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「魔法のランプかっ」
と突っ込みたくなるくらい魔女達に撫でられた
それを見た桃さんがすっ飛んでやってきて
「アタシもいいかな。いいよな。」
と返事も待たずに頭を撫でる。
まだ、この4人だけなら判らなくもない。いや判らないが。
クラス委員長の園原さんが、
僕をクラスのはみ出し者状態から救ってくれた園原さんが。
「あのー」と言いながら魔女達の間を潜り抜け近寄って
なでなで
「はっ。す、すみません。何だか急になでなでしたくなって。」
謝ってはいるが手は止めない。
何なんだ一体。
それが休み時間毎に続いてしまった。
これはどう考えたって、考えなくてもオカシイ状況だろ。
昼休みに職員室に行って碓氷先生を問い詰めないとダメだな。
で?皆は何で付いてくるの?
「え?ああ、前にも言ったじゃない。この学校に他に魔女がいたら危険でしょ。」
桃さんは?
「アタシか?それはホラ、魔女以外に何かされたら大変だろ?」
何かって何だ。
クラス委員長の園原さんは?
「クラス委員長として風紀を乱すような行為が無いように見張るためです。」
人の頭を撫でまわしたくせに何を言うか
それぞれの言い分は判るのだが何でそんなに動揺したように言うのかが判らない。
職員室のドアを開けようと手を掛ける。まだピッタリ後ろにいる。
まさか一緒に入ってきたりしませんよね。
ハーメルンの笛吹き男状態で目立ってるのに。このまま中に入って内側から塞ぐって?
「職員室の中に魔女がいたら」
そりゃいるでしょ。
「あの人が一番危険です。」
いやまあそりゃ判らなくは無いが。
とにかく皆さんは教室戻っていてください。
碓氷先生は食事を終え他の教師とお茶を飲みながら談笑していた。
「おうどうした?ってまあ察しは付くけどな。ちょっと保健室借りますね。」
僕は隣の保健室に連れ込まれた。
(廊下には皆が待っているかと思ったが珍しく僕の言う事を聞いてくれたようだ)
「で、何かされたか?」
頭撫でられまくりですよ。
「そうかそうか。私のまじないが効いたか良かったな。」
良かったんですか?
「そりゃそうだ。私がお前にキスしてたら皆お前にキスしてたぞ。」
何で。
「いやまあそのうちキスくらいする奴いるかもな。」
だから何で。
「私がお前撫でてるの見て羨ましいと思ったんだろ。」
もう全然話が進まない。意図的に話をしないでいるなこの人。
「そんな目で見るな。」
と僕の前髪を上げ額の印を見る。
結構顔を近付けて凝視するので目のやり場に困る。
「まあ一週間てとこだろうな。」
何が、あ、消えるのが?
やっぱりこの痣と何か関係があるって事だ。
「魔女の呪いもしくは祝福。って言ってな。」
どっちだ。
「受けた側によって効果が違うから。」
「お前今日来る時ジロジロ見られたりしなかったか?」
え?しました。
「やっぱり目立つよなぁ。」
そうでもないでしょ?すれ違いざまに他人のおでこ
「そうじゃなくてさ。かわいい女子高生共に囲まれて通学してれば普通は目立つって事。」
今までそうならなかったのは僕の影の薄さがそれを消していたから。
しかし呪いだか祝いだかで指輪の効力が相殺されてしまった。
だから女子高生たちを引き連れて闊歩する奴に目が向いた。
僕をそれまで認識していなかった人が認識するようになっただけの事。
問題は既に僕を知っている人達がどう反応するか。だ。
ゲームで言う好感度の問題。だから「呪い」にも「祝い」にもなる。
彼女達の反応を見る限り僕は少なくとも嫌われてはいないようだ。
魔女っ娘達と剣士は判らなくはないがでも委員長は何で?
「委員長って園原か?お前やるなぁ。何したんだよ。」
いやされた側ですよ。前に先生があること無いこと言って孤立しかかったのを助けてくれて。
あんな事言われたらいくら僕でも先生の言う事にだけは未だに素直に聞けない。
「酷いな面と向かって。」
1人の女性としては素敵だと思います。
優しいし楽しいし美人だし。
僕をキス魔みたいな扱いにしなかったら憧れていただろう。
実際男子生徒達からの人気も高い。
「え?何口説いてるの?いいよもっと褒めて。」
ただ教師としてどうかって思いますよ。
「褒めろよ。」
無理です。
僕の唇だけならまだしも
初対面の女子高生達の唇弄ぼうとしたじゃないですか。
「洒落だ洒落。アイツら私が土下座したってそんなことしやしないもん。」
「場を和ませようと思ったんだよ。」
まあそういう事にしてあげます。
「で?その後どうした。神流川が噂改竄して宮田とキスしたんだよな。」
されたんだってば。
「その後どうなんだ。他に誰かにキスされたか?」
いや魔女っ娘達が頑張ってくれてます。
「そうだろ。私の人選に間違いはないな。」
人選はともかく勧誘方法はどうかと思いましたよ。
問題起こしても揉み消してやるって。
「まあそうだけどさ。」
「あいつら問題起こすように見えるか?」
いや。見えません。
「だろ?」
この人は何処まで本気なんだ。




