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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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病院だった。

紹実さんが迎えに来る前に検査は終わり、異常なしと診断された。

皆は学校で文化祭の片付け。

「皆には心配するなって言っといたけど」

「怒ってたぞー。」

「何で黙ってたのかって。」

「理緒だって文化祭台無しにしたくなんかないよなぁ。」

車の中では紹実さんが一方的に喋ってくれた。有り難い。

ごめんね心配かけて。

「そうだな。皆にも自分でちゃんと謝れよ。」

と頭を撫でてくれた。

「それで本人的に具合はどうだ?」

うん。何ともないよ。

咳は治まり胸の中の痒いような違和感も無い。

紹実さんはハーブティーを淹れてくれた。

今日仕事は?もしかして休ませちゃった?

「気にするな。有給貯まって困ってたところだから。」

「それよりお腹空いたんじゃない?」

いや、それがそうでもないんだよ。

僕は昨夜の話をした。

知らない部屋にいて、女性に介抱されていた。

胸や背中を摩ってくれて、それで咳が収まった。

スポーツドリンクとリンゴをいただいた。

「私は敵よ。」って言ってた。

「そう。」

何か心当たりある?

「いや。ごめん。」

姉は考え込んでいた。予想していた。想定した。準備をした。

「とにかく、今日はゆっくり休んで。」

そうなんだけどね、本当に調子いいんだ。少し動きたいくらい。

「まあ無理はしないで。ほどほどにね。」

うん。

彼女とこうして二人きりになるのは久しぶりだ。

日々が賑やかなので余計に静寂を感じる。

僕がこの屋敷に越して来て、「姉だ」と名乗ったあの日から

彼女はずっと僕を見守ってくれている。

本当の姉だったら、どんなに楽しい生活を送れただろう。

お昼、たまには僕が作るよ。

「お、何か久しぶり。」

何かリクエストある?

「じゃあオムライス食べたい。」

うん。巻き?トロリ?

「うーん。巻きで。」

午前中、僕は掃除や洗濯の家事をした。

外で動き回るよりも家の中なら万が一があっても目が届く。

空いた時間で広間で軽くストレッチをした。

紹実さんが背中を押してくれたり、腕を伸ばすのを手伝ってくれた。

久しぶりのオムライスは1つ目を失敗した。当然自分の分だ。

2つ目はコツを思い出して成功。彼女は喜んでくれた。

午後、少し眠るよう言われた。ずっと寝ていたような気がするからと言うと

特製のお茶を淹れてくれた。

居間のソファの背中を倒して用意してくれた毛布を被った。

目が覚めると陽は傾きそろそろ洗濯物を取り込む時間だ。

「寝てていいよ。」

手伝うよ。

「いやいや。あいつらの下着あるから。」

そりゃダメだ。

それじゃせめて皆の夕食の準備くらいしようか。

「買い物行かないとなぁ。あいつらに買って来てもらおうか。」

予想以上と言うか、全く予想すらしていなかったのだが

友維がとても心配していたらしい。

「ちょっと友維ちゃん靴っ靴。」

「ああっもうっ」

玄関のドアが開いた音が聞こえると同時にドタドタバタバタと廊下を走る音。

居間のドアが開く。友維が息を切らしてコチラを見ている。

ダッと飛び掛る友維。

ちょっ

鞄を放り投げ抱き付いた。

その勢いによろけるが紹実さんが手を添えて支えてくれた。

「まったく。」

と彼女も呆れているが、結構な力で抱き締めている。

ちょっと痛い。

「ふっ。ふぐっ。うっ。」

泣いてるのか?

ごめんね。大丈夫だよ。

友維の頭を撫でる。

皆が朝から大変だったと言った。「嫌な夢を見た」と言って

起き抜けに病院に行くと言いだした。

どうしても心配で蓮さんが態々病院に電話をして確認までしてくれたそうだ。

「だって変な夢見たからっ。」

友維は僕が浚われる夢を見た。

相手は判らないが眠っている僕に魔法を掛けて外へ連れ出し

大きな屋敷の地下室に閉じ込めたと言うのだ。

看護師から「まだお休みですよ。」と言われてようやく学校に行ったらしい。


まさか泣くとは思わなかった。

当の友維は宿題。紹実さんがその面倒を見ている。

この隙きにと言うと聞こえは悪いが

愚痴と言うより単純な感想を呟いた。

妹と言っても一緒に「いなかった」時間のが長いんだよな。

正直どう扱っていいのか判らない。

「何も考えずに扱えばいいのよ。身内なんだから。」

聞いてた?ずっと一緒にいなかったんだよ?ほぼ他人だよ。

「兄妹がずっと一緒にいたって、判り合えるとは限らないじゃないですか。」

珍しく藍さんの口調が冷たかった。

言葉そのものが冷たいのはいつもの事だが、口調は穏やかだった。

それが今回初めて心と言葉が同列にいた。

「何かあったのか?」

葵さんが聞いた。

「別に何も。」

「藍。話を聞いたところで私には何もできないだろう。でも、」

「お前の悩みや苦しみを分かち合う事はできる。」

「な、なんですか葵ちゃんまで理緒君みたいなキモチワルイ事言い出して。」

僕はそんなにカッコイイ事言えない。キモチワルイかもしれないけどね。

「何の自慢よ。ほら話なさいよ。スッキリするわよ。」

「と言うか聞きたいわ。むしろ今更話さないなんて言わせないわよ。」

「ホントにおかしな人達ですね。」


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