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魔女は魔女を見付ける。と言っていた(気がする)。
有難迷惑な彼女達による護衛業務も学校内では緩くなった。
半年程経過し、他に魔女がいないと判明したのだろうか。
僕は中学生時代と同じように、教室で1人、昼休みは図書館で1人。
それを心地良く感じていたのは強がりではない。
どうやら僕は他人と関わるのは得意ではないと自覚している。
気になる女子はいたが相手はまるで僕を見ていない。
「ああいたのか」
生涯で僕ほど言われた人物はいないだろう。
そんな事を何度も言われ続けていれば自ら他人を遠ざけたくもなる。
それで良かった事もある。
存在感が無いから当然イジメも受けない。他の子なら目立ってしまうような行動も僕には出来た。
禁止されていたオーディオプレイヤーを持ち込んで休み時間に聞いていたり、
読書で夜更かしした翌日の授業中の居眠りも咎められない。
1人でいられる自由。
「自分は孤独が似合う」なんて中二臭い事を考えていたのではない。
「友達が欲しい」なんて選択肢が最初からなかったのだから。
指輪が原因で魔女達がいつも近くにいる。
それでも学校内で一人になれる時間を手に入れられた。
ああなんて恵まれているのだろう。と
幸せを噛み締めているまさにその時、
僕の額に「呪いもしくは祝福」の印が付いた。
悲劇と呼ぶしかない。
お昼休みも一緒に食事させられ、
図書館に行くには迷惑になるので諦め、
休み時間の度に僕の席の周りに美少女達が集う。
悲劇と呼ぶにはあまりにも残酷な仕打ち。
多分、碓氷先生の「呪い避け」の効果なのだと思う。
男子生徒の誰からも「やっかみ」とか「妬み」をぶつけられる事がないのは幸いだった。
それを知ってか知らずか
魔女達と剣士が必要以上に僕に触れようとする。
この誘惑は拷問だ。
揃いも揃って皆魅力的で
「誰を選ぼうか」などと間抜けなに妄想を振り払うのが大変だ。
厚意を好意と受け取ってはならない。
これは幻覚だ。
これは妄想だ。
自分に言い聞かせ続けた。
いちばん辛かったのは、
彼女達が僕の腕とか頭とか何かと触れるので
驚いてちょっと振り払ったり避けたりするだけで
何というか、この世の終わりかってくらいガッカリした悲しい顔を見せる。
もうこれがたまらなくいたたまれなくなる。
ごめん。ちょっと驚いただけだよ。と言ってその手を取る。
そうすると揃いも揃って照れて「はにかんで」いるかのように微笑む。
もうダメだ。
帰宅早々明日はもっとたくさんお茶をと紹実さんに言うのだが
「何で?いいじゃん。何だったら付き合っちゃえよ。」
何を言い出すか。
遅くとも今週末には額の痣の効力は無くなる筈だ。
その時に「何であんたなんかと付き合ってるの?」
とか言われたらどうすればいい。
「言われないって。」
なんで。どうして。
「面白いから黙ってようと思ってたけど。」
なんだと
「好きだった想いが消えるわけじゃないからな。」
は?
「当たり前だろ。一時的なのはその印自体の効果だけ。」
「人の想いがそんな簡単に消えたりすわけないじゃないか。」
「あの子達の手袋と一緒。ただのブースト。」
なん、だと?
僕はこれから先ウハウハのハーレムルートを突っ走るのか?
「大変だな。」
笑いながら心配のフリをする。
楽しんでいるとしか思えない。
弟のドタバタラブコメを眺める姉がここにいる。
そんな事よりも
「うん?」
この印を付けた魔女の目的は何ですかね。
愉快犯?
この人のように状況を楽しむだけならば
近くで見学しないと意味がない。
「全く心当たり無いのか?」
うーん。木曜日の夜ファミレスで友維が気付いた。
発症って言うか印が付くのってすぐ出るの?
「まあ痣だから付けばすぐ出るかな。」
例の双子が絡んできて皆と一戦やって。
「その時その双子に何かされたとか?」
いや、あの時は友維に「下がってろ」て言われて。
それで蓮さんが。
あ。
通りの向こうにいた女性。
これって、遠くからでも印付けられるの?
「勿論。本人の目の前で五寸釘藁人形に打ち付けたりしないだろ?」
なんて例えだ。
じゃあきっとアレだ。虫が当たった程度に感じた。
いつだったかショッピングモールで出会った女性。
あの人を見た。気がする。




