしてもいいわ。」

「それだ。」

今持ち合わせないから一度帰ってからで良ければ。

「でも今日はもう遅いから明日にしましょう。」

翌日の下校、途中コンビニでアイスを奢らされた。


週末。

下宿に必要な小物や早めの夏服をとショッピングモールに行く。

一度紹実さんと来た以来だ。

折角の休日、僕は工房で作業を

「毎日籠もっているとカビるわよ。」

神流川蓮に脅され半強制的に外に引っ張り出された。

「制服と作業着以外を着ているのを始めて見ました。」

藤沢藍の指摘を受けるまでもない。

それ以外の服は殆ど着ない。必要が無い。

平日は工房で過ごす。着飾る必要は無い。

魔女3人が夏物を漁るのに付き合うのも疲れた。


トイレへの通路の脇に階段があって、その脇を通り過ぎようとした時だった。

「御厨理緒君だね。」

後ろから男性の声。振り返ると2人、トイレからも2人。

僕が1人になるのを待っていた?

「トイレならそう言ってください。」

「勝手に消えるな。」

藤沢藍と渡良瀬葵が2人の男性のその後ろに現れる。

オカシナ画だと思う。

トイレ近くの2人も、通路手前の2人も

それぞれ見えない壁に手を触れて「壁のパントマイム」を演じている。

間に僕がいて、遠巻きに3人の女子高生。

何がどうなっているのだろうと考える間も無く

脇の非常階段上から1人の女性が降りてくる。

怪訝な顔をしていてもおかしく無いはずなのに、少し呆れているような?

「んっ。」

藤沢藍がその女性に何かをした。何をしたのかは判らないが腕を伸ばし両掌を女性に向けている。

「あら。」

女性は肩のホコリを払うかのような仕草をする。と、風が舞った。何が起きた?

女性は歩みを止めなかった。

「御厨。こっちへ来い。」

渡良瀬葵が僕を呼ぶ。だが

「君はそこに居て。」

女性がそう言ったので僕は動かなかった。

「動くな。」

僕にではない。渡良瀬葵が命令したのはその女性にだ。

「嫌よ。」

彼女は拒否する。

まだ歩みを止めない。

「藍ちゃん。」

神流川蓮の目配せに藤沢藍が頷く。

炎。

「火事になっちゃうでしょ。」

炎は女性に届く前に消えた。

「貴女達ちょっと邪魔ね。」

彼女が何をしようとしたのか判らない。

ただ右手を上げて、振り下ろす。

どうしてそうしたのか、自分でも判らない。

僕はその女性と、皆の間に飛び出した。

誰かが僕の名前を叫んだ。

女性は少しだけ驚いたようだった。

僕の左腕は、肩から先が消えていた。


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