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「効くなこのお茶。ちょっと苦いけど。」
「紹実ちゃん特製よ。ガブ飲みしないでね。」
「副作用でもあるのか?」
「違うわ、終わったら大変だからよ。」
皆で笑っているがすぐに笑い事ではなくなる。
魔女達が教室に入る。その後ろ、最後に教室に入ろうとした僕に
クラス委員の園原栞さんが声をかける。
「おはよう。」
おはよう委員長。
「朝からごめんなさい。書類を取り行かないとなの。手伝ってもらえる?」
うん。いいよ。
魔女達と剣士が目を離したのはそれぞれの席に着くほんの一瞬
園原さんがそれを狙ったのだとしたら「見事」としか言いようがない。
職員室には向かっていないのはすぐに判った。
ただ僕はまだ彼女の行動に疑問を抱いてはいない。
彼女は渡り廊下を通って別棟に行く。
仮に1時間目に特別教室を使う授業だとしてもHRがある。
えっと、どこ行くの?
「ここでいいわ。」
園原さんは振り返る。俯いていたが顔が真っ赤だった。
「あ、あの。」
はい?
彼女は顔を上げ僕の目を見る。
「あ、あの。理緒君。」
はい。
あれ?いつもは御厨君て呼んでくれるのに。
まさか、まさか。
「あの、あの。私、理緒君の事が、」
「す、すっ」
待った。ちょっと待って。お願い。ちょっとだけ待って。
僕は慌てて彼女の腕を取って廊下を走った。
彼女は真っ赤になったまま腕を取られ走った。
教室に飛び込むと魔女達と桃さんが集まっていた。
「おまえ勝手に何処行って」
そんな事よりお茶を。お茶を分けて。
「何だどうした。」
委員長がっ
危なかった。彼女は何を血迷った事を口走ろうとしたのか。
勿体ないが水を買ってそれを空にして皆のお茶を少しずつ分けた。
「足りる。よな?」
「多分。」
「ちびちびやりましょうね。」
園原さんは真っ赤なままだった。
「私ったら何を血迷った事を」とでも思っているのだろう。
やれやれと朝からグッタリしていると
HRが終わると今度は碓氷先生に
「理緒、職員室に来い。」
「まさか薫ちゃんも?」
一瞬魔女達に緊張が走った。
「まさか?ああ違う違う。心配するな。王子様襲ったりしないから。」
王子様って何だ。と文句を言いながら職員室に付いて行く。
「さて。と。」
対面。
「私も最強の魔女にしてくれるか?」
はい?
「お前とキスするとなれるんだろ?」
顔を近付ける薫ちゃん。
まさかが本当に?
彼女は僕のこめかみ辺りを両手でガッと掴む。
まさか。まさか。
「冗談だよ。ちょっと動くな。」
へ?
「んー。今日明日がピークかな。紹実さんが薬作ってくれたんだろ?」
え?ああはい。
「それで。土日はどうだった。」
何をニヤニヤしているかこの教師。
「何も無かったとか言わせんからな。」
何かあったところで何で報告せにゃならんのや。
ありましたよ。とんでもない事がありました。
「あ、いいや。つまんなそう。」
そんなとこばかり察しがいいなこの人。
金曜日の夜に紹実さんが彼女達を煽って
魔女同士が外で一戦繰り広げました。
で、土日僕は工房で隔離状態。
「何だ。やっぱりつまらん。」
酷い教師だ。
「魔女同士って全員か?」
はい。妹も含めて漏れなく。
「へーやるなーお前。」
何を。
「神流川はともかく藤沢と渡良瀬は義務でやってる感があったからさ。」
そう?僕から見たら当初は神流川さんこそただの交換条件てだけかと思ったけど。
「呪われなくて良かったな。」
そう言えばそんな「呪いと祝」的な設定がありましたね。
嫌悪感しか抱かれていなければ
それが際立ち最悪殺意すら芽生えていたかも知れない。
碓氷先生はニヤニヤしながらも僕をじっと見る。何かを考えている。
「もういいよ戻って。」
何も考えていなかった。
立ち上がろうとしたが再び先生が頭を抑える。
まだ何か
ちゅ
彼女は額にキスをした。
なっ
「おまじないだ。呪い避けだな。」
す、するなら言ってくださいよっ
「言ったらさせないだろ。」
だからってこんないきなり。
「何だよお前もう女子高生の唇2つも奪っておいて今更。」
奪われたんだってぇの。




