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「それで?」
はい?
「お前の本命誰よ。」
何ですか本命って。
「半年も一つ屋根の下で暮らしてれば本命の一人二人いるだろ。」
先生に改めてこんな事言うのは気が引けますが
あの子たちは僕を守ってくれる人達ですよ。
みんなイイ人で感謝しています。尊敬もしています。
だから恋はダメです。面倒だから。
「えーっ。何だよそれー。」
たたでさえ危ういんだ。
彼女たちの優しさを厚意ではなく好意と感じてしまいそうになる事が多々ある。
だから常に彼女たちを尊敬するように心がけている。
恋愛の対処としてではなく、感謝の対象にしている。
ありがたいことです。
「つまんねー奴。恋しろよ勿体ない。もっとドロドロしろよ。」
本当に教師かこの人。
「じゃあ誰とも何もないの?もう帰れよお前。」
何て言い草だ。
あ、神流川さんにキスされました。
「うっそっマジで?」
「何どういうこと?押し倒されたんか?」
いや、キスされないだろうと思って近付いたら避けないからって。
「おおーやるなーお前。」
だからやられた側だって。
結局こんな話ばかりで終わってしまった。
「まあそんな大事にはならないよ。」と笑ってくれはしたが何の説得力もない。
教室に戻ると守護者たち(保護者と言っていいかも)が
集まっていて僕の元に駆け寄って
「薫ちゃんに何もされなかったか?」と問い詰められた。
何かされていたらどうなるんだろう。
それで心配するフリをしながら体をベタベタ触るのは止めて。恥ずかしい。
放課後妹と合流する。彼女は図書館で時間を潰しているようだった。
その友維が言うには
朝クラスメイトと一緒になって挨拶してすぐに
「あの人誰?」と聞かれたそうだ。
「誰って?」
「友維ちゃんの隣の男子。高校生でしょ?彼氏?」
「違う違う。兄だよ兄。」
「へー」
無関心を装った関心。興味丸出しな表情だった。と。
「中学生にまで大人気かよ兄。」
それもちょっとオカシナ話だ。その同級生とやらは他人だ。
僕の存在なんて知る筈も無い。どうして関心を示す?
あ、いや。あぶねぇ。なんて自意識過剰。
友維の隣の男性。て事に興味があっただけだ。要は友維をからかいたいだけだ。
それはそれで、友維ちょっと纏わりつき過ぎじゃないか?
「いいじゃん兄妹なんだから。」
やたらと腕を組んで体くっ付けてきたら歩き難いだろ。
「ええーっイイじゃん別に。10年ぶりなんだからさー。」
は、恥ずかしくないの?
「別にぃ。」
と、
「ベタベタしてんな。」
え?
葵さん。だよな今の。
恐る恐る見ると結構な真顔で睨んでいる。友維を。
「いいじゃないですか。私の兄ですから。」
「緊張感が足りないって言ってるんだ。」
「昨日だってこんな感じだったじゃないですか。」
「昨日の事があったから言ってるんだ。」
「昨日なんて散々だったじゃないですか。これからは私が守ります。」
「中坊に何ができる。」
「何だったらやってみせましょうか?」
「面白い。相手に」
待ったーっ
どうしたの2人共。ちょっと落ち着いて。
「だってこの人がー。」
と友維が僕に縋りつく。
「あ、いや私は、そんな。」
葵さんは困惑している。
これはもうイヤな予感しかしない。担任め適当な事ぬかしくさって。
夕食後、工房に魔女が集まるのはいつもの事だ。
友維もいる。勿論紹実さんも。
姉はずっとフルフルしていた。笑いを堪えている。笑える状況とは思えない。
状況判って楽しんでいるな。としか思えない。姉なら何とかしてくれまいか。
問題はその笑いの原因。
魔女達は無言で珈琲を啜っている。
普段は藍さんが皆のコーヒーを淹れてくれるのだが、今日は席に着いたまま立とうともしないので
慌てて僕が皆の分を渡した。
全員の分を配り、やれやれと自分の分も淹れたのだが台所から席に戻りたくない。
誰も何も話さない。
一言も喋らない。
お互い目も合せない。
なにこれ。なにこれー。
「ほら理緒も早くこっち来て座りれ。」
姉は震えながら何を言ってるんだ。完全に楽しんでいる。一緒に映画見ようぜってな感覚だ。
僕が座ってから既に5分以上経過した。
こんなに長く重い沈黙は初めてだった。
「今日は、」
紹実さんが涙を拭きながら口を開いた
「今日は学校で何かあった?」
いや、別に何もないよ?
「そう?何かあったようにしか見えないけど?」
もうヤメテー。




