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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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神社の朝は早い。

多分道場の朝も同様に早い。

寒い。

好き好んで冬休みに早起きはしない。

ジャージにコートを羽織り境内の端から端まで掃除。

竹箒を使って均すように静かに掃く。境内が終わると階段を一段ずつ履いて降りる。

暑くなってコートを脱いだ。

公園まで降りると体操している人がいる。

挨拶をして階段を登って、次は雑巾掛け。

本殿、拝殿、神楽殿。社務所、手水舎。目に見える全ての部分を拭く。

微温湯を使わせてもらっているだけ助かる。

それから朝食。8時過ぎてしまう。橘家の皆さん(橘さんと父親、佳純ちゃん)は食事を待っていてくれた。

明日はもう少し早く起きよう。

朝食のメニューはおそらく一般的だと思う。

ご飯とみそ汁。ほうれん草のおひたし。大根の煮物。焼き魚。卵焼き。

どうしてなのか精進料理が出るものとばかり思っていた。

朝食の後には橘さんが僕の頭を撫でて耳鳴りと頭痛を消してくれる。

一休みして橘さん親娘と一緒に3人で道場に行く。

そこにはもう疲れ切っている魔女3人。

僕も早速道着に着替えさせられる。

なんでだ?

「お前本物の引き籠りだったんだな。この3人はそれでも暴れまくってたの判るぞ。」

「あ、あ、暴れてなんて、いない。」

息切らしながら反論してる。

「蹂躙しただけだ。」

「判った判った。理緒。とりあえず姫に殴りかかってみ。」

蓮さんの戯言を無視しながら小室さんは何か言っている。

殴れって、えっとどうやっていいのか判りません。

当たり前だ。人なんて殴った事ない。

「まったく。」

小室さんはトトっと軽やかにステップを踏むと目で追えない速さでハイキック。

橘さんは息1つ乱さず本当に、文字通り「舞って」躱す。

「お、警戒してたな?」

「前にもこんな事したじゃない。」

なんだこの2人。何で笑っていられるんだ?

僕なんて今の2人の動きだけで全身に鳥肌立てているってのに。

「おまえ達も休みながら見ていろ。」

改めて小室さんが橘さんに襲い掛かる。

橘さんは軽やかに、とても柔らかく小室さんの手足を受け流す。

夏祭りに見た巫女さん達の姿が思い浮かぶ。

2人は離れ礼をして歩み寄る。

「絢ちゃん怖いよ。途中からちょっとムキになってたでしょ。」

「だって当たらないんだもん。」

「嫌よ痛いじゃない。」

「どうだお前達。見たか。」

見たと言うか見えなかったと言うか。

「うん。でどうだ。何か感じたか気付いたか?」

はい。2人共化物です。

「うんうん。」と皆が頷いた。

僕はただの冗談で2人を化物呼ばわりした。

本当に、ただの冗談だ。

でも小室さんはとても悲しそうな顔をして言った。

「理緒。私達を化物呼ばわりするのはいい。」

「でも他にとんでもない奴がいてもそいつを化物呼ばわりはしないでやってくれ。」

え?あ、はい。判りました。もう言いません。

「皆も頼むな。」

藍さん以外が頷いた。その藍さんは息を整えながら

「いいんですよ。私達だって化物みたいな者なんですから。」

「理緒君はその化物共のご主人様ですからね。」

小室さんは「そうか。そうだな。」と笑ってくれた。

いやいや僕はただの男子高校生だっての。

小室さんは橘さんの為に毛布と椅子を用意して道場の隅にあるストーブの前に座らせた。

「家で待っててもいいのに。」

「ここでいいよ。皆を見て居たいから。」

「姫が言うならいいけどその大丈夫なのか?」

「うん。最近は調子いいから心配しないで。」

そんな会話がちょっとだけ聞こえた。

戻った小室さんは僕と佳純ちゃんを呼んで防具一式を手渡した。

「ちょっと付けてやるから来い。佳純は自分で着けられるな?」

態々更衣室まで僕の手を取ったのは理由がある。

「すまない。」

更衣室で突然小室さんが謝った。

なんでしょう。

「これ(防具)を付けても多分相当痛い。打撲なんて当たり前のようにする。」

「もしかしたら骨折するかもしれない。」

はい?

「でも、お前を守る魔女達のために、生贄になってくれ。」

小室さんの目は本気だった。

彼女達を守るためなら何だってします。

「よし。良く言った。」

彼女が防具を一つずつ確認しなが装着してくれた。

少し膝が震える。

「私と姫の動き見ていたな?」

は、はい。

「姫の動きを思い出せ。」

「お前もただ殴られてるだけじゃなくていい。」

「反撃しろ。って言ってもお前の事だ防具無しの女子なんて殴れないだろう。」

「だから避けろ。躱せ。」

「全身の感覚を研ぎ澄ませて、相手の攻撃を受け流せ。」

そんな事言ったってなー。

格闘ゲームやって強くなったような気になるのと一緒じゃーん。

「すぐには無理だ。だが覚えろ。慣れろ。やるんだ。」

そんなー。昔のジャッキー映画だってたくさん修行するのにー

「お前なら出来る。」

何を根拠にー?


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