表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Witch  作者: かなみち のに
39/141

39

小さい頃から頻繁に寝込んでいた僕にとっては

この程度の発熱と身体のだるさは日常の一部でしかない。

それについ最近も神社で当てられて寝込んだばかり。

先日の「ハートの印」が指輪の効力を相殺させたのであれば

当然元々体の弱い僕がヘタるのも理解できる。

友維が必要以上に心配するのは今までの僕を知らないから。


文化祭初日は何とか乗り切った。

午前中に最終リハーサルが終わり、午後の自由行動は保健室で過ごす。

2日目。

登校したものの朝から眩暈に襲われ早々に保健室に向かった。

勿論皆にバレないよう慎重に。

保健室で寝ていれば落ち着くだろう。

クラスの演劇が終わり、碓氷先生が僕の不在に気付く。

保健室に現れた彼女に病院に運ばれてしまった。

医師の診断は「疲労とストレス」で「休養で自然回復するだろう」。

軽度の肺炎になりかけていると言われたものの

抗生物質を投与されるでもなく、栄養の点滴のみ。

碓氷先生に呼ばれた紹実さんと診断結果を聞き

念の為に一泊して翌日検査して異常なければ帰宅。のはずだ。

真夜中だと思う。

僕は、浚われた。


重傷患者でもない、明日退院する程度の僕が数分ベッドを離れたところで誰も何も思わない。

「トイレか」「喉乾いたか」「お腹すいたか」

カルテを見ても僕の年齢と症状を見ればそれくらいの想像しかしないと思う。

だからもしこの事で看護師達が責められるのであればとても心苦しい。

深い眠りだったのか、意識を失っていたのか、

どうやって運ばれたのかまったく覚えていない。

目が覚めると知らない部屋に居た。病院のパジャマのままだった。

だが紹実さんが退院用にと置いて行ってくれた着替え(制服)がある筈だ。

身体を起こして着替えを探そうとすると湿った咳が出た。

止まらない。

苦しい。イヤな汗が出る。

ドアが開く音と気配。

だがそちらを見る余裕すらない。息が出来ない。苦しい。

その女性が背中を摩ると咳が止まり、呼吸が出来た。

「寝てなさい。」

涙で歪んでいたが、僕はこの女性を知っている。

これが三度目。

僕を寝かせ、胸を軽く何度か摩る。

「明日にはすっかり治ってるから。今日だけ我慢してね。」

あなたは一体。声が出ない。

「私はあなたの敵。」

敵?敵って、なのにどうして。

「敵がいなくなってしまったら私もいらなくなってしまうから。」

あなたも指輪を

「休みなさい。喋るのも辛いでしょ。」

彼女は僕の頭を撫でる。

ああ睡魔が。急に眠くなる。待って僕はもっと貴女と話したい。


どれくらい寝たのか判らない。時計もない。窓も無い部屋。

顔の横に何か気配を感じて顔を向けると熊のぬいぐるみが枕の上に座ってこちらを見ていた。

身体を起こすと咳が出たが苦しくはない。

喉が渇いた。お腹も空いた。

見渡すとサイドテーブルにペットボトルのスポーツドリンク。

飲んでいいんだよな。

と、ドアが開く。驚いて少しむせた。

「あらゴメンなさい驚かせて。」

あ、いえ。勝手にいただいてます。

「うん。」

彼女は返事だけするとすぐに部屋を出てしまった。

部屋を見回しても何もない。ベッドとサイドテーブルと照明のみ。

寝過ぎたのか寝足りないのか少し頭が重い。

身体を起こしたものの何もする気が起きない。

数分経っていただろうか。ドアが開く。

彼女は「リンゴ」を剥いて持って来てくれた。

「どうぞ」とサイドテーブルに置いた。

甘酸っぱい香りに自分が空腹なのだと思い出す。

少し慌てていたのかも知れない。

一口囓ると咽てしまった。

ゲホッゴホッ。ご、ごめんなさい。

「気にしないで。ゆっくりでいいから。」

胸元に零した分を拭き取ってくれる事がなんとも恥ずかしい。

すみません本当に。

「何度も謝らないで。」

彼女は僕を抱き締めた。

「こんな事になったのも元は私の所為なのよね。」

「でも忘れないで。私はあなたの敵だから。」

こんな体制でそんな事言われても説得力がない。


彼女は何も語ってくれなかった。

リンゴを食べ終わって、人心地着いて、イロイロと質問をしたかったが

質問するより早く「何も知らない方がいい。」と言われてしまった。

彼女はベッドに腰掛け、僕を抱き寄せながら頭と背中を摩った。

「もう少し寝ていなさい。今度目覚める時は全部元に戻っているから。」

ああ。まただ。僕はこの人と話をしたい。

眠りたくなんてない。

「もう一度言うわ。私はあなたの敵。」

「この先何度も顔を合わせます。でも決して忘れないで。」

「油断しないで。私は敵で、私はあなたの指輪を狙っている。」

「忘れちゃダメよ。」

この人も僕の指輪を狙っている。

なのに、こんな状況なのに奪おうとしない。

しかも

多分。いや間違いなく彼女は僕の額にキスをした。

その効力なのだろうか、すぐに意識を失うように眠った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ