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Kiss of Witch  作者: かなみち のに
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紹実さんは立ち上がり僕の傍まで来る。

「今日は金曜日だよな。明日明後日は何か予定あるのか?」

え?いや今のところ何も。

「じゃあいいな。」

と言って座ってる僕の額にキスをした。

一拍あって、背筋が凍った。

魔女達の雰囲気、それに目付きがもうオカシイ。

殺気に近い。殺気なんて知らないが、これがそうかと思える。

紹実さんに向けられたものではない。

僕に向けられている。

ほどなくそれは殺意ではなく決意だと知る。

ほぼ同時に4人が立ち上がった。

「おにぃちゃぁん。」

と甘えた声で友維が近寄ろうとするが、藍さんが体を前に入れて防ぐ。

「ちょっと何するんですか。」

「何しようとしたんですか?」

「兄に甘えるのは妹の義務ですから。」

「そんな義務も権利もありませんね。」

「他人の藍さんにもありませんよねー。」

「私、以前に告白されましたから。」

してないって言ったじゃん。

「ハグまでされましたし。」

されてのは僕だ。

「何言ってるの?私なんてキスしたのよ。」

ここで蓮さんが参戦するかっ

「じゃあ次は何もしてない私の番だな。」

それは屁理屈ですよ葵さん。

「モテモテだな。」

姉は何言ってる。ちょっと洒落にならなくない?この雰囲気。

「ま、そうだな。」

紹実さんは手をパンと鳴らし注目させる。

「さあさあ。お前達。外でやれ。」

ええ?

「大丈夫だよ。結界張るから。近所迷惑にはならん。」

いやまあそれも心配だけど皆に何かあったら。

「だから大丈夫だって。言ってなかった?魔女は魔女を傷付けられない。」

そりゃそうかも知れないけど。

「たまには全力で暴れて疲れた方がいい。」

そうなの?

「たたでさえ体力の有り余ってる年頃だからな。発散だ発散。」

僕が姉とそんな「のほほん」と会話している最中にも

魔女達は結界の中で人外バトルを繰り広げる。


身体を炎に包んだ友維が手当たり次第に体当たりを繰り返す。

藍さんは見えないf壁を相手に投げ付ける。

蓮さんは風を起こし相手を飛ばす。

葵さんが一番不利なのでは。と思っていたら

何てことはない、他人同士に命令して共倒れさせようとする。

だがその間にも本人に攻撃が来るので効果的とは言えない。

(魔女には命令系が効きにくいと言っていたがそうでもなさそうだぞ)

「魔女は魔女を傷付けられない」と言うのは

「魔法で」とか前提が付くのか?いや以前リナさんが殆ど無傷だった。

そう、この「殆ど」が実は曲者。

どんなに防ごうと、どんなに打ち消そうと

物理的に当たれば痛い。炎は熱い。

5分もしない内に威勢のいい声が聞こえなくなる。

荒い息遣いだけ。そしてお互い手詰まりになったようで動きが止まる。

全員揃って肩で息をしていた。

(揃いも揃って短期決戦を挑むのは魔女の特性ではなくこの魔女達だけの特性だろう)

全員が最後の力を振り絞る。

「おおおおおっ燃えろっそして燃えろぉおおおっ」

「全員まとめて叩きつけてやりますっ」

「吹けよ嵐呼べよ竜巻ぃいいいっ」

「お前ら全員っ」

そして一斉に

「吹き飛べぇえええええっ」

友維は爆発を起こして全員を吹き飛ばす。

藍さんは空気の塊を全員に投げ付け吹き飛ばす。

蓮さんは竜巻を起こして全員を吹き飛ばす。

葵さんは命令して全員を吹き飛ばす。

これが最終決断だったと後で聞いた。

爆発音が響く。

結界内での出来事なのにその衝撃に外の空気が震え

およそ50m圏内の家の灯りが一瞬消えた。

しばらく紹実さんの声も聞こえなくなるくらい耳鳴りがしていた。

目を開けると誰も居なくて、文字通りキレイに四散していた。

「そっちの2人運んで。」

え?あっはいっ。」

あちこち打撲のある友維と藍さんを静かに抱きかかえ母屋に運び入れた。

広間に布団を用意してその上に寝かせ、

紹実さんが服を脱がせ手当した。

僕はその間にハーブの調合を頼まれ瓶に詰めた。

お風呂に入れて使うのだそうだ。


翌朝、彼女達は裸で目覚めて慌てたようだが、枕元に綺麗な白いワンピースが用意されていた。

彼女達が居間に行くと紹実さんがお茶を淹れて待っていた。

「少し苦いけど落ち着くよ。」

今日一日はその恰好でゆっくりしていること。お昼寝をすること。午前と午後の2回ハーブのお風呂に入る事。

「そしてたくさん食べる事。」

僕は土曜日一日、殆ど工房に籠っていた。

桃さんにも会わないよう言われた。

日曜日の午後になってようやく面会を許され、

驚くくらい穏やかで、痣だらけのように見えた体もすっかり綺麗になっていた。

皆で、お揃いの真っ白なワンピース。

緩い午後の風にカーテンが揺れ白い光が部屋に差し込む。

白い魔女達の集い。そして黒猫。

見惚れてしまった。

穏やかなのは彼女達の表情だけではない。

この部屋の空気が、冷たいようで、温かいようで、時間さえゆっくりと流れているようでもある。

「傷が残ったら責任取ってもらいます。」

何で僕が。

「当然じゃない。理緒君を取り合って戦ったんだから。」


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